来訪者
「ん?おい兄ぃ!こんな所に獣人たちが巣くってますぜ?」
「はぁ?あほぬかせ!こんな草原に獣人なんかが居るかい!!獣人はな、もっと人目の付かない森の・・・奥・・ほんまや!!」
「こいつらを売り払ってしまえば、金の100や200、簡単に稼げまっせ?げへへ。」
「あほう!なに言うてんのや!こいつらを俺たちの奴隷にして、一生こき使えば、儂ら遊んで暮らせるわ!!」
「流石兄い!」
街道沿いの木陰に隠れている男2人が、なにやら勝手な事を計画している。
まぁ、ここの獣人たちは、魔獣にも立ち向かう事が出来る強者が揃っており、日頃の防衛訓練もしっかりと行われているから、20人や30人、並みの兵士クラスが来たとしても何の損害も出る事はないだろう。
ただし、魔術師がその中に含まれていた場合は別なのだが・・・。
「アンクリウスさん、聞こえましたか?」
「はい、アルバートさん!今回はパターンMでやってみましょう。危なくなったらAに切り替えます。」
「そうですね。そうしましょう。」
遠征に来る冒険者や、住処を追われたごろつき共が、時々この村を襲撃してくるのだが、その全てが防衛訓練として片づけられるほどの力をつけているのだった。
過去、獣人たちが奴隷として服従させられていたのは、魔術による拘束があったためで、魔道具を併用して力を押さえられていたためであった。
「では、アンクリウスさん。お願いします。」
「はい!」
アンクリウスさんは、筒状の植物の管を使い、各部屋に指令を出す。
これは、ガンドラ王国で、ガンドラ王の部屋の伝声管を模した物で、俺の提案で付けられたものだ。
「緊急指令!緊急指令!パターンMを実行!!シホ!子供たちを地下室に!ナンディンさん!カンディンさん!入り口付近の小屋へ移動しておいてください!ミミはクローを装着して屋根の上で待機!インクリウス姉さんは、街道から見える中央広場で待機!」
「「「了解」」にゃ!」
それぞれから応答があり、音もなく行動に移される。
「おい!そこの犬っころ!お前だお前!!」
「え?あぁ、何か御用です?」
「お前を、良い所に連れて行ってやるよ。こっちに来な!」
「なんでです?特に行きたい所とかは無いのですが・・・。」
「良いから!来いって言ってんだ!お仲間も一緒につ入れて行ってやるから!!」
2人の男は、ショートソードとシミター、革製のガードを付けている程度の簡単な装備している。見た感じでは、はぐれ野盗か駆け出し冒険者か・・・・。おっさん臭い顔つきだから、恐らく前者だろう。
2人の男はズカズカと村に入ってくると、インクリウスさん目掛けて歩いてきた。
「さっきまでここにいた子犬と子猫が居ねぇな。どこ行った?」
「さぁ?見間違いじゃないですか?それか・・・・あ!もしかして!」
「?もしかして?」
「見間違いじゃなくてキチガイさんですか?あぁ怖い!!」
「てめぇ!人が仕立てに出ていればいい気になりやがって!!」
男の1人がインクリウスさんに掴みかかろうとした。
「嫌ですワン?」
華麗なステップで身をかわすと、近くに置いてあった泥水を2人に浴びせかける。
「うわ!何しやがる!!!」「この!雌犬が!!」
2人がインクリウスさんに飛び掛かろうとした直後、屋根の上からミミが攻撃を仕掛ける。
くるくるっと回転しながら飛び降り、振り向きざまに2人の男の背中に、3本の爪痕を残す。
「くっっってぇ!!!何だ!・・・この!!・・・・猫人族か・・・。これは良い・・・。」
「兄ぃ、ついてやすね!」
「くっくっく・・・。猫人のメスは、高く売れる・・・。覚悟しやがれ!!!!」
2人の男が飛び掛かると、ミミはバックステップでそれを躱す・・。と、そこに、左右から、巨大な斧が振り下ろされた。
「な!なん・・・なんでこんな所に・・・ミ・・ミノタウロス・・・!ヤバい!逃げろ!!!」
ナンディンさんとカンディンさんを、ミノタウロスだと勘違いして、街道奥の森の中へ姿を消してしまった。
ミノタウロスは、迷宮でも中層以降に出没する敵で、にわか冒険者やはぐれ山賊等が太刀打ちできるものではなかった。
「モゥ、あっけないですな・・・。」
「腰抜け山賊にゃ!」
「あいつら、そのまま逃がしても大丈夫なんですかね?」
俺の心配を意に介さないかのように、インクリウスさんが答えてくれた。
「森の守りは、サジタリウスに任せましょう。」
・・・ん?サジタリウスって、だれだ?




