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WORLDEAR  作者: ちひろ
第一章
40/125

第四十話 大失態

 一度だけ。ほんの一度だけ。

 ポルテットは手をそっとケーワイドの懐に伸ばした。思ったより簡単に包みに指が届いた。眠っているのだから衣服は緩めておいたのだろう。

「…ん……」

 急にケーワイドが寝返りをうった。

「…!!」

 ポルテットは驚き、包みを地面に落としてしまった。小石が包みから転がり出てくる。以前に見た時と変わらず青緑色に輝いていた。慌てて拾い上げしげしげと観察していると、近くで地鳴りがした。ケーワイドが目を覚ます。とっさにポルテットは小石を後ろ手に隠した。

「…なんだ? 地震か?」

 身体を起こして両手を隠しおびえた様子で自分を見つめるポルテットと目が合い、ケーワイドは瞬時に直感した。

「ポルテット、起きておったのか。そこに何を隠しとるんだ? 気のせいかも知れんが、私の懐からずいぶんな重荷がなくなっているようなのだが?」

 地鳴りはますます激しくなり、急な縦揺れが襲ってきた。ケーワイドは舌打ちし防壁魔法を泡のような形に変えて、自分とポルテットを守るように包んでフワリと浮かばせた。震え上がったポルテットの肩を抱き、その両手に握られている小石を取り上げた。

「ケ、ケーワイド…、ごめんなさい、僕…」

「説教は後だ。揺れが収まるまでじっとしておれ!」

 ケーワイドの懸念を幸いにも裏切り、地震はすぐに収まった。いったん防壁魔法を消し、周りの様子をよく見渡す。大きな地震ではなかったし、目に見える被害はないようだ。ケーワイドはシュンと小さくなったポルテットをにらんで叱り飛ばした。

「この大馬鹿者!! 『ワールディア』に何かあったらどうなるかお前には話したろう! ひびでも入ったら、粉々になったら、どうなるか分かっとるのか!!」

「…ごめんなさい……」

 ケーワイドは今までにない大きなため息をついて、ポルテットの脳天にげんこつを食らわせた。

「これぐらいの地震ですんで良かった。しかしこれで『ワールディア』の持つ力の恐ろしさが分かったろう? まったく、好奇心旺盛なのも考えものだな」

 ブツブツ言いながらケーワイドは横になり眠りに入った。身を守る体勢ではないから、ポルテットへの信頼が失われたわけではないようだ。

「ごめんなさい……」

 ポルテットは再びケーワイドの背中に向かってつぶやき、毛布をかぶり直した。



 老爺と歳若い少年のふたり連れは、ショーラ町を目指して延々歩き続けた。ケーワイドは歴史や自然科学、哲学など、たくさんのことをポルテットに話した。しかしポルテットが『ワールディア』を観察しようとしたことは許しておらず、折に触れて『ワールディア』が封印された経緯、その強大な力について詳しく説いていった。

 どこまでも続くと見えた大草原のかなたにうっすらと集落が見えてきた。近づくにつれ集落どころではない栄えた土地であることが分かってきた。ショーラ町だ。

「見えてきましたね! こんな大きな町は初めてだ!」

 何を見ても初々しい感想を述べるポルテットに、ケーワイドはショーラ町の概略を説明していった。

「人口は約25000人。確かにこの辺りではかなり栄えておるな。穀物がとれるから後で買い足そう。さあ、町長に通達は出しておるから、早速挨拶に行くぞ」

 ウェール村のセルク・ラムダ村長しか知らないポルテットは、大きな町の町長はどんな人物だろうか、とにわかに緊張した。

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