終局
『魔導石?そいつが魔王の本体なのか?』
『正確には魔王さまの力の根源です。
噂によると魔導石を得てから、しがない魔物だった魔王様は今の地位に就いたとか。』
『なんか他人のふんどしで相撲をとるみたいだな。』
『とにかく、魔導石を壊さないことにはどうにもなりません。
魔導石は魔王様が強力な力を得るために、同じ空間の魔王の間に置き、オークに守らせています。』
『ん?あいつ力はやばいけど頭悪くね?』
『知ってましたか。そうです。だから私の茨で魔王様と同時に叩けば……。』
『魔王の気も引けて、オークも対応出来ない。』
ナイトの茨は、オークごと魔導石を貫いていた。
「知っていましたか?魔王さま。
チェスのナイトの使い方はフォーク。
クイーンを狙いながらキングも取れるのですよ。」
「く、そ……。」
魔王はばったりと倒れた。俺も、もう限界……。
「タケシ!」
朦朧とする意識の中、ナイトの声だけが聞こえた。
「はっ!?」
「おっ、気がついた。」
目が覚めると、我はあの人間が持つ縄にぐるぐる巻きにされていた。
「な、何をする!離せ!」
「そりゃ無理だよ。
お前だいぶ酷いことしてたし。これからお前は王に突き出すから。」
「わ、我に手を出せば死霊どもが黙ってないぞ!」
「魔王さま、魔導石はすでに破壊しました。
あなたもお分かりでしょう?あなたの体から、魔導石の魔力が消えていることを。
囚われた人間もすでに解放しました。
今のあなたはただの魔物です。」
「ふはははは!笑わせるな!魔導石なぞなくても、手負いの人間振りほどくぐらい、造作もないわ!」
「……いや、お前俺の体よく見ろよ。」
「……ん!?」
な、な、なんか治ってるーー!!
「なんで無事なんだよ!!」
「裏に待機してもらってたスライムに治してもらった。」
「魔王さま、あなたのお体も回復しました。しかし、タケシは腕力だけはそこそこなので、逃げるのは難しいと思われます。」
くそっ、くそっ、これじゃ馬鹿にされてた昔に逆戻りじゃないか……!
「ふざけるな!我が何をしたというのだ!」
「はあ?悪いこといっぱいしただろ。」
「先に我に手を出したのは人間と魔物どもだ!
人間は我に石を投げた!
魔物は力の弱い我を相手にしなかった!
みんなみんな我を馬鹿にしおって!だから我の力で分からせてやったのだ!」
「……それはお前の力じゃない。魔導石の力だ。」
「黙れ!」
「魔王さま、あなたの過去は知っていた。しかし、あなたはやり過ぎた。
でも、加担した私も同罪です。
一緒に罪を償いましょう。私は魔王さまの忠実なナイトです。」
「……ふん、ナイトのくせに。」
長いこと忘れていた感情が、目から溢れて地面を濡らした。