VS四天王 弱小勇者の本気
「って魔王城じゃねえか!」
目の前には真っ黒な城がどーんと立ちはだかっている。
なんでこいつが知ってるんだ?
いや、スライムだって魔物だから、もしかしたらこいつ魔王の手下だったのかもしれない。
「ふふふ、現れましたね、勇者。」
「だ、誰だ!?」
目の前に竜巻がでてきたと思ったら、吸血鬼みたいなマントを羽織った美丈夫が出てきた。
「ふふふ、私は魔王様親衛隊四天王のナイト。
私が現れたからには、魔王城に1歩も入れません。」
「魔王側なのに名前ナイトっておかしくねえ?」
「プル。」
「し、失礼な!ナイトはチェスにおける他の駒を飛びこせる唯一の役割なのですよ!」
「桂馬みたいなもんか?
俺使い方分かんなくてすぐ取られてたわ。」
「!!ふふふ、私を本気で怒らせたようですね。
くらえ!」
刹那、俺の体から血飛沫が上がった。
「……は?」
何が起きた?
「私の能力はローズハント。
私の意思で生やせる茨のつるから、あなたは逃げるすべはありません。」
なるほど、そういうことか。
しかもこいつ、ただのつるじゃねえ。
1本1本が鋼鉄みたいに固い。
……はは、今度こそ詰んだか?
「プルッ!」
「馬鹿っ!!逃げろ!!」
スライムは俺の声に驚いて隠れた。
それでいい。これで何かあってもこいつは平和に生きていけるだろう。
「プルー!!」
……は?
気がつくとスライムが体を茨に貫かれていた。
……嘘だろ?目の前が真っ赤になった。
「おや、手元が狂いましたね。今度こそ仕留めますよ。」
こいつだけは許さない。今そう決めた。
「お前、雑魚だろ。」
「……は?」
「口ばっかでプライドばっかり高くて、自分がこき使われてるのにも気づかねえで。
お前、昔の俺と一緒だよ。」
「な、何を戯言を!」
「でも、俺の友達に手を出したお前を、おれは倒さなきゃいけない。」
「ほざけ!ローズパニッシュ!」
叫んだと同時に木の棒を投げる。
狙い通り、茨のつるは俺じゃなくて木の棒を粉々に切り裂いた。
「なっ!?」
今だ。力を振り絞ってナイトに特攻し、渾身の力で腹に1発入れる。
「かはあっ!?」
ナイトは腹を押さえて倒れ込む。
「な、何故、私の弱点を……。」
「お前はさっき俺じゃなくてスライムを攻撃した。
裏切り者の制裁でもないだろ。
あいつ弱そうだし。
それで分かったんだ。
お前の茨の操作は不完全で、お前の意思より動くものに反応する。
まあ、予想だけで賭けだったけどな。」
「ふっ、あの一瞬でそこまで分かるとは。殺しなさい。」
「しねえよ。」
「は?何を綺麗事を。」
「スライムを殺したことは許せねえ。
けど、お前、根は悪いやつじゃなさそうだし。
俺と違って力があるんだから、魔王なんかに使われてねえで真っ当に生きろよ。」
「ん?いや、スライムは……。」
「言うな。
くそ、スライム……せめて名前ぐらいつけてやりたかった……。」
「いや、だからスライムは……。」
「「プルッ!」」
「……は?」