第二話:銃探しの旅の始まり
第二話です!よろしくお願いします!
「欲しいものは現れたり持っている物じゃない
欲しいと思うから人は探すし、手にしようと思うんだよ
だからイーサン、欲しいものがあるのなら待つのではなく
自分からそれに向かって行きなさい」
今日もそんな父が言い残した台詞を目覚まし代わりに僕はゆっくりと起床した
リアカーで揺れらながらイーサンとアルニーニョは隣町があるである方角に向かっていた
昨晩、二人は野宿をして夜を過ごした
荒野の夜はとても寒く、下手をしたら凍え死ぬであろうぐらいに冷え切っていた
それに比べて朝になると昨晩の寒さが恋しくなるほど太陽は鬱陶しいほどに光り輝き、2人を燦々と照らしていた
「それで?見つかった?」
イーサンが地図とにらめっこしているアルニーニョに話しかけた
アルニーニョは目を細めながらイーサンに何かを訴えた
「あのなぁイーサン
そう簡単に銃なんて見つかるわきゃあねぇだろうよ!
確かに最近じゃあポピュラーな武器だったり防犯グッズだったりするがよ
意外と高いんだぜ?
やっぱり世界一の銃造職人が作った
世界に12本しかないオリジナルの拳銃だから珍しいって言葉じゃすまされない
俺とお前の銃も確実に高値で売れる」
銃を取り出して頬ずりしながらアルニーニョはそう言った
イーサンは自分の銃を見て果たしてそうだろうか?と疑問に思っていた
普通の拳銃ならまだしも自分とアルニーニョの持っている銃は明らかに特別
手練れの銃使いならまだしもイーサンの拳銃にいたってはかなりの射撃の腕でもない限り銃としての威力を十分に発揮できない
自分の技量は決して高くはないが人並み以上には銃を扱える
イーサンはそう思いながら自分の銃を見つめていた
昨晩の寒さとは別でこのあたりの地方は夜は極寒で日中は蜃気楼が見えるほどである
アルニーニョはこの地の天候に慣れておらず苛立っているのがイーサンにも見て取れる
「それにしてもなんだここは!
夜は寒くて昼は暑くて最悪だな!」
「仕方ないさ
そういう地方だからね
そう思って耐えるしかないよ
天候や気温ばかりは人間が決められる事じゃないからね」
イーサンがアルニーニョを宥めるもまだ機嫌が悪い
銃の手がかりは一向につかないまま時間は過ぎていく
そしてこの天気、雨に濡れるのは嫌だが誰だってこの暑さでは雨をも願うものだ
流石にアルニーニョの愛馬シルバートもこの天気では流石に歩みを進めない
「すまねぇなぁシルバート
もうすぐ町につくからなそこまで辛抱していてくれ」
アルニーニョがそう言ってシルバートの首元を優しく撫でると嬉しそうにシルバートは彼の頬を舐めた
イーサンはその二人の様子をリアカー越しに見ることしかできなかった
銃造職人になる為、そしてその技術を磨くために生きてきた
その為、イーサンには友達と呼べる関係の人間がいないのである
出会って一日も経っていないがイーサンにとってこの旅は友達というものが出来た瞬間でもある
「アルニーニョ、炎天下と言えどその帽子は取らないのかい?」
「あぁ、これは少しばかし大事な帽子なんだ
他人にあまり触られたくはないし、俺自身、起きてるときは被っていたいんだ」
アルニーニョは帽子で顔を隠しながらイーサンにそう語りかけた
そうこうしているうちにアルニーニョの視界にポツンと荒野の真ん中に街が現れた
「おい!見ろイーサン!街だぞ!」
歓喜の声をあげながらアルニーニョはイーサンに話しかける
そのはしゃぎ様は初めてテーマパークにでも来た小学生の様であった
イーサンもリアカーから身を乗り出して街を見て歓喜の声をあげている
「やっと着いたね・・・もうすぐだよ」
「あぁ!シルバート!もうちょっとだ!頑張れよぉ!」
アルニーニョは手綱を引いてシルバートに合図をすると勢いよくシルバートは走り出そうとした
そこに、三発の銃弾が着弾した音がシルバートの足元に響いた
あまりの出来事と騒音にシルバートは驚いて仰け反り、アルニーニョを落馬させる
「ちっ!敵かよ!」
落馬するもすぐさま体勢を立て直し、アルニーニョは周囲を見回しながら身構えた
イーサンもリアカーから降りて周囲に敵がいないか確認している
「銃声はあった・・・着弾もあった一体、どこから?」
「分からない
でも君よりもシルバートが狙われたのは確かだ
しかし、誰もいないって言いきれるぐらい周りは静かだね」
2人はシルバートをしゃがませて周囲を警戒しながら街に向かって銃口を向けた
「アルニーニョ!女の子だ女の子が向かってくるぞ!」
イーサンが指指す先を見るとそこには一人の少女、2人に向かってくるのが見える
「イーサン・・・敵かもしれないぞ・・・」
「でも丸腰だ
それにあんなにゆっくり近づいてきたらさっきから僕らを狙っている人間に撃たれるぞ
撃った人間か誰かがあの女の子の味方なのかもしれないな」
「だとしてもここから動くのはシルバートが危ねぇ・・・
イーサン、任せるぜ・・・」
「わかった・・・
出来る限りなんとかしてみたいとは思う・・・
でも敵だったら迷わず撃ってほしい」
イーサンの覚悟ある眼光を目の当たりにしたアルニーニョは一度だけうなずくとシルバートの隣にジッと隠れたまま動くことを止めた
少女はじっと2人だけを見て歩みを進める
イーサンの目の前にまでくると少女はイーサンと目の合う位置まで腰を下ろした
「見た所、悪い人では無い様ね」
「何を言ってるんだ
こっちは君たちに危害を与えるつもりもないし、そもそも君の仲間か誰かが撃ってきたんだろう?」
少女は自分の腰に下げたホルスターから自分の拳銃を取り出してイーサンに見せつける様にして掲げた
「貴方、名前は?」
「イーサン、イーサン・ウィリアムス君は?」
「レベッカ・ソーサレス、そちらの帽子を被った方は?」
レベッカの声を聞いて、アルニーニョは人間に有るまじき速さで伏せの状態から直立した
レベッカにゆっくりと近づいてなめまわすように全身を見るアルニーニョ
しかし、彼女の視線はその程度では全く動じることは無く、アルニーニョの視線を追うように見つめている
それに気づいてアルニーニョは彼女を見ることをやめて急いで自分の服をはたいて埃を落とした
「俺はアンベスニア・アルニーニョって言うんだ
よろしく頼むぜレベッカさんよ」
「なんか馴れ馴れしいわね・・・」
握手を交わそうとしてアルニーニョの手をレベッカは細目でにらみつけると二人を引き連れ自分の住んでる街に向かった
街はそこから見える程度の距離だったのだが
レベッカが付いていないと街の人に狙撃されかねないとの事だったので二人はレベッカの後ろをぴったりとついていった
アルニーニョはシルバートに跨り、イーサンは再びリアカーに乗り込んだ
やがて街の入り口の門まで近づくとレベッカが見張りの男に二人の事情を説明した
すると険しい表情をしていた門番も柔らかな表情になり二人の事を快く受け入れ
内心ホッとしながらもアルニーニョは緩くなった口元を見られたくない為か自分の帽子で顔を隠していた
「よかったなアルニーニョ敵じゃなくてさ」
門を抜けてイーサンが早速、アルニーニョにすかさず話しかける
「俺は分かってたけどな」
自信満々な笑みを浮かべてアルニーニョが話す
相変わらずなアルニーニョを見てイーサンは微笑んだ
まだ二人の旅は始まって間もないのだがイーサンにはまるでアルニーニョが親友であるようになっている
微笑んで口元が緩くなっているイーサン、そんな彼を見てかアルニーニョがイーサンをそっと引き寄せ耳元に口を寄せた
「レベッカ、悪い奴じゃなさそうだな」
「あぁ、いい人だしな」
「そういうことじゃない!」
小声でアルニーニョがイーサンを叱りつける
なぜ叱られたか分からずイーサンは呆気にとられている
そんなイーサンを見てかやれやれと会釈をしながら呆れていた
「一人の女としてだよ!お!ん!な!
わかるかイーサン!?ウーマンだぜ!?ウーマン!」
「いや・・・それは分かるけど
出会ったばかりの人を僕はそういう目で見られないからなぁ」
引き気味のイーサンを見てアルニーニョはふたたびやれやれと手を振る
すると黙々と歩き続けていたレベッカが急に足を止めた
2人はレベッカが止まったのを見て馬からリアカーから互いに降りた
あまり立派とは言えないが門の向こうにこじんまりとした小屋の様な家だがよく見るとふしふしはしっかりとしていて中々丈夫そうな外見に見える
玄関の近くには小規模の花壇があり、様々な花が植えられている
レベッカの家のポストにシルバートとリアカーを括り付けて二人はレベッカの自宅の門をくぐった
中に入るとすぐに靴棚と消臭剤、そのまま二人が上がろうとするとレベッカは二人を引き留めた
「ちょーっと待った!靴は脱ぎなさい」
「なんだって!?他の国のルールに従えと!?」
反論して激昂するアルニーニョ、イーサンはそそくさと靴を脱いで段差を上がるがアルニーニョはふてくされていた
そんなアルニーニョを見てイーサンは手を差し出してイーサンを招き入れようとする
レベッカはキッチンまで行っているのか水の流れる音に湯沸かし器の音がコトコトと鳴っている
きっと紅茶かコーヒーでも淹れているのだろう、鼻歌も交じりながら玄関まで聞こえている
「くっ・・・俺は靴を脱ぐのは寝るときや風呂に入るときだけと決めているんだがな」
「強情を張るなよアルニーニョ、ここはレベッカの家だぞ?」
「そんな事は分かってる!ただ靴を脱ぐ事が気に入らない!
もしもこの家の中に画びょうが落ちていて俺がそれを踏んだりしたらどうする!?
イーサン!お前が責任でもとってくれるのかよ!」
「アルニーニョ・・・それは流石に君が面倒だよ」
「失礼しちゃう
私の家よ?画びょうなんて落ちちゃいないわ
2人とも上がってお茶が入ってるから」
渋々アルニーニョは靴を脱ぐとその姿を見て笑ったイーサンを睨みつけながらレベッカの後を付いていった