バービー激怒!?大切なのは好きなもの
もにもにもにもに。
「何これ、ナマコ?」
「邪神ア〇ターじゃね?」
「兵器〇リオンだろ。」
「あ、俺もその漫画好き。」
「私ク〇ロ派!」
「今はふざけてる場合じゃないでしょう!いくら魔王さまでも怒りますよ!?」
現れたのは黒くて丸い物体。一見すると黒いスライム。
スライム達はその後、何事も無かったように動きながら、プル?プル?と黒い物体を訝しんでいる。
「どうかしましたか!?」
「お医者様!実はスライムの体内からこの物体が……。」
「これは……私の手には負えません。至急生物研究室に回します。」
「スライム達も、今すぐ精密検査をお願いします!」
「か、かしこまりました!」
何も分からない……。今は何も……あの黒い生き物は一体……。スライム達は……。
『プルー!!』
スライムの悲鳴……!
しかし、目の前のスライムたちはいつもと変わらず、プル?プル?と私の顔を見上げている。
ああ、思い出す。忘れられない、忘れてはいけない過去を……。
「……。」
「なー、ナイトー。気持ちはわかるけど、今は怖い顔してもしょうがないだろ?」
「……あなたに私の何がわかるんですか?」
「はあ?」
「あの黒い物体が今すぐ暴れてこの国を滅ぼす可能性を考えましたか?
私たちが皆殺しにされるリスクは?
あれは魔導石の具現化です!すべての生物に害をなすものですよ!」
「お、落ち着けよ。あいつそんな風に見えなかったぞ?」
「それに魔導石自体に嫌な感じはない。手にすると力が湧くだけ。」
魔王さまの冷静な言葉も、今は耳に入らない。
「すべてがそれに限らないでしょう!あのスライム達も無事かどうか……。」
「何こいつ、めんどくせえ。」
「ナイトって病むとウザイよねー。」
何を言われても構わない。もう、あのようなことは……二度と起こってはいけないのだから。
「皆様、お集まりですか。」
先程の研究員が帰ってきた!
「はい!あの、先程の黒い物体は……。」
「それが、驚くべきことに、あの生き物の成分は魔導石そのものです。」
「……やはり。 」
やはりあれは魔導石だった。だったら私たちが撮る手段はひとつ。
「やべえじゃん。でも、悪いやつには見えなかったけどな。」
「うん。触ったら気持ちよさそー。」
「ならば今すぐ処分しなければ!あれは厄災そのものです!」
「おいおい、落ち着けよ。見た感じあいつ生き物だったぞ?
罪の無いやつを殺すのは嫌いだろ?」
「……!」
タケシの言葉に胸が詰まる。
「解析しましたが、あの黒い生き物の生態はスライムのそれです。
多少能力は変化しているようですが、害はあるとも言えるし、ないともいえる。
王は、あなた達にあの生物の処遇を一任するそうです。」
「……なん、ですって……?」
人間とは、どこまで残酷になれるのか……。
「要はちょっとつえースライムだろ?平気だって。」
「魔導石の力を持ったスライムですよ?このままにしておいたら、世界にどんな影響が出るか……。」
「ふーん、で?倒すの?」
「……は?」
バービーが冷たく言い放つ。
「あんたが出来ないなら、あたしがやるよ?
スライムぐらいなら倒せるし。」
「だ、だめです!」
「聞こえなーい。」
「いくらバービーでも、たとえタケシでもそれは許さない!危ないなら私が預かります!」
「はあ……。」
バービーは心底嫌そうに頭を搔く。
「あんたさあ、いい加減ウザいよ。ずっと私が一番辛いですーみたいな顔してさー。
こいつを殺すか殺さないかはっきりしないし。ひとりで悩んで楽しい?」
「……なんですって?」
聞き捨てならず、ゆらりと立ち上がってバービーと向き合う。
「お、おい。今は仲間割れしてる場合じゃ……。」
「「タケシは黙ってて(ください)!!」」
「はい……。」
私とバービーの怒声で、タケシはすっかり小さくなった。
「あたしは好きな物は好き!嫌いなものは嫌い!人間とか魔物とか魔導石とかどうでもいい!
私はこの黒いスライムちゃんが好き!可愛いから!それじゃダメなの?」
「好き嫌いだけで世界秩序は成り立たないんです!」
「ふーん。じゃあその世界秩序はあんたを守ってくれたの?」
「……!」
バービーの言葉に何も言えなくなる。
「私は魔物の元カレに捨てられた。人間のモブは私にたくさん貢いでくれた。だから嫌いな魔物もいれば好きな人間もいる。
それでいいじゃない。弱小の魔物が世界とか語ってんじゃないわよ。世界の前に自分を守りなさいよ。」
「バービー……。」
彼女のことは仲間として、お客様として見てきた。自分が良ければそれでいい、自分勝手な魔物だと思っていた。
でも、間違っていた。彼女はいつも自分の頭で考えていた。王女を奪還した時だって、彼女の機転があったから上手くいったんじゃないか。
付き合いが浅いから、なんて言い訳にならない。私は、彼女の性格を見くびっていた。
「私はもう、仲間が目の前で死ぬのを見たくない……。世界より、仲間が大事です……。」
冷たく睨みつけるバービーに訴える。
「……ったく、じゃあ最初からそういいなさいよ。」
「……え?」
バービーは途端に敵意を解き、いつもの気の抜けた雰囲気に戻る。
「そうだよ。確かに魔導石はやべーけどさ、要は使うやつ次第だろ。
俺たちが連れていけば、危険は少なそうだし。まあ、俺はともかくバービーもいるしな。」
「自分の身は自分で守りなさい。」
「はあ!?お前の方が強いだろ!!守れよ!!」
「あんた、魔王に勝ったんでしょ?」
「ナイトと束になってやっとだぞ!なめんな、俺の弱さを!」
「知らなーい。」
「……全く、あなたは、あなた達って人は……」
緊張感のない仲間を見ていると、肩の力が抜ける。床に転々と雫が落ちる。




