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第3話 きょーちゃん人形の呪い?

 

「おい、起きろっつってんだろ」


 きょーちゃん193の攻撃。


「ふがっ!?」


 見事、美也選手の顔面セーブだ。


 現在時刻は7時50分。

 これ以上、時間を無駄にすることはできない。

 それなのにベッドの上で、この辺の女子中学生と一部の男に人気のある我が校のセーラー服を中途半端に着崩し、スカートが見事に捲り上がり、華の女子高生の貴重な足が丸見えとなっている。

 もし、これが160cmぐらいの美少女のあいつなら俺は色んな意味でやばかっただろうけど、残念ながら俺の目の前でそんな変な格好するのは美也だ。

 140cm以下という身長で色気のイの文字も感じられない。

 別に俺が幼女が恋愛対象に入っていないとかではなく、これはおそらく美也だからだろう。

 というか、見慣れ過ぎているし、クマのパンツはどうかと思う。


「これ以上、俺の貴重な時間を奪う気ならお前の大切なきょーちゃん人形とやらを燃やすぞ」

「だめだよぅ…ふぁぁぁぁ~……、それはきょーちゃんの分身なんだからそんなことをしたらきょーちゃんが燃えちゃうよ?」


 大きな欠伸を恥じなくする美也。

 その俺の分身とかいう人形で涎を拭き、形が変形しているほど抱きしめている辺り、あの人形にそんな呪い的要素は見られない。


「ほら、カバン。朝ごはんは美和子さんから貰っていくから」

「ママ?」

「そう、ママだ。ほら、さっさと行くぞ」

「うぅぅ~、今日は始業式だし行かなくても大丈夫だよ?」

「黙れ、引きこもり。一日目から妥協すんな」

「あぅ」


 きょーちゃん第何号かは知らないが、近くにあった人形を美也に投げる。

 人形は見事、美也の顔にポスっと当たり、彼女の手元に落ちると、美也は大切そうに抱きかかえる。


「うぅ~、行きたくないよぅ…髪ぼさぼさだよぉ…」

「誰もお前なんか異性として見ねぇよ」

「あ、酷い!いま、酷いこといった!」

「うっさい。ほら、クマのパンツ隠して行くぞ」

「あ、これ、お気に入りなんだ~」

「スカートを捲るな、見せつけるな」

「えへへ~、可愛いでしょ~」

「ちょっとは女らしくしろよ…」


 美也は特になんて事のないようにスカートを捲り、パンツを見せる。

 その姿に大きなため息を付きながら、部屋を出て、玄関で待つ。

 そして、美也が玄関に来るのを待って、一緒に家を出る。


「電車まであと20分か」

「ギリギリだね」

「次、言葉を発したらそのクマのパンツ燃やすぞ」

「………」

「よし。んじゃ少し急いで行くか」

「………」

「いや、もう良いって。ほら行くぞ」

「うん!」


 少し小走りをしながら街中を抜けて行き、駅の方へと向かう。

 15分少し歩いた所でようやく駅の近くまで来ると、そのまま駅へと向かわずに少し賑わっているパン屋さんへと足を向ける。


「慧ちゃん、いつもありがとうね」

「おつかれさまです、美和子さん」

「ママ~、メロンパンは売り切れたの?」

「美也、それは売り物。触らないでって何度も言ってるでしょ!」

「あぅ…怒られた」

「バカだろお前」

「ごめんね、慧ちゃん。こんな子を預けちゃって」

「いえ、馴れてます。それよりも時間やばいんで」

「あらあら、そうね。はい、これ。こっちが美也の分でこっちが慧ちゃんの分ね」

「いつもありがとうございます」

「い~え~」

「店長~、パンが焼けましたよー!」

「あら、ごめんごめん。慧ちゃん、いってらっしゃい」


 優しい笑顔で俺達を見送ると忙しそうに仕事を再開させる。

 この時間のパン屋は忙しい。

 美和子さんのパン屋はここら辺の住民なら誰もが利用するお店だ。

 特にこの時間帯はサラリーマン層の多さが目立つ。

 その理由としては、美和子さんと店員さんの亜矢だろう。

 美和子さんは美也を160cmぐらいまで成長させて、大人っぽい雰囲気を醸し出させて、大人の女性独特の優しい笑顔………まぁ、最初っから美也がベースである必要性は無くなってしまっているわけだけど、とにかく大人のような綺麗な女性なのだ。

 そして、高校1年生で俺達の同級生である港 亜矢。

 高校生らしい元気一杯で老若男女から好かれる女の子だ。

 見た目も美也のように可愛らし…くはなく、どちらかと言うとクールな感じを受ける。

 黙っていればカッコいい女性という感じなのだ。

 黙ってればの話だけど。




「亜矢ちん…バイトしてるよ?」


 無事、遅刻しない電車に乗り、座席に座ると美也が「おい、どういうことだ」と言いたげな目でこちらを見てくる。


「亜矢は…まぁ特別だろ。美也と違って成績優秀なわけだし」

「…でも、バイトしてるよ。うちの学校はバイト禁止だよ」

「バイトしようともしてない奴が何言ってんだよ」

「あ、亜矢ちんの肩持つんだ」

「そりゃまぁ。引きこもりよりは」

「きぃー!私も学校休む!」

「黙れ、引きこもり。落ち付け」


 今にも暴れ出そうとしている美也の頭に手を乗せて、怒りを鎮める。

 こんなバカげた、まるで小さな子どもを相手にするような行為で美也は静まるのだ。


「よーしよしよし。良い子だ」

「ふしゅ~」

「そうだ、落ち付け。そして考えろ、お前の今日の朝食昼食は俺の手の中にあることを」


 柔らかく、サラサラした髪を撫でながら、決定的な言葉を美也に投げかけ、このバカを完全制御することに成功した。



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