『悪役令嬢アルベルティーヌの優雅なる日常・二 』―猛虎は普段使いするものではありません―
前作の反響で確信しました。
この公爵令嬢、放っておくと勝手に喋ります。しかも正論で殴ってきます。
作者としても気に入ってしまったので、続編やります。
今回はなるべく優雅に……優雅に……(たぶん無理)
引き続き、アルベルティーヌの“日常”を見守っていただければ嬉しいです。
断罪の夜会から三日が過ぎても、王宮の空気はまだ落ち着かなかった。
表向きは「誤解があった」で収まり、宰相による差し戻しと再調査が進み、王太子セドリック殿下は不用意な断罪の手続きについて叱責を受けた――と、そういう筋書きになっている。けれど社交界は筋書きだけで動かない。噂は、正しい情報よりも早く広がり、しかも面白い方へ勝手に育つ。
その面白い方というのが、よりにもよって。
「公爵令嬢様、今日も“虎”は出ますか?」
朝の侍女控え室で、若いメイドが目をきらきらさせてそう尋ね、古参のマルタが無言で頭をはたいた。
「くだらないことを訊くんじゃない。公爵令嬢様はいつでも優雅です」
叱られたメイドはしゅんとするどころか、さらに興奮した顔で頷いた。
「はい、優雅で……ええと、正論で……あと、低音が……」
「静かに。仕事」
マルタが短く言い切る。そこで終わるはずだった会話を、当の本人が背後から柔らかく拾った。
「おはよう、皆。今日もよろしくね」
アルベルティーヌ=ヴァルモンは、いつもの笑みで扉を開けて立っていた。白いドレスは控えめな刺繍、髪は高すぎない位置でまとめ、香水はほとんど分からない程度。何一つ崩れていない。崩れていないからこそ、侍女たちは一斉に背筋を正した。
そして、全員が一瞬だけ視線を泳がせる。
“虎”が今日出るのかどうか――という、言葉にしてはいけない話題を、同時に思い出したのだ。
アルベルティーヌはその視線の意味が分かって、内心で静かに頭を抱えた。
(やめて。お願いだから、生活の天気予報みたいに“虎”を扱わないで。)
夜会でのあの一件は、確かに自分の中の何かを解放した。理不尽に対して引き下がらないこと。場の空気を、声と論理で押し返すこと。結果的にそれが、断罪を「成立させない」最善手になったのも事実だ。
だが、代償として“猛虎”という単語が一人歩きしている。
しかも妙に、期待されている。
「マルタ。今日は図書館に行くわ。王宮から届いた資料の写しも確認したいの」
「承知いたしました。馬車の手配は済んでおります」
マルタはいつも通り、無駄のない返事をする。その手には、いつの間にか小さな包みがあった。薄紙で丁寧に包まれた、硬そうな飴。
アルベルティーヌが眉を上げると、マルタは真顔で言った。
「蜂蜜飴です。念のため」
「……念のため、ね」
声は微笑みのまま、目だけがわずかに据わる。侍女たちが同時に「ひっ」と息をのむのが分かった。
(違う。今日は虎じゃない。図書館回。平和回。)
アルベルティーヌは心の中で三回唱えた。「優雅に」「優雅に」「優雅に」。そして廊下を進みながら、全身に“淑女の仮面”を密着させるように意識した。
彼女がまず向かったのは王宮附属図書館――ではなく、その裏の小さな会議室だった。宰相府から資料の閲覧許可が下り、担当書記官が形式だけの説明をする予定になっている。
扉の前で待っていたのは、眼鏡の若い書記官と、なぜか宰相その人だった。
「公爵令嬢、早いな」
「宰相閣下。ご多忙の中、わたくしのためにお時間を割いていただき光栄ですわ」
「儀礼はよい。今回は、君の名誉だけではなく、王太子の手続き、ひいては王家の信用が絡む。確認したいことがある」
宰相は短く言って、会議室へ招き入れた。机の上には、例の「証言」とされる書面、給仕係の供述、侍女の当日の動線記録、夜会の配置表、そして――王太子が断罪を宣言した台本のような原稿が置かれている。
アルベルティーヌはそれを見ただけで胃の奥が冷えた。
(台本……。やっぱり台本。)
だが、顔は崩さない。崩さないまま椅子に座り、書類に視線を落とす。
「閣下、まず一点。これは、殿下が自筆で準備されたのですか?」
「秘書官が整えた。殿下の口述を元にしている」
「なるほど。では、二点目。『証言が集まった』という表現の内訳は?」
宰相が一枚の紙を指で叩く。
「“噂を聞いた”が三。“侍女が言っていた”が二。“見た”が一。以上だ」
アルベルティーヌは、心の中で机をひっくり返した。
(“噂を聞いた”が三。証言ではない。伝聞です。裁判でも政治でも、伝聞は“燃料”にはなるけど“判定材料”にはならない。)
喉の奥から熱が上がってくる。声帯が勝手に低くなりそうになるのを、蜂蜜飴で押さえたい衝動に駆られる。
だが、ここは会議室。虎は不要。必要なのは冷静な刃だ。
「閣下。差し支えなければ、この“見た”一件の詳細を」
「男爵令嬢エミリア=グランデだ。夜会の場で叫んだ者だな」
アルベルティーヌはその名に覚えがあった。夜会で壇上脇から声を上げた、派手な装いの令嬢。確か、王太子の幼馴染の取り巻きに近い立ち位置だったはずだ。
「承りました。……閣下、お願いがございます」
「言ってみろ」
「本件はわたくし個人の名誉だけではなく、今後の断罪の在り方――つまり、王家が“何を根拠に誰を裁くのか”の問題です。再発防止のためにも、形式的な謝罪ではなく、手続きの整備を求めます」
宰相の眉がわずかに動く。
「君は、王家に制度改正を求めるのか」
「ええ。でなければ、次に誰が吊し上げられるか分かりません。わたくしでなくても。ヒロインであっても。貴族でなくても」
宰相は数秒黙り、それから短く笑った。
「噂通りだな」
「噂、とは?」
「君は“声が怖い”のではなく、“理屈が怖い”と」
アルベルティーヌは微笑んだ。礼儀の微笑みだ。だが、心の中では小さく拍手した。
(そう。そこ。虎より、そっち。分かってくれる人がいるなら、まだ救いがある。)
会議室を出た後、アルベルティーヌは図書館の一般閲覧室へ向かった。書棚の匂いは落ち着く。文字は裏切らない。噂と違って、勝手に増殖もしない。彼女は政治史の棚から一冊、法慣習の棚から一冊を抜き、机に置いた。
そのとき、すぐ隣の席に誰かが座った。
「……アルベルティーヌ様」
囁くような声。金色の髪。リュシエンヌだった。
アルベルティーヌは反射的に背筋を伸ばし、次に、呼吸を整えた。
(ここで虎は出さない。出したら物語が別の方向へ行く。)
「お久しぶりですわ、リュシエンヌ様。お怪我は?」
「怪我は……ありません。あの……謝りたくて」
リュシエンヌは膝の上で手をぎゅっと握りしめていた。夜会のときの儚げな演技とは違う。今は本当に怯えている。けれど、怯えの理由が「断罪の反動」なのか「自分が何かをした後ろめたさ」なのかは、まだ判別できない。
「謝る、とは?」
アルベルティーヌはあくまで優しく尋ねた。責める口調にならないように、声の高さまで意識する。
「わたし……皆が言うから……アルベルティーヌ様が……わたしを……」
「皆が言うから、そう思った」
言葉を繰り返すだけで、十分に刃になる。リュシエンヌの肩が小さく震えた。
「……わたし、弱くて……流されて……」
「弱いことは罪ではありませんわ。けれど、流されることで誰かが傷つくなら、それは“選択”です」
リュシエンヌの目に涙が溜まる。アルベルティーヌは少しだけ、胸が痛んだ。彼女が悪意の塊とは限らない。むしろ、悪意の塊が周囲にいて、彼女は利用されている可能性もある。
その可能性を確かめるために、アルベルティーヌは一つだけ踏み込んだ。
「リュシエンヌ様。夜会の前、エミリア=グランデ男爵令嬢とお話しされました?」
リュシエンヌの瞳が一瞬だけ泳いだ。
「……はい。『もし何かあったら、私が助ける』って……」
「助ける、ね」
アルベルティーヌは、机の上の本の背表紙を指でなぞった。指先は穏やかだが、頭の中では歯車が高速回転する。
(台本がある。証言者がいる。ヒロインの周囲に“助ける”と言う人物がいる。これは偶然ではない。)
「大丈夫ですわ。今日はここまでにしましょう。読書の邪魔をしてしまいましたね」
「アルベルティーヌ様……わたし、怖いです。皆が……わたしを見て……」
「貴族社会は、目と口で生きています。慣れましょう。……ただし、目と口に殺されないように」
リュシエンヌは理解できたのかできなかったのか分からない顔で頷き、席を立った。去り際、彼女は小さく言った。
「……あの時、アルベルティーヌ様の声、かっこよかった」
アルベルティーヌは思わず咳き込みそうになり、慌てて咳を飲み込んだ。
(やめて。本人に言わないで。恥ずかしい。)
図書館から戻ったその日の午後、公爵邸には紅茶会の招待状が届いた。送り主は伯爵夫人。断罪騒ぎの直後に、あえてアルベルティーヌを招く。目的は二つに一つだ。味方になりたいか、面白い見世物を見たいか。
どちらにせよ、出席しない選択肢はない。欠席は欠席で、噂が増える。
翌日、伯爵邸のサロンは華やかだった。令嬢たちは扇子と笑みで互いを刺し合い、夫人たちは穏やかな声で噂を煮詰める。アルベルティーヌが入室した瞬間、空気がほんの少しだけ張り詰めたのが分かった。
視線が集まる。期待と恐れが混じった視線だ。
(だから、やめて。)
アルベルティーヌは優雅に一礼し、席に着く。紅茶を受け取り、香りを確かめ、口をつける。完璧な淑女の動作。それだけで「今日は虎じゃないのね」と落胆する気配があるのが、逆に腹立たしい。
そんな空気を裂くように、わざとらしい声が響いた。
「ごきげんよう、公爵令嬢様」
エミリア=グランデ男爵令嬢が、サロンの中央に立っていた。淡い桃色のドレスに、大ぶりの宝石。明らかに“主役”を奪いに来ている装いだ。
「ごきげんよう、グランデ男爵令嬢」
アルベルティーヌは微笑んだ。いつもの微笑み。相手が挑発してきても、こちらから崩さない。崩した方が負ける。
エミリアは扇子を広げ、周囲に聞こえる声量で言った。
「先日の夜会では、大変なご活躍でしたわね。あの……ええと、低いお声。貴族の女性が出してよい声ではありませんけれど、とても“印象的”でしたわ」
サロンの空気が、甘い砂糖菓子の上に針を落としたように固まる。伯爵夫人は笑みを張り付かせたまま、何も言わない。周囲の令嬢たちは「来た」と顔に書いてある。
(来た。見世物タイムの開始。)
アルベルティーヌは息を吸った。虎が喉元まで出かかるのを感じる。だが、ここで虎を出したら、彼女の思う壺だ。
彼女が欲しいのは、“猛虎令嬢”という話題性。こちらが吠えれば吠えるほど、彼女は“被害者”になれる。だから、吠えない。
吠えないで、刺す。
「印象的、というのは光栄ですわ。けれど、男爵令嬢。女性が出してよい声、という基準はどこにございますの?」
声は柔らかい。口調も柔らかい。だが質問の形をした刃が、エミリアの足元を切り取る。
「それは……常識ですわ」
「常識。便利な言葉ですわね。常識は多くの場合、責任の所在を曖昧にします」
令嬢たちの何人かが、思わず紅茶を噴きそうになっている。伯爵夫人の目がわずかに輝いた。面白い、と思っている。
エミリアはわずかに顔を引きつらせたが、すぐに笑みを作った。
「でも、公爵令嬢様。あの場で王太子殿下にあれほど強く言い返すのは……さすがに、少しだけ方向を間違えたのでは?」
どこかで聞いた言い回しだった。最近の噂か、誰かの感想か。いずれにせよ、彼女は“世間の声”を借りて殴りに来ている。
アルベルティーヌは、紅茶のカップを音もなく置いた。
「少しだけ、ですか」
「ええ、少しだけ……」
「では、確認しましょう。男爵令嬢が言う“方向”とは何を指しますの?」
「……え?」
「敬うべき相手に敬意を払うこと。貴族としての秩序を守ること。そういう意味かしら」
エミリアが勝ち誇るように頷いた。
「ええ。まさに、それですわ」
アルベルティーヌは微笑んだまま、言葉を続けた。
「では、秩序とは“正しい手続き”の上に成り立つものです。手続きが崩れたとき、秩序を守るために声を上げるのは、秩序の敵でしょうか、味方でしょうか」
エミリアの笑みが止まる。周囲の令嬢たちが、扇子の陰で息をのむ。
「それは……」
「さらに申し上げます。あの場は、王太子殿下が“公開の場で一個人を断罪する”場でした。根拠は伝聞が多く、裏取りも不足していました。もしわたくしが黙っていたら、その場の空気だけで“断罪”が成立していた可能性がございます」
アルベルティーヌの声は、あくまで穏やかだ。怒りは見せない。怒りを見せると、相手はそれを餌にする。
代わりに、理屈を淡々と積み重ねる。
「男爵令嬢。あなたは、王家の信用を守りたいとおっしゃいました。でしたら、誤った手続きで王家が誤った裁きを下すことこそ、最も王家を傷つけるのでは?」
エミリアの唇が震えた。
「わ、わたしは……ただ……」
「ただ、何ですの?」
問いは優しい。だが逃げ道はない。
エミリアが言葉を探している間に、アルベルティーヌはとどめを刺すための一言を、丁寧に整えた。
「男爵令嬢。あなたは“見た”とおっしゃいましたね。夜会で、証拠があると。――何を見たのですか」
サロンが沈黙した。まるで舞台で照明だけが落ちたように、空気が一点に集中する。エミリアは目を泳がせる。ここで曖昧に答えれば、矛盾が生まれる。具体的に答えれば、嘘が露呈する。
どちらに転んでも、彼女は傷つく。
それを分かって、エミリアは声を荒げた。
「わたしは……わたしは、リュシエンヌ様が泣いているのを見たのよ!」
アルベルティーヌは、静かに頷いた。
「泣いていたのですね。……それは事実ですわ」
同意。意外性。エミリアが一瞬だけ勢いを取り戻す。
「で、でしょう? だから――」
「けれど、それは“泣かせた原因”を見たことにはなりませんわ。泣いている人を見ただけで、誰が悪いかを断定するのは、論理として無理があります」
周囲から、堪えきれない小さな笑いが漏れた。笑いというより、感心の吐息に近い。
エミリアは真っ赤になった。
「あなた……っ!」
アルベルティーヌはそこで、ほんの一瞬だけ声を低くした。低く、短く。
「……落ち着きなさい」
たったそれだけ。方言でも罵倒でもない。けれど空気が凍る。エミリアが息を止め、周囲が「出た」と目を見開く。虎は吠えなかった。ただ、檻の前に影が落ちただけだ。
アルベルティーヌはすぐに声を戻し、微笑んだ。
「失礼。驚かせてしまいましたわね。……男爵令嬢、あなたが悪いと言いたいのではありません。あなたが“確かめずに断罪へ加担した”ことが問題なのです」
エミリアは言い返せない。言い返した瞬間、また論点がずれる。ずれた論点は、アルベルティーヌの最も得意とする獲物だ。
伯爵夫人が、ここでようやく口を開いた。
「皆さま。紅茶が冷めてしまいますわ。話題を変えましょう」
助け舟の形を取りつつ、場を締めた。上手い。夫人は“炎上”を望んでいない。望んでいるのは“見世物”であって、関係が壊れることではない。
それでも、もう十分だった。
その日の紅茶会の帰り道、馬車の中でアルベルティーヌは肩の力を抜いた。マルタが向かいに座り、無言で蜂蜜飴を差し出す。
「今回は……使いませんでしたわ」
「使いました。最後の一言で喉に力が入りました」
「……そこまで分かるのね」
「侍女ですので」
マルタは平然と言い、飴の包みを開けて渡した。蜂蜜の甘さが喉に広がる。確かに、少しだけ喉が疲れていた。
アルベルティーヌは窓の外を眺めながら、ぽつりと呟いた。
「ねえ、マルタ。わたくし、間違っているのかしら」
「何がですか」
「優雅に生きたいのに、結局、正論で殴ってしまうこと」
マルタは少しだけ考え、それから淡々と答えた。
「お嬢様は殴っていません。整列させています」
「整列」
「はい。秩序を乱す者に、秩序の形を見せているだけです」
アルベルティーヌは笑った。今度は上品な笑い。けれど、その笑いには少しだけ本音が混じっていた。
「それ、褒めてるの?」
「現場としては助かっています」
「現場……」
「はい。社交界も王宮も、現場です」
マルタの言い方があまりに当然で、アルベルティーヌは再び笑った。
(そう。現場。なら、必要なのは“勝つこと”じゃない。“事故を起こさないこと”。そして、事故を起こさない制度を作ること。)
断罪の再調査は、これから本格化するだろう。王太子の軽率さは簡単には消えない。リュシエンヌが何を知っているのかも、まだ分からない。エミリアの背後に誰がいるのかも。
けれど、アルベルティーヌはもう以前の“悪役令嬢”ではない。
優雅な仮面を被ったまま、論理で相手の足場を奪える。必要なら声も落とせる。虎は、普段使いするものではない。だが、檻の存在を示すだけで、無駄な騒ぎは減る。
帰宅したアルベルティーヌは、玄関ホールでふと立ち止まった。使用人たちが一斉に頭を下げる。その中に、朝のメイドがいた。彼女は目を輝かせながら、しかし小声で言った。
「公爵令嬢様……今日は、虎……出ましたか?」
マルタが無言で一歩前に出る。
アルベルティーヌは、ほんの少しだけ考えた。そして、いつもの微笑みで答えた。
「今日は出していませんわ。……ただし、必要ならいつでも呼べます」
メイドが「ひっ」と息をのむ。周囲がざわっとする。マルタは額に手を当てた。
「お嬢様」
「冗談よ、マルタ」
「冗談に聞こえません」
アルベルティーヌは肩をすくめ、飴の甘さがまだ残る喉で、柔らかく言った。
「優雅に生きるにはね。冗談のような本音も、時々は必要なの」
その夜、公爵邸の台所では、蜂蜜飴の在庫が密かに増えた。誰が増やしたのかは分からない。分からないが、翌朝には“虎予報”の噂が社交界に流れていた。
――ヴァルモン公爵令嬢は、今日も優雅である。
ただし、論理は猛獣。檻の鍵は、本人の気分次第。
【アルベルティーヌ】
……あー。
あんたら、最後まで読んでくれてほんまおおきに。
正直言うて、今回は虎出さんで済ます予定やったんやけどな。
周りが勝手にビビるのは、もう知らん。
吠えんでも通じるなら、それでええやろ。
せやけど覚えとき。
理屈が通らん相手にだけは、
いつでも檻は開くからな?
平和に終わってる間は、皆が賢い証拠や。
――以上。
優雅でおっとりした公爵令嬢?
そんな幻想は、各自で胸にしまっとき。
---
【作者】
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
最後は少し遊び心で、アルベルティーヌ本人にも出てきてもらいました。
彼女の猛虎弁はあくまで「必殺技」であって、普段の彼女はあくまで理性的で優雅な存在です。
ですが、こうして直接喋らせるとやっぱり強いですね。
今回の話は、
「声を荒げなくても、人は十分に怖くなれる」
というところを書きたくて作りました。
論理が通っていて、逃げ道がなくて、しかも穏やかな顔をしている。
それが一番効く場面もあると思っています。
キャラクターとしても、作者としても、
アルベルティーヌはかなりお気に入りの存在になりました。
もしまた続きを書くことがあれば、
今度はもっと何も起きない“本当の優雅な日常”を……
たぶん、無理ですが。
楽しんでいただけていたら嬉しいです。




