第6話 料理上手!
「ふぅ、完成っと」
盛り付けも完成し、ご飯も盛る。
そして、テーブルに並べるとそれなりにいい感じの夕飯だと実感できる。
それ以上に感動しているのは俺の前に座っている湊家の2人だ。
「すごーい!すごい!きょーちゃんすごーい!」
「ほんと、ここまでとは」
2人のお箸を新しく用意してから、冷蔵庫の中からお茶を取り出す。
「それじゃ頂きます」
「いっただっきまーす」
「いただきます」
今日の夕飯の出来はまぁまぁといったところ。
いつもは1人か、母さんとだけだから、今回は結構頑張って作った。
その甲斐もあってか、美也の箸のペースは尋常じゃないほど早く、美和子さんも「私より美味しい…」とちょっと敗北感気味な呟きをしながら幸せそうに食べてくれる。
やっぱりこうして皆で食べるのは特別かもしれない。
「きょーちゃん!これだけの料理ができるなら将来料理人になれるんじゃない?!」
「趣味を仕事にしようとは思ってねぇよ」
「でも、これだけできるんだから良い主夫にはなれるわ」
「俺、結婚しても料理作らされるのとか嫌なんですけど」
「だって、美也。あなた、慧ちゃんのお嫁さんにはなれないわね」
「ふふーん、今から努力すれば良いだけだもーん」
「だそうよ?将来性は?」
「ないでしょ。美也、裁縫以外は不器用ですし」
「そうね。この子は裁縫以外無いわね」
「酷っ!私だってやればできる子だもん」
「その言葉はやろうとしていない子の発現よ。あんたも少しは慧ちゃんや亜矢ちゃんを見習いなさい!」
「ふーん!!きょーちゃんも亜矢ちんも好きな事してるだけじゃん」
「別に料理を好きだと言ったこと無いけど?」
「亜矢ちんは好きだもん!」
「あいつは好きだな。パン作り」
「そうそう、亜矢ちゃん凄いのよ?最近、更に作るのが上手くなってね。色んなアイディアも出してくれるし」
「へぇ~、頑張ってるんですね」
「そうね、あの子はほんっと頑張り屋さん。見ていて楽しいもの」
「俺もあれだけ将来に夢あったら頑張りたいですね~」
「それにあの子、成績も良いんでしょ?」
「期末試験は確か~…5位だったか6位だった気がします」
「ほんっと…頑張り屋さんだわ。誰かさんと違って」
「ですね~、誰かさんは朝すら自分で起きれませんし」
「そうね、誰かさんは食べて寝て食べて寝ても何も変わらない」
美和子さんは呆れたようにご飯を大量に口の中に入れ、頬を膨らませている美也の方を見る。
美也も「誰かさん」というのが自分なのはさすがに気が付いているらしく、不機嫌な顔をしてこちらを睨んでくる。
「ふぁふぁふぃほぉっふぁふぁふぁふぃふぁ!」
「何言ってるか理解できないし、口に物を入れた状態でしゃべるな」
「むぐっ………私だってちゃんと未来のビジョン持ってるもん!!」
「慧ちゃん、食べましょ」
「そうですね、ご飯冷めちゃいますしね」
「なーっ!!ちゃんと聞いてよ!私の未来のビジョン!」
行儀悪くバンバンと机を叩く美也を横目に俺と美和子さんは箸を進めていく。
そのうち、無視されたことにキレた美也が更に強く机をバンバンと叩き始めた瞬間、彼女の頭に美和子さんの鉄槌が下ったのは言うまでもない。