異世界奇譚『スライム・ゼロ』 第三話「グリーンは危険な香り」
俺の捨て身の看病でイエローは復活した。しかし、しばらくは動けないらしい。
「なるほど。グリーンとはぐれたってわけか」
「そうなんだ。彼は頭がいいから、上手くやり過ごしたと思う」
俺とピンクはイエローから聞いた情報を頼りに、街はずれにある小さな農作業小屋までやってきた。夜に紛れてなので、そんなに難しいことはなかったが、途中、綺麗な川の畔でイチャイチャぶりがむかつく人間のカップルが目に入ったが、嫉妬はしていない。そうだとも、別にひがんでなんかいないさ!!
「ピンク、本当にここなのか?」
「イエローの話ではたぶん」
今回、二回目の下水道だ。
昔は直接に町長の館に行けたらしいが、今は立ち入り禁止になっている。もちろん、俺たちモンスターには立ち入り禁止なんていうWordが通じるはずがない。
「やっぱり、誰もいないみたいね……」
「いや、ピンク、よく見ろ! これは人間の足跡だ。それもそんなに古くない最近のものだな。この大きさからすると、たぶん子供だろう」
「わぁ~ さすがブルー! 探偵みたいです!!」
「あ、ありがとう……でも、俺はブルーじゃなくて、ゼロだから」
重要なところを無視されつつ、二匹は進んでいく。するとそこに怪しい物体が転がっている。いくらなんでも不自然だ。
「これって……野菜、か?」
「でも、ゼロ。この透明感は」
「ああ。たぶん。コイツがグリーンだな。ピーマンみたいになってるぞ」
これが、頭のいいというグリーンの秘策なのか? どう考えてもこの場所で『ピーマン』はないだろう。
「グリーン!? 私よ。判る?」
「その声は…ピンクかい? 助かったよ。いつまでこういう格好をしていればいいかさすがの天才も迷ってね」
今、自分で天才って言わなかったか? このピーマン。
「それで、この青い御仁は? 味方なのか」
「うん。一緒にレッドを助けてくれることになったの。頼れるスライムよ」
ピンクよく言ってくれた!! さぁ、もっと言っていいんだぞ!!
「なるほど、レッドの身代わり、つまりは玉砕君という訳か」
あのピーマン、さらっとおかしなこと言わなかったか?
「しッ!! ブルーには言ってないの……」
ピンク! 今、ピーマンと同調しなかったか!? これじゃまるで俺が人身御供みたいじゃないか。最初から仲間外れみたいな感じがするぞ。
「おほん!!」
「はっ! ぜ、ゼロ!!」
「な、何も相談してないぞ、青い御仁よ!」
今さらながら、俺はこのままレッドとやらを助けていいんだろうか。