今回の作戦会議
「よし、みんな聞いてくれ。今回の我々の動きを説明する。」
ロア師匠がテーブルの最奥に座って説明を始める。
「まず、私たち姉妹は2人で行動、クロウ・イロン王国と、ガンドラ王国の国境へ向かって見る。お前達元勇者パーティー・・・いや、シャイニングフォースもそのままパーティーとして行動・・・。」
ロア師匠の簡潔で曖昧な作戦会議はすぐに終了となった。
「ん?なんだ?まだこんなとこに居るのか?迷子か?アンデルセン?」
「何言ってんですか?アルバートですよ。20日ほどもさまよってたら死んでますよ。テリーさん。」
「んじゃ、あれか?こないだと同じ木の実でも取りに来たってか?そんなに良いもんかね~?」
「ほら、俺たちの国でも、この時期は寒くて、こんな所まで来るやつなんで居ないんですよ。」
「はは、ちがいねぇ。」
俺は今、テリーさんの山小屋に来ている。
ここはガンドラ王国なのだが、すぐ目の前の山を登ればクロウ・イロン王国だ。
しかし、こんな山奥の国境付近には警備兵が巡回しているわけでもなく、戦闘が発生したような気配はない。メグ姉妹もあっさりと密入国に成功したようだ。
「あ、そうだ、来る途中でオークを狩ったんですが、一緒にいかがですか?」
「お!ありがてぇな。さっそく焼いて食おうぜ!」
テリーさんは薪をくべると、肉を切り分け始めた。
厳密に言えば、師匠が狩ったオークの肉を貰ったのだが・・・そこまで深く伝える必要もないだろう。
「そう言えば、クロウ・イロン王国の鎖国の話は聞きましたか?」
「なんだそれ?俺たちは何も聞いていないが?」
「なんか、俺の知り合いがクロウ・イロン王国の正門で、鎖国の為に追い返されたらしいんですよ。」
「ほえ~。鎖国して、何か良いことが有るのかね?」
「それなんですよね~。・・・あ、そこ焼けてますね。」
そうか、山に稼ぎに来ているテリーさんは知らないか・・・。
「テリーさんは、ずっとここに居るんですか?」
「バカ言え。5日働いて3日休むんだよ。ちょうど明日、帰る予定だ。肉も多少は取れたからな。」
テリーさんの後ろには、クマやイノシシと言った野獣や、オークの部位が転がっている。
「これをどうやって・・・運べるんですか?」
「これだよ。このソリに乗せて運べばいい。雪も使いようってな。」
テリーさんが椅子として使っていた木の台だと思っていた物は、移動用のソリだったらしい。
同じようなものが5つも小屋に置いてあるため、これに乗せて引っ張っていくのだろう。
「そうだ!俺も手伝いますよ!」
「良いのか?氷結樹の実を取りに来たんだろ?」
「それが、山頂まで登るのが面倒で・・・。」
「・・・妥当だな。この時期、山頂付近は大荒れだ。登ったらただじゃすまないぞ?」
「えぇ、だから、ちょっとだけ観光でもしようかなって。」
「そりゃ、こっちとしては有難いが・・・悪いな。」
テリーさんは、ニカッと笑って、着いたら酒でも飲ませてやるよといってオーク肉を頬張った。




