VS魔王 負けられない戦い
ナイトが知ってた裏ルートから魔王城に潜入し、俺達は魔王の間にたどり着く。
ほかの四天王はまとめて有給を取ってて今はいないらしい。
魔王軍には福利厚生があるのか。
でもよく考えたらこいつ、見張りを1人押し付けられてるから、もしかしたらほかの四天王から舐められてるんじゃね?
「ふふふ、よく来たな、勇者よ。そして裏切り者のナイト。」
魔王の間にいたのは、ちっこい悪魔みたいなやつ。
バイ菌みたいな触覚生えてるし、フォーク持ってるし。
「これはフォークじゃない!立派な武器だ!」
「うわ、心の声読んだ?きめぇ。」
「タケシ、あなた声に出てましたよ。」
「マジかよ。にしても魔王チビじゃね?」
ビシッ。魔王の額に青筋が浮かぶ。
「言ってはいけません。
魔王さまはチビを気にしていているのです。
今まで口にした部下が何人やられたか。」
「全部聞こえてるんだよお前らー!!」
魔王が風をまとい出す。どうやら本気で怒ったみたいだ。
「我はナイトみたいに甘くないぞ!くらえ!」
俺達の体が動けなくなる。なるほど。これが魔王の力か。
「はっはっはっ!動けまい!降伏するなら今のうち……うぎゃっ!」
魔王の情けない声と一緒に体が自由になる。
「ふう、うまくいったようですね。」
「お前の茨がお前の意思じゃなくて、動くやつを補足する能力で助かったよ。」
「もう少しコントロールできるといいんですけどね。
見なさい、魔王はかすり傷ですよ。」
ナイトの言う通り、魔王は額から血を流して立ち上がった。
「もう怒ったぞー!!死ねー!!」
魔王が両手を広げるとゾンビみたいな生き物が地面から次々と出てきた。
「な、なんだよこいつら!」
「魔王さまが使役する死霊軍です。」
「ははは!こいつらは倒されても生き返るぞ!
ほら、死ね死ね!」
確かに一体一体は俺でも倒せるぐらい弱いが、死霊はすぐ立ち上がる。
これじゃきりがない。
「ははは、無駄だ無駄だ!
こいつらの本体は生きた人間だ!
地下牢獄に監禁している人間を殺さない限り死なんぞ!」
……な、に……?
じゃあ村から若いやつが攫われてたのは……あの子供のお父さんは……。
……決めた。あいつに1発入れるまで死なねえ。
「タケシ!無理はいけません!」
死霊どもをなるべく傷つけないように掻い潜る。
渾身の力を振り絞って、魔王に拳を振り下ろした。
「がっ!!」
俺は魔王のフォークに腹を貫かれた。
「ふはは!馬鹿め!チビだからと油断したか!
我は人間ごときにやられんぞ!」
「……いや、魔王。俺達の、勝ちだ。」
「ふはは、負け惜しみもほどほどにっ……!!」
俺はフォークに体を貫かれたまま、魔王の体をがっしり捕まえた。
「な、何をする!離せ!」
「……やれ、ナイト。」
「御意。」
ナイトの茨はフルの力で、死霊の軍団をなぞりながら俺たちの方へ向かってくる。
このまま俺ごと魔王を貫く。……かのように見えた。
「はあっ!!」
魔王はオーラを放ち、ナイトの茨を消し去る。
「ふはは!思い上がったかナイト!
お前の茨ごときで俺を倒せると思ったか!」
「はい。魔王さま。私たちの勝利です。」
「はあ?」
刹那、死霊の軍団は霧散した。