あなたのセキュリティはアカシックレコードの実在で崩壊する ~宇宙に支えられている現代セキュリティ~
## はじめに
私は『アカシックレコード』の存在を認めるわけにはいかない、なぜならそれは社会を破滅に導いてしまう――そういう立場です。
その上で、仮に『アカシックレコード』が実在し、人類の手に届く場所にあったとしたら……そういう仮定の下に論を進めていきます。
今回は(当社比)とても大人しい放火です。
単に『アカシックレコード』があれば、セキュリティも秘密も全て崩壊する……ただ、それだけです。
## 『アカシックレコード』とは?
『アカシックレコード』……この概念をご存じない方もいらっしゃるでしょう。
というか、まっとうな人生を送っていたら初耳という方が多いでしょうね。
『アカシックレコード』とは『過去・現在・未来の全てが記録されているデータベース』という定義だと、認識してください。
データベースという言葉がピンとこない方は、図書館と置き換えてください。
ここでポイントになるのは『過去・現在・未来の全て』です。
未来はともかく『過去・現在』の全てが記録されていたら?
きっとそこには、あなたの恥ずかしい過去も、歴史に埋もれた知られざる事実も、全て記録されています。
それすら些細な問題になるのです。
## 『アカシックレコード』とプラトン
あなたは、哲学者プラトンをご存知ですよね?
そう『イデア論』で有名な、そして『哲人政治』で有名なあの哲学者です。
我々の世界はイデアの影――エイドスだと主張し、イデアこそが真の世界だと訴えたのです。
さて、真の世界とは?
真の世界だと言うのであれば『過去・現在・未来』の全てを内包していても全く不思議ではありません。
なぜなら、イデアが『現在』しか保持していないとしたら、それは『真の世界』の名に偽りありです。
すなわち、『アカシックレコード』とは『プラトンのイデア論』そのものと呼べるのです。
なぜなら『イデア』が時間の概念を包括していなければ、それは既に『イデア』と呼べないからです。
## 『アカシックレコード』と『神』
あなたは、神を信じますか?
いえ、別に信じなくてもいいんですが……というか、私も別に信じていませんから。
ここでは、『神』を大雑把に『全知全能の存在』と捉えてください。
※私は汎神論者なので、神の人格性については触れません。
ここで『全能』は『アカシックレコード』に含まれませんが『全知』を司るのが『アカシックレコード』です。
なんせ『過去・現在・未来の全てが記録されているデータベース』ですから、『全知』を司れなければ『アカシックレコード』を名乗れない、という理屈です。
そう『アカシックレコード』が意思を持ってしまったら――それこそ『神の誕生』となるわけです。
それを踏まえて、ここから先をお読みください。
## SHA-256などのハッシュ値
あなたは「SHA-256」をご存知ですか?
これは、ファイルが不正に改ざんされていないかの検査、ブロックチェーンの整合性を保つため、秘密鍵公開鍵の信用を保つため……セキュリティの根幹を担っています。
これは一方向関数として「ファイル→ハッシュ値」として、現実的にはハッシュ値は衝突しない、そう見做されている代物です。
どれくらい衝突しないかというと、宝くじで一等前後賞を千回連続で当てる方が簡単です。
具体的には、全宇宙の原子より多いという計算が出ています。
なお、よりビット数が多い「SHA-384」「SHA-512」も存在しますし、より強固なハッシュ関数(ハッシュ値を算出する仕組み)もあります。
しかし『アカシックレコード』の存在により、これらのセキュリティは崩壊します。
## ハッシュ値とアカシックレコードの相性
まずは、ハッシュ値とは一方向関数です。
改めて言いますが「ファイル(などのデータ)→ハッシュ値」となります。
ここで問題となるのは『アカシックレコードが実在したら』という観点です。
過去――すなわちハッシュ値を計算した時点の記録が『アカシックレコード』に記録されています。
ここから当たり前の事実を言いますが、これは「ハッシュ値から元ファイルを参照できる」ことを意味します。
わかりやすく言いましょうか?
あなたが巨大な人に渡せない動画ファイル(どういう種類かは知りませんよ?)を持っていたとします。
この動画ファイルのハッシュ値から、あなたの動画ファイルが特定され、引き出せるようになります。
圧縮ファイルというのはご存知でしょうか?
拡張子「.zip」とか「.7z」とか「.tar.gz」とか……ある程度PCを使っていたら、必ず目にする、扱うアレです。
これらは復元可能な情報を含めて、サイズを小さくしています。
元々圧縮されているデータは、下手すると圧縮するとサイズが増えることすらあります。
……さて『アカシックレコード』が実在したら、どうなるでしょうか?
巨大動画ファイルさえ、わずか数十バイトで表記できてしまいます。
当然、HDDのデータを何重にゼロクリアして破棄しても、関係ありません。
それらは全て『アカシックレコード』に記録されているのですから……。
これだけで、軍事機密は壊滅ですね?
軍事機密すら壊滅――これで想像がつくでしょう。
あなたが日常的に使っているパスワードマネージャ、セキュリティの仕組み……。
これらは当然、全滅です。
ブロックチェーンすら、全く信用できない代物になります。
暗号通貨も当然壊滅です。
そう、現代のセキュリティは『忘れられる』ことを前提とした仕組みなのです!
さらに言うと、錬金術の人体錬成まで視野に入ってきます。
## 『アカシックレコード』が存在すると想定したときの我々の生き方
アカシックレコードは最低限『過去・現在』を全て記録している――そう想定しましょう。
すると、どういう結論が出てくるか?
あなたの記憶や思考すら、全て『アカシックレコード』に記録されていることになります。
これを国家が閲覧できる状況になっています、合法非合法とかいう話すら意味がありません。
その上で『生きていく』ことを考えるならば……
思想の自由などありません。
表現の自由などありません。
それらは全て『アカシックレコード』に記録されるのですから。
そう、反抗の意思を連想することすら許されません。
もはや『共産圏が楽園』という世界となります。
当然逆も然りです、あなたが『アカシックレコード』で思考が見られているように……相手の思考も『アカシックレコード』で思考を見ることができるのです。
これ以上の無法地帯があるでしょうか?
しかも、人体錬成で死者さえ蘇りかねない世界で?
ヒトラーやスターリンのような存在が量産される世界で?
……その時代に『人類』と呼べる存在が、まだ残っているのかすら分かりませんよね?
## 『アカシックレコード』は実在しませーん!(STAP細胞の声を連想してください)
わかりやすく、スマホやPCのストレージに喩えましょう。
……どんなに頑張っても、無限の容量を持てませんよね?
これは、宇宙規模でも同じです。
宇宙の『過去・現在』の記録だけでも、現在の宇宙ごときでは記録しきれないのです。
考えてください?
『過去・現在』の記録を『現在』だけで記録できますか?明らかに前者の容量が莫大です。
ここで「宇宙は膨張している」という話を持ってくる方もいるでしょう。
しかし「たかだか膨張した宇宙程度で、アカシックレコードを実現できるのか」そういう話です。
もっと細かく話をしましょうか?
一秒前の宇宙と現在の宇宙、この差分を『現在の宇宙』だけで保管すること、それ自体が不可能です。
更に言えば、宇宙規模で言えば「一秒」というのは、途方もない長時間ですよ?
つまり『アカシックレコード』が実在するためには――
宇宙そのものが、宇宙以上でなければならないという話です。
## おわりに
そういう訳で、今回は文学的放火魔としては、とても大人しい内容になりました。
ただ『アカシックレコード』は宇宙論的に実在するはずがない……それだけの内容ですからね(笑)
ああ、ついでに『プラトンのイデア論』も、拗らせた哲学者の妄想だと蹴散らしてしまいました(笑)
『アカシックレコード』が存在しないのですから、皆さんは現代セキュリティをそこそこ信じていいと思いますよ?
というか、SHA-256が破られたら、それこそ世界中大混乱です!
あなたのパスワードは抜かれて、あなたのクレカでキャッシングされて……。
しかもそれを管理する術がない、そういう世界の終末です。
繰り返しますが、全宇宙の原子の数と比較できる、SHA-256のことは『気にしない方がいい』となります。
※万一すらないでしょうが、セキュリティが破られたとしても、筆者は一切の責任を負わないとします。クレームは神か宇宙にお願いします。




