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第11話 デー…ト?

 

「うふふ、ケイとデートなんて何年ぶりかな?」

「デート?したことないぞ、そんなの」

「あらら?僕はいつもケイと2人きりならデートのつもりだよ?」

「なら、手でも繋ぐか?」

「遠慮しておくよ。手を繋いでしまったら僕がケイの事を好きになっちゃいそうだもん」

「笑わせるな、同性愛者」


 今日は9月8日の土曜日。

 俺と亜矢は周りから見れば"カップル"のようないちゃつきっぷりを披露しながら電車に乗っていた。

 すでに俺には周りに居る男たちの嫉妬の眼が降り注がれている。

 こういう視線ってのは実際受けてみると大したことは無い。馴れればの話だけど。


「僕は同性愛者だけど、男もいけるよ?つまり、バイセクシュアルなの」

「そうですか。俺には理解できないから」

「うふふ、女の子は良いよ?こう、触り心地が良いんだ。男の子も女の子と違って筋肉の硬さっていうのかな?」

「それ以上語るな。鳥肌が立つ」


 亜矢はニコニコしながら「女の子の魅力と男の子の魅力」について語りだす。

 そう、彼女はクールな顔つきをしながら、ボクッ子であり、なおかつバイセクシャルなのだ。

 バイセクシュアルってのは両性愛者。つまり、異性も同姓もそういう対象で見れるということ。

 ちなみに亜矢の場合は、恋愛的な魅惑などは男の子も女の子も感じれるが、肉体的となると女の子のみらしい。


「ケイも好きなんでしょ?女の子同士が」

「おい、それ以上は危険すぎる。公共の場で話すんじゃねぇよ」

「確かに。少し暴走しちゃったかな」

「少しなのか?」

「少しだよ。本当に暴走した僕を見たいなら見せてあげるよ?ケイは特別」

「いらん。 それよりも何買うか決めた?」


 亜矢がこういう人だとは昔から知っていたから今更引くとかは無いが、改めてこうして言われると鳥肌が立つ。

 顔だけはかなり良い方の分類だから、こうして「特別」とかいう言葉は非常に効果的なのだ。

 もちろん、亜矢はそれを知っていてやっている。だから、性質が悪い。


「ううん。別に決めないよ。だって、僕は毎年同じのをあげてるから」


 少しだけムッとした顔をしながらも、いつも通りの亜矢に戻る。

 今日、俺と亜矢がこうして2人だけで来た理由。それは9月13日の美也の誕生日プレゼントを買うためだ。

 小さい頃からの恒例行事であり、亜矢も知り合った時から毎年美也にプレゼントをしている。


「あぁ、あのきょーちゃん人形か…」

「そう。私は今年で9体目になるのかな。出来はかなり良いよ」


 亜矢はカバンの中から俺がデフォルメされた人形を出す。

 今年のはスーパーマンみたいに両手を前に出して、空を飛んでいるようなポーズを取っている。


「ホント器用だよな…」

「まぁこれぐらいはね。美也ちんほどではないけど」

「あいつはあれしかできない」

「服とかも自分で作ってるでしょ?」

「あれはしょうがないんだよ…合う服がない」

「それだけで十分凄いと思うけどね、僕は。それよりもケイはどうするの?今のところ5年連続で目覚まし時計を送っているんだけど」

「さすがにもう効果がないってことは理解したから別のにするよ」


 毎年、「早起きできるように!」と比較的音の大きい目覚まし時計を誕生日プレゼントとして贈っているのに、全く効果が無い。

 というか、「きょーちゃんから貰ったもの!」とか言って、箱から出さずに大切に保管されている。

 去年に贈った「コロコロと動き回る目覚まし時計」ってのは猫っぽい美也には効果的だろうと思って買ったのにそれすら箱から出たことが無い。


「別というと…なに?」

「…さぁ?イカリングとか?」

「それは確かに喜びそうだね。それにちゃんと食べてくれそう」

「いや、あいつイカ苦手だし…」

「ますます子猫ちゃんらしいね」

「ん~、何あげよ…」


 ご飯とバースデーケーキは美和子さんの特権。

 高級品を買うほど俺のお小遣いも無い。

 そもそも、今年の誕生日には腕時計を贈ろうとしていたんだけど、それは母さんが贈るとか言っていた。

 だから、俺が贈れるモノってのがあまり無かったりする。


 俺と亜矢は電車を降り、ここらでは一番大きなデパートへと向かう。

 その途中も色んなお店へと連れていかれては「これなんて私に似合うんじゃ?」とふざけた事をしてくる亜矢に対して「お前がそんなの着たら世界中の男を魅了するかもなぁ」とこちらもまたふざけた返事をしながら時間が潰れていく。


 デパートに着いても、そんなふざけたような会話が継続され続け、お互いネタが切れ始める。


「はぁ~、とりあえず美也ちんにはこれで良いんじゃないの?」


 変な会話をしすぎたせいで俺も亜矢も疲れ切った後、ペットショップに置いてあるねこじゃらしを手に取る。

 確かにこれなら美也に似合いそうだし、暇な時にこれで遊べるか…。と俺もまた疲れているので変な思考が働いてしまう。


「そうそう、これが一番」

「だなぁ、んじゃこれ買ってくる」


 ねこじゃらしを手に取り、レジの方へ持っていく。

 もちろん、プレゼント用に包装してくれるわけがないので、100円ショップの方で包装用の紙を買う。

 そして、俺と亜矢はデパートの中にあるレストランに入り、見栄え良くねこじゃらしを包装させる。


「これで大丈夫だろ」

「うんうん。いつ頃渡す予定?僕は学校で渡す予定だけど」

「今年は来ないのか?」

「予定があるんだ」

「ふ~ん、そか。俺は家でだなぁ」

「そっかそっか。それじゃケイ、残りの時間も付き合ってもらうよ」

「あぃよ」


 亜矢はポテトを食べながら満足そうな顔をする。

 ほんっと…黙ってれば凄く良いのにもったいない…と思ったのは内緒だ。


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