王女様を救え。スリーマンセル始動
「おえええ……!」
ああ、お嬢様は今日も大量の食事を吐いては戻している。
「お嬢様、お辞めください!お身体に触ります!」
「うるさい!私にはもう何も無いの!食べ物にぐらい依存させてよ!」
「しかし、お腹の赤ちゃんが……。」
「どうせ赤ちゃんは知らない男を父親にされるの!政治の道具としてお父様に使われるの!
私たちはもう終わりよ!」
わあああ、と泣きじゃくるお嬢様。
ああ、なんとお労しい。元を正せばあのクソだぬきのせいじゃ。地位と金が目当てで故王女様に近づいたのは分かっておった。それをあのクソだぬき、口八丁に王女さまをたぶらかしおって!
今夜もまた、たぬきが送り出したお見合い相手がくるはず。お嬢様を汚い男に渡すものか!わしが守る!
「姫様。」
ドアの外からノックと見張りの声がして、モップを構える。
「姫様、勇者さまがお越しになりました。」
ドアから顔を見せたのは、なんとも弱そうな貧弱男。
「どーもー……。」
ドカドカ!間髪入れずにモップで殴る。
「うわっ!?」
「近寄るな、けだもの!!お嬢様に触れるでない!!」
不意をついた隙に畳み掛ける。
「俺を殴りたきゃ好きなだけ殴ればいい!それであんたたちが俺を信じてくれるなら!」
「信じるか!たぬきじじいが寄越した悪魔め!」
ガッ
「あっ……。」
貧弱男の額にモップの角が当たる。額から血が出る。仕返しされるか……?しかし、この老いぼれの命に替えてもお嬢様だけは……!
「落ち着いた?」
「……は?」
「大丈夫。俺は怒ってない。ただ、もし良かったら手当してくれないかな?
血が止まらないと怪しまれるし。」
「何を言っておる?あのたぬきの差し金ではないのか?」
「まあ、否定しないけど、少なくとも俺も俺と仲間は姫様の味方。あんたたちをここから逃がしてやりたい。」
「し、信じるか……!」
「信じて欲しい。そのためならいくら殴ってもいい。何を投げつけてもいい。俺は絶対に手を出さない。」
な、なんじゃ、こいつ……。この優しさと温もりは……。まるで故王女様のようじゃ……。
男の額から血が流れ、目に入る。
「!す、すぐ治療いたしますじゃ!」
「!ありがとうございます!」
男は礼儀正しく深々とお辞儀した。
「まさかあなたが噂の勇者様じゃったとは……!この年寄り、腹を切って詫びたいところですが、私にはお嬢様が……。」
「いやいや!そんなことしなくていいから!それより、状況を教えてくれます?」
俺はばあやさんに大体の事情を聞いた。
「じゃあ俺の認識は大体あってるんですね?」
「はい……。
お嬢様は妊娠されてからというもの、この部屋に軟禁され、来る日も来る日もお見合いをさせられて……。
あのたぬきじじいはお嬢様のことを何も考えてない!
お嬢様の症状は悪化するばかり……。私はお嬢様が不憫で不憫で……」
おいおい泣くばあやさん。これはなんとか力にならなきゃダメだろ。
「大丈夫。姫様は俺たちが助けるから。」
「勇者さま、この年寄りの最後の願いを聞いてくだされ!
どうか、どうかお嬢様をお救い下さい!」
「それはできない。」
「!!そ、んな……。」
泣きじゃくったばあやさんの前でしゃがんで、目線を合わせる。
「最後の願いなんて聞けない。あなたも姫様と逃げるんだ。
姫様が元気になるには間違いなくあなたの助けが必要だよ。だからばあやさん、力を貸して。」
「おお!なんと慈悲深い!あなたはこの世界の救世主です!」
なんか大袈裟な気がするが、この人の立場を考えるとそうなるか。さて、バービーは首尾よくやってくれてるかな?




