いっちょかましてやりますか
「おお、勇者さまじゃ。」
「本当に現れたのじゃ。ありがたやありがたや。」
「勇者さまー!頑張ってー!」
は?何この光景。
見に来てるのはじじばばと子供ばっかりじゃねえか!
美女は!?エルフは!?
「最近若いもんは皆魔王の手下にさらわれたからのう。」
「大丈夫さ。勇者さまがきっと取り戻してくれる。」
くそ!そういうことかよ!騙しやがったなあのジジイ!どうしよう、一気にやる気が無くなった。
そんな時だった。
「あっ、いたっ!」
人混みに押されて俺の前に子供が押し出された。
「おい、大丈夫か?」
「あ、えへへ。勇者さま。勇者さまだ!」
「いや、それよりもお前怪我……。」
「えへへ、大丈夫だよ。勇者さまは優しいんだね。」
いや、大丈夫じゃねえだろう。
身なりはボロボロだしガリガリだし。
若いやつは攫われてるって言うから、もしかしたらこいつの父親は……。
「お前、腹減ってねえか?」
「全然大丈夫だよ!」
言った途端この子の腹の虫が鳴る。
「……ほら、これで飯を買うといい。」
「え、ひゃ、100Gの商品券!?こんなにもらえないよ!」
「いや、いいよ。よく考えたらどこで使えるかわかんねえし。でも、お前の飯ぐらいは買えるだろ。」
「ありがとう……ありがとう……。」
目の前の子は、ぽろぽろと涙をこぼし始めた。
「うち、お父さんが攫われちゃって……お母さんも病気で僕が頑張って薬代稼いでるけど、毎日辛くて。」
「……うん。うん。そうだよな。おじさんが魔王を倒してくるから、もうちょっと待っててな。」
「……うん!」
あーあ、吹いちまった。しかも金もなくなったし。
まあ、俺は今勇者だしなんとかなるだろ。もしかしたらチート能力とかあるかもしれないし。皆、どんなチートスキルがいい?俺は全能力999。