表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
WORLDEAR  作者: ちひろ
第一章
18/125

第十八話 白い国とは 白い人とは

 峡谷に沿って上流に向かいながら、ケーワイドは白い国とその住人について、知りうる限りを語り始めた。

「…モクラス山脈が環状に切れ目なく連なっているのは知っておるか? あまりに高く、魔法使いと言えども生身で登れるものではない。そのモクラス山脈の内側でひっそりと暮らしておるのが白い人だ」

 徐々に道は険しくなり、上流に向かって登り坂となりつつあった。

「連綿と連なる山々の高さがまた微妙というか絶妙というか、山脈の内側で人が住めるような平地は、日が当たる時間が極端に短いという。土地は痩せており、人々は原始的な生活をし、組織だった営みはなされていないと聞く」

「え? でも、あの車椅子の人が仕切ってましたよね?」

「ふむ、それが不思議なのだよ。しかしその統率も単純で、あのフィレックとかいう男の命令がないと何もしないと思う。ともかくあやつは我々を追って来なかったし、理性的な考えを持っているようだ。人を殺すような命令は出さないだろう」

 アイレスは石ころだらけの足元をしっかりと踏みしめながらケーワイドに問いかけた。

「どうしてそんな、貧しい土地に白い人は住み始めたんですか?」

 ケーワイドは若干答えに窮する。

「私にも分からない。歴史書でも白い国は空白なのだ」

「言葉は僕たちと同じ言葉をしゃべってますよね」

「ああ。……すなわち、祖先は同じだと考えられる」

 忘れられた土地。忘れられた民族。肥沃なウェール村と何が違うのか、アイレスには分からなかった。

「…風が出てきたな」

 ケーワイドは外套の前をきつく閉じ、杖にすがって歩を進めた。



 トールク、セプルゴ、ユーフラ、ファレスルの4人は、下流にかかる橋を目指してひたすら進んでいった。道と右手眼下の深く切り立った崖は並走している。

「ドゥナダン大丈夫かな」

 屈託のないセプルゴの声が一行の雰囲気を明るくする。

「筋がいいから大丈夫だろう。村に戻ったら大工組合に勧誘したいほどだな」

 3人より少し歳の離れたトールクが落ち着いて一行を支える。大きな危険のある道程ではなかった。

「あら、雨かしら」

「本当だ。風も強くなってきたし、大降りにならないといいんだけど」

「いや、これは嵐がくるね。見なよ、あの雲を」

 真っ黒い雲が前方左手から迫ってきている。雷がとどろく低い音も聞こえてきた。ユーフラが傘のように防壁魔法を出現させる。

「便利だな、魔法ってやつは」

「教えましょうか? わたしも弟子が欲しいと思ってたの」

「誰でも修行すれば使えるわけ?」

「可能性は誰にでもあるわ。潜在能力をどう使うかは修行次第ね」

 皆感心してユーフラの話を聞いている。

「白い人に翼がある人がいたろ? あの人はなんだろう?」

「とんでもなく強力な魔法使いだと思う。あの人数を一瞬にして移動させるなんて、ケーワイドにも匹敵するわ」

 暗く濁ったあの目を思い出し、ユーフラは視線を落とした。

「腕がなかったよな」

「その分魔力に力が行っているのかも」

「そういうこともあるのか」

「…急ごう。嵐がきたら進めなくなる。少しでも距離を稼がなくては」

 トールクにうながされ、一行は先を急いだ。稲光が走ってからしばらくし、空を覆うような轟音が追いかけてきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ