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WORLDEAR  作者: ちひろ
第三章
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第百二十三話 白い人の急襲

 デ・エカルテの屋敷にはラウダムスやリリイたちを含めて16人が暮らしており、うち10人が魔法使いであった。

「でもあたしとシシイは歌うことで大地をならす魔法しかできないのよ」

 とリリイは小首をかしげて謙遜した。

 翌朝の朝食の席で屋敷の者が一堂に会し、アイレスたちと自己紹介をし合った。話を聞くと、ケーワイドやユーフラのように様々な魔法を駆使できる者はいないようだ。ラウダムスも同様だ。

「ここにいる魔法使いは修行したというより、この地に住んでデ・エカルテの影響を受けているから魔法を使えるだけなの」

 その事実にポルテットがすかさず食いついた。

「じゃあ僕もここに住んだら魔法を使えるようになるんですか!?」

「ふふ、修行しなければ何通りもの魔法は使えないけどね」

「そっかあ、でも試してみたいな」

 体力の戻りつつあるポルテットは、ケーワイド亡き後も健気に振る舞っていた。

「何言ってる。『ワールディア』を封印し終えたらお(いとま)するんだぞ。いつまでも厄介になるわけにはいかないさ」

「あの、ラウダムス様…」

「うちの領民じゃないのだから、そんな呼び方しないでちょうだい」

「では、失礼して、ラウダムス。『ワールディア』はいつ封印するんですか? すぐにでも、と思っていたんですが」

「それなのだけどね、先ほど話した通りわたしたちは魔法の達人ではないのよ。ケーワイドたちをあてにしていたというのはそういうこと」

 トールクが不安そうに顔を上げる。

「ではどうするのですか?」

「デ・エカルテはこの星の魔力の中心だから、ワールディア中の魔法使いが修行しに集まる土地でもあるのよ。そういう者はわたしたちのようにのんびり過ごすことはなく、森の中などで質素に自給自足で生活しているわ」

 ここでラウダムスはシシイに視線を移す。

「リューンは見つかりそう?」

「いいえ、エッセ・リュナランド様は以前の住処(すみか)からは姿を消しておられました」

「そう、放浪癖は治らないのね。リューンさえいればどうにかなるでしょう。なんとしても見つけてちょうだい」

「かしこまりました」

 ふう、と小さくため息をついて改めてラウダムスはトールクの質問に答える。

「エッセ・リュナランド。わたしは長い付き合いでリューンと呼んでいるけれどね、彼はデ・エカルテで一番の魔力をもつ魔法使いなの。ケーワイドに匹敵するでしょうね。修行しながらあちこち旅をしているからすぐ行方が分からなくなるのよ。リューンの協力は不可欠だわ」

「封印はどのようにして?」

「擬似的な『器』をつくる作業だと聞いているわ」

 そうラウダムスが答えてすぐ、ドーン、と何かが激しく屋敷にぶつかるような音が響いた。

「何!?」

 ラウダムスが立ち上がって食堂から出ようとすると、武具に身を包んだ門番がかけてきた。

「南側の壁が攻撃されました!」

「攻撃?」

「白い人か!」

「確認中です!」

「行きましょう」

「ラウダムス、私たちも行きます。ファレスル、アイレス、来られるか?」

 トールクは素早く指示を出しながら怪我人であるセプルゴとポルテットの肩に触れ、「ふたりは来るな」と低くささやいた。アイレスとファレスルは愛用の剣を()きラウダムスたちを追った。丸太で大門を破ろうとしているかのように、断続的にドーン、ドーンと衝突音が聞こえ続けた。

「おい、外から回ろう!」

「うん」

 ファレスルは廊下の窓から外に飛び降り、アイレスに手を貸して音のする壁へ目をやった。

「うわっ! 何だあれは!?」

 アイレスもファレスルに支えられながらその方を見る。案の定フィレックたちであった。フィレックは、ケーワイドに取り去られたため顔を布で巻いていない。銀髪がまぶしいくらいにきらめいていた。

 土の大玉で壁を攻撃しているが、誰も玉を作っている様子はないのに、ひとりでに白い人たちの周りを土玉が転がり続けて大きさを増していっていた。人の背丈ぐらいの大きさになった玉はそのまま壁に向かって突進していく。魔法であろか。しかしフーレンがいない。

 ファレスルの叫び声に反応し、フィレックが振り向いた。

「出てきたな。『ワールディア』はどこにある!? もう封印したのか?」

「ここにあるわ」

 問いかけへの答えは攻撃を食らっている壁の窓から聞こえた。ラウダムスが長袴をひるがえして窓から身軽に跳躍し外に出てきたのだ。肩の上で切りそろえられている黒髪が風になびき、ラウダムスはゆっくりと目を開いた。堂々たるその立ち姿に一同は完全に飲みこまれた。

「あなたたちが白い人ね。わたしはこのデ・エカルテの(おさ)、シエル・ラウダムス・デ・エカルテ。『ワールディア』はわたしが持っています」

 後から来たトールクや門番がラウダムスの脇を固める。大気がねじ曲げられていると錯覚するほど、ラウダムスは甚大な雰囲気をまとっていた。

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