夜が明ければ朝が来る
あっという間の10日間だった。
師匠との訓練も成果は出ず、幾度か棒をかすらせただけで試験日を迎えてしまった今日この頃、いかがお過ごしでしょうか?「成長で来てるのかな~」と、誰が聞くでもない独り言をつぶやいた。
門前に掲げられている松明の明かりが最後から2番目の位置に来ている、最後の松明が消える頃に夜明けとなる。
「最後のチェックをして寝るか・・・。」
大きめの背負い袋の中身を確認していく。
「まずは、携帯食(予備)、火打石、縄(火口にも荷造りにも最適!)、外套、大きめの布・・・。」
剣や食料は軍が用意してくれるらしいので、荷物は軽くなりそうだな。師匠の話だと、3日間のキャンプで自然になれるらしい。その間の食料は獣類を討伐するらしいが、森での活動を生業としているレンジャーも参加するそうなので心配しなくてもいいそうだ。
正直、緩い。師匠との訓練とは比べ物にならないくらい緩い!師匠から話を聞いた時には「そんなんでなんの意味があるんですか?」と聞いてしまったくらいだ。
師匠曰く
「軍も人が足りないんだ。落第者なんて出すかよ。」
だそうだ。
最後に水袋を投げ入れて、準備終了だ。
周りの情報弱者の同年代はそわそわして寝付けそうもない様だが、俺は優しいので、情報は伝えず、期待に胸を膨らまさせてあげようと思う。俺っていいやつ。
俺は毛布にくるまると、周りのざわめきを他所に俺は眠りについた。
日の出とともに鐘が一つなる。
日が出ている間は鐘の音が時刻を伝えてくれる。(夜はうるさいから松明にしているようだね。)
集合まではまだ余裕があるので、ちょっと体を動かしておこうか・・・。
「アル、バ~ト。昨夜は眠れたのか?」
「まぁ、周りは少しうるさかったがな。そういうお前は・・・大丈夫か?」
声を掛けてきたのはサンタスであったが、顔がむくんでちょっと怖い。
「あったりまえだろ~?俺様は怖くなんてないから、いつも通りさ!」
「いや、誰も怖いなんて言ってないだろ。顔が丸いぞ。俺と一緒に少し走るか?」
「えっ、あっ、そうだな~。行ってやってもいいぞ?仕方ないな~、ほら、行くぞ!」
いつもより変だ。何か企んでいるのか?と、少し警戒しながらも宿舎横の広場から城壁内の林道を走ることにした。
しばらく走るとサンタスの異常さが増してきた。やたらと話しかけてくるのだ。
「なぁアル、今日の体調はどうだ?」
「別にかわ
「そういえば今日の集合は鐘2つ目だよな。」
「そうだけど、集ご
「とっ、所で、今日からどんな事をするのかな?知ってるか?」
「最後まで話させろ!!」
結局のところ、今日の試験内容にビビっているようだ。
「今日から3日間、城壁外でキャンプをするらしい。ま、キャンプのプロみたいな人も来るから、焦ることも無いと思うぞ。あと、行軍もあるらしいから、荷物は少なめの方が良いらしいな。それと・・。」
「そっ、そうだよな~、あぁ、いけない。荷物のチェックしてなかった。アル!先に帰るな!」
まだ林道に入ったばかりでサンタスは宿舎に戻っていった。
あいつのことだ、大量の荷物を用意したんだろうな。主に食料。
まぁ、うるさいのがいなくなったから、ゆっくりと走ろう・・・。
「あら、ごきげんよう!」
どうやら、まだ一人にはさせてくれないらしい。