気力回復
「ぶぇ~・・・。温まる・・・。」
雪山で凍えた体に温泉のお湯が染み込んでくる・・・。
チクチクと多くの針が全身を刺している様な、それでいて心地よい感覚だ。
「わぁ~。雪景色を見ながらのお風呂って最高ですね~。」
「あら、リンクルちゃん、肌がきれいなのね~。」
「えぇ~。ハンナ様も綺麗ですよ?以前冒険者をしていたなんて信じられません。」
「そうなんですよね~、師匠は傷なしのハンナと呼ばれていたんですよね~。」
「あら、そうなの?色々な名前で呼ばれてたから、あまり覚えてはいないわ。」
「へぇ~。どんな呼ばれ方してたんですか?」
「師匠はね、魔道王とか、狙撃手とか、大災害とか、タイフーンなんてのもありましたよね?」
「リア?それって悪口のやつばかりじゃないの!!」
「や!ご!ゴメンナサイ!師匠!ああぁん!」
「ふふふ、許さないわよ~!」
「えぇ?ハンナ様?そんな所触って・・ええ?リアさん?」
「ふえぇぇぇ~!い、い、いいぃぃぃ!!!」
「ほらほら、おしおきよ~!」
「ああぁぁぁぁぁ!!!!」
今回も女湯が騒がしい・・・。
俺が精神統一を行い湯から上がると、部屋には料理が運ばれていた。
ハンナ王妃とメグ・リアさん、リンクルが既に食事を始めている。
「リン、どうした?湯あたりか?・・・顔が赤いぞ?」
「え?・・いや、そうじゃなくて・・・。なんか、すごかったから・・。」
「そうよね。いいお湯だったわ~。ねぇリア?」
「はい・・・師匠・・・。」
リアさんも顔が赤い・・・。
全く、公共の場で、はしゃがないで欲しいものだ。
「ほら、アルバート君もお食べなさい?」
「はい、いただきます。」
山間の温泉宿ではあるが、暖かな水が流れる川には様々な生命が息づいている。
用意された料理には、川魚や山菜が盛りつけられており、宮廷料理とは違う豪華さがあった。
「!旨いですね!川の魚は臭くて苦手だったんですが・・・。」
「調理方法によって臭さが抜けるらしいのよ・・。ほら、沢山お食べなさいな。」
山菜がカリカリの何かに包まれている食べ物・・・。これも美味い!
前回の時は出てこなかったのに・・・。これもハンナ王妃のお陰だろう。
「美味いなぁ、リンも食えよ!」
「う、うん、そうだね・・。美味しいよね・・・。」
リンクルの視線が泳いでいる・・・。
風呂場での出来事・・・見えてはいないが・・・まだ引きずっているのだろう。
仕方がない、話題を提供してあげるか・・・。
「所でハンナ王妃、ここには転移魔術で来たのですか?」
「そうよ。リンクルちゃんが空間を開いて、私とリアで空間を固定するの。リンクルちゃんが行ったことが有る場所だったら、一応行けるみたいね・・・。今の段階で、一個中隊を送り込むくらいは出来そうね。」
「それって、すごく、すごいですね。戦争にならないですよ。」
「そうね。城内に入った事がある国ならね。」
「あ、ハンナ様?見える所でも移動は出来ますよ?」
「そうね。でも、そうなると、リンクルちゃんが最前線に行くことになるから、それはしたくないわね。」
「そ、師匠の言う通り、でも、そのうちもっと違う使い方も出来るようになってくるわ。一緒に研究しましょ?」
「はい!お願いします!」
「ふふ、こちらこそ!」
さ、空気も良くなったので食事を楽しもうか。




