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第12話 けもの・・・か?

 

「ほれ、誕生日プレゼント」


 美和子さんと母さんがすでにお酒に手を伸ばしている間に俺はケーキにがっついている美也に渡す。


「ふぇ?今年も目覚まし時計!!」


 口の周りに生クリームを付けながらこちらを嬉しそうに見てくる美也を見ていると、こいつはいつまでも子どもだなぁと思わせる。

 というか、なんでこいつ目覚まし時計でこんな喜んでるんだよ…?

 美也は楽しそうに俺お手製の包装を力技、つまりビリビリに破いていく。

 綺麗に包装するの結構難しかったんだけど…呆気ないな…。

 数秒の間に包装が綺麗に破られる。そして、現れたのはネコじゃらし。


「へ????????」


 ん?もしかして美也はネコじゃらしを知らないのか?


 美也は不思議そうにネコじゃらしを見つめながら固まる。

 やっぱりあれの遊び方を知らないらしい。…まぁ、ネコを飼っていないのにネコじゃらしを渡されて「さぁ遊べ」と言われても美也の反応が正しいだろう。

 不思議そうな顔をしながらネコじゃらしを見る美也から、ネコじゃらしを奪い、彼女の前でぴょこぴょこを動かす。


 最初こそは「?」という文字が頭の上に何個も浮かび上がっていた。

 しかし、しばらくすると徐々に彼女の目がネコじゃらしを追い始める。


「ほ~れほれほれ」

「…………」

「ほ~れ」


 ぴょこぴょこと動かす。

 そして、ついに美也の真の姿が現れる。

 手をシュパッっとネコじゃらしを触ろうとする。

 その姿はまるでネコ。いや、ネコ。

 それも普通なら1回で自分の醜態に気が付く所だ。顔を真っ赤にして自分の行動を反省する所。

 しかし、美也は違う。何度も何度もネコじゃらしを捕まえようとする。

 ネコのように捕まえようとする。

 それも楽しそうに。


「とりゃ!はぃ!にゃー!」

「………」

「しゃぁー!!!」


 今すぐ彼女の頭から耳が生えてくるんじゃないか…。

 そんな不安すら覚えるほど、彼女の反応はネコと同じだ。


「美也?」

「ん?」

「お前、ネコに取り付かれてんじゃ?」

「ねこ???私、ネコなの?」

「いや、お前はバカだけど」

「ばか?バカなの?」

「………」


 なんだろう…すっごく腹が立つ…。

 自分の言葉をオウム返しされるってかなり腹が立つな…。

 こいつの場合は、無意識にやっているから怒るにも怒れない。


「……はぁぁ。ほら、誕生日おめでと」

「えぇ~、もういいの?もっとやってよー」

「ここからは10分1000円だ」

「高いっ!?」

「なら諦めろ。ふぁぁぁ~…眠い」

「私も~、ふぁぁぁぁ~~~」

「おい、着いてくんなよ。自分の部屋に戻れよ」

「きょーちゃんと寝るんだ~」

「嫌だよ、獣臭い」

「くさっ!?」

「冗談だよ。ほら、さっさと家に帰れよ」

「だってママがここに居るんだもん。家のカギはママが持ってるし」

「なら貰ってこればいい」

「お酒入ったママから物を貰えるとは思えない…私だし…」


 それはお酒の入った状態だろうと入っていない状態だろうと貰えないだろう…とは口に出さずに、お酒で盛り上がっている母親グループの方を見る。

 確かにあれだけ盛り上がっている所に話かけるのも嫌だな…。


「しゃーない、また母さんの所で寝れば?」

「きょーちゃんの所は?」

「無理、獣臭くなる」

「うぅー、昔は一緒に寝てたでしょー」

「残念ながら俺はその頃よりも大きくなっていてだな。ベッドには俺1人が限界なわけだ」

「わ、私だって大きく!」

「大して変わってないだろうに…維持を張るな維持を」

「ホントに大きくなったんだからー!!」

「はいはい。んじゃ大きくなったお前には母さんの大きなベッドをやろう。ほれ、じゃぁな」


 美也が入ってくる前にドアを締め、カギを掛ける。

 そして、ドアの前で変に騒ごうとするであろう美也対策のために耳栓を付けて、ベッドの中に入った。





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