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第2話 運命の赤い糸?

 

 俺と美也が出会ったのは運命でも何でもない。

 美也は「運命の赤い糸が引き合わせた!」とか夢のような事を言っているが、現実的に考えるべきだろう。

 だけど、偶然ってのは確かに起きているのだ。

 まず、1つ目の偶然としては俺と美也の誕生日が一緒だと言うこと。

 それも9月13日の午後14時16分に俺が産まれ、17分に美也が産まれている。

 誕生日からわかると思うけど、俺達はクリスマスベイビーだ。


 まぁこの件に関してはそういうカップルが大量に居るから可能性としても高い方かもしれない。


 2つ目の偶然として、俺と美也が産まれた病院が同じだと言うこと。

 これも偶然というには少し語弊がある。なぜなら俺達が産まれた病院は産婦人科が有名な所だ。


 3つ目の偶然は俺の家と美也の家が隣同士だったということだ。

 お互いの両親が「子どもが過ごしやすい所へ行こう」という気持ちでこの街にやってきて、お隣同士になった。

 もちろん、病院内で顔を合わせていたこともあり、すぐに打ち解ける。

 そして、俺の初めての友達が美也であり、美也も同じだった。

 だから、小さい頃からずっと美也と一緒だったし、彼女の知らない過去は無い。

 美也が何歳まで1人で寝られなかった。とか、おねしょしていた。とかうる覚えながら覚えている。

 もちろん、それは美也も同じはずなのだけど、彼女は基本バカなのだ。

 覚えてはいないだろう。



 ちなみに、どうして俺が美也を毎朝起こしに来ているかという話なのだが、これは美也の家庭と小学校に入った時から説明しないといけない。

 美也の両親は共働きであり、お父さんの明彦さんがお医者さん。お母さんの美和子さんがパン屋さん。

 明彦は仕事の関係上、ほとんど家に帰ってくることは無い。

 美和子さんは朝4時から店の方に出るため、美也を起こすことは無い。

 ちなみに美和子さんから聞いた話ではすでに家庭は仮面夫婦らしく、明彦さんは他に女を作ってるとかなんとか…。

 その辺は詳しく聞くことは無かったが、美也が言うには「パパはいないと思ってるし、ママは男よりもパンと私ときょーちゃんのお母さんときょーちゃんだけで良いって言ってるよ?」と言っている。

 まぁ所詮、他人の家の事だし、明彦さんにはもう全然会っていないから俺としてもどうでもいいことだ。


 そんな家なため、美也を起こす人が居ないのだ。

 だから、自然に美也と一緒に小学校に行く俺が彼女を起こす役になった。

 最初の頃は「どうして俺が…」なんて感情は無く、美也と一緒に居る事が普通だと思っていたため、苦痛では無かったし、美和子さんのパンをタダで食べられるから喜んで行っていた。

 そのうち、学年を重ねていくと恒例となっていたこの行為に違和感を抱きつつも、「まぁいっか…」という思いで、今まで続けてきているのだ。


「慧、ちゃんと美也ちゃん起こしてきた?」

「ああ。どうせ2度寝してるだろうけど、行く時にもう一回叩き起こす」

「そう。朝ごはんは美和子の所で貰ってね」

「あぃよ」


 自分の家に戻ってくると母さんがリビングでくつろぎながらTVを見ている。

 うちの家も崩壊しているといえばしているか…。


 自分の部屋へと向かいながらそんなことを思う。

 俺の家には父親が居ない。

 今から5年前に不慮の事故で亡くなった。

 当時は俺も母さんも悲しみに暮れていたが、美也たちに支えられ、今は普通に暮らせている。

 家の収入源は母さんの仕事。

 母さんは大学教授さんだ。収入としてはかなりのもの。だから、生活に困ることは無い。

 ただ、父さんが生きていた時も家事をしていたのが俺と父で、母さんは家事の一切をすることができない。

 1人で生きていく程度ならできるらしいが、今でも手伝い程度しかしない。

 だから、父さんが亡くなってからは主に俺が家事をしている。


 部屋に戻り、制服に着替える。

 今日で夏休みも終わり、2学期の始まり。

 まだまだ暑さが残るけど、朝と夜には秋らしい空気になる。


「それじゃ、行ってくるから。今日は夕食いるの?」

「ん~、今日は……。メールするわ」

「あそ。夕方までには連絡して。連絡無かったら作らないから」

「はいは~い。いってらっしゃい」


 ぷらぷらと背中越しに手を振る母を見ながら、リビングを抜け、玄関へ向かう。

 あんな人でも教授ってやっていけるものなんだろうか…


 靴を履いて、家を出る。

 そして、隣の家を見るが予想通り、人の影は一切無かった。



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