暖かな視線
結局、あれから丸2日間、俺は放置された。
足を揺らさない様に用を足したり、食事をしたりと、散々な2日間を過ごしていた。
「おいててて・・・。」
ナンディンさんが肩を貸してくれたり、お姫様抱っこしてくれたりと、身の回りの世話をやいてくれた。
「すみません、ナンディンさん。風呂なんて、入らなくても大丈夫なんですがね・・・。」
「いやいや、シホさんが言ってましたよ?けが人は綺麗にしておかないとってね。」
「ま、風呂って言っても、体を拭くだけですが・・・。気分転換には良いですよね。」
ため池の横に建てられた小屋の中で、湯が沸かされている。
湯に浸かるというより、湯を使って体を洗うだけの施設となっている。
ドアを開けると、もわっと水蒸気が溢れてきた。
「ふぅぅ。熱いですね。乾季の厚さにモ増してこの熱気はすごいですね。」
「あまり熱すぎても、血の巡りがよくなりすぎて良くないって言ってましたけどね・・・。あっ、ありがとうございました。あとは出来ますので。」
「はい、終わったらまた呼んでくださいね~。」
ナンディンさんがドアを閉めると、更に熱さが増してきた。
「ん~。熱いな・・・。さて・・・。」
俺は、足を気遣いながら、湧き出てくる汗を拭いていく。
「こんにちは~!アルバートさんが怪我したんですって?」
「あぁ!マリーにゃ!!・・・そうにゃ。足ぱんぱんにゃ!」
「足?パンパンって・・・折れたんですか?」
「そうなのよ。私の魔術じゃ・・・ちょっと厳しくてね・・・。」
「そうですね。骨は・・・魔術では難しいですね。・・・で?アルバートさんは?」
「あそこの小屋に居るにゃ。」
マリーは辺りを見回すと、ミミの示す小屋を見る。
「なんか、煙が出てません?」
「ん?お湯を沸かしてるにゃ!」
「お湯?骨折しているのに?ダメですよ!!!」
「あ、ちょと!ま・・・。あらぁ。」
マリーは急いで小屋に向かって走っていくと、その勢いのまま扉を開けた。
「!!え?」「・・・え?」
太もも以外に布を巻いていない俺を見つめるマリーさん・・・。
ちょっと、視線を外してもらっていいですかね?
「マリーさん!ちょっと、今、体を拭いているんデ!」
「そ、そうなんですね!じゃ・・・あれですわね。ちょうどいいので、施術してしまいますか?」
「いま?」
「いま?」
目をぐるぐるさせたマリーさんが、そのまま中に入ってきて、後ろ手に扉を閉めた。
「ちょ!今はまずいですって!服着てないんで!!」
「そうですわね。魔法を使うには丁度いいですわ?熱さで血の巡りがよくなりすぎたら危険ですからね?さ、さぁ、あしをみせてくららい。」
マリーさんが、右足側に回り込んできたので、手桶で下腹部をガードする。
と、マリーさんの顔が真剣な物に変わった。
「アルバートさん!こんな状態で放っておいたんですか?もう、足が紫色じゃないですか!!」
「・・・リアさんが無理だって・・・。ほっとかれたんですよ・・・。」
「もう!こんな状態で放っておいたら、数日で足が腐ってしまいますわ?早く治癒しないと・・・。」
マリーさんは足の布を剥がすと、手をかざして呪文を唱える。
「偉大なる神の御手により、この者に癒しの奇跡を…ヒール…」
眩い光と共に、足の腫れが引いていく・・・。
太ももの部分に刺さった針を抜いて行くような、確実に痛みが抜けていった。
「これが・・・神の奇跡・・・。」
「・・・ふぅ・・。そうですわ?魔術では治せない怪我でも、神の奇跡であればこのように治せるのです!デック大神官であれば、死者も蘇生する魔法を使えますのよ?」
「すごい・・・。」
気が付くと、足の太さは元の通りに戻っており、痛みも全く感じられない。
今まで、神様って信じていなかったけど・・・。これは・・・。
「では、金25ですわ?」
「・・・25・・・。」
「はい!」
やはり金か・・・。この守銭奴!・・という気持ちも普段よりは小さなものになっている。
「分かった・・。25ね。」
「25ですわ!」
さて、足が治ったのであれば・・・。
俺は、久しぶりに地面を踏みしめて立ってみた・・・。
「うん。痛くない・・。」
「もちろんですわ!神の・・・きゃぁ!!アルバートさん!!前!前!!!」
「はい?・・・・うを!!!」
足の痛みが引いた事に気を取られすぎて、手桶の事を忘れていた・・・。
俺は慌てて両手で下腹部を押さえて足を交差させる。
「ちょ!マリーさん!!きゃぁとか言いながら、ガン見しないでくださいよ!!」
「え?ええ?み、見てませんわ?」
マリーさんは顔をそむけたが・・・目線は変わっていませんよ?




