ミリアム、師匠を得る
「なるほど・・・。」
デュアル様がミリアムの剣を手に取り考え込む。
「森の民の所に居たのなら、精霊魔法の修行でもしてくれば良いものを・・・。」
「いやぁ、フレイムリザードと戦って、死にかけてたんですよ。こいつ。」
「ちょっと!その言い方は少し語弊があるわ!フレイムリザードの毒針に刺されたって言わないと、あたしが力不足だったみたいじゃない!」
まぁ、実際、力不足であったがために毒針に刺されたんだが・・・。
「で、ミリアムの復活と同時に帰って来たって訳です。デュアル様への伝言もありましたからね。」
「そうか・・・。で、修行をすると?」
「はい、私は師匠も居ませんので・・・独学でもなんとかして見せますよ!」
何故か自信満々なミリアムが拳を握りしめて宣言する。
「それはちょっと難しいわね。」
「え?」
不意にハンナ王妃が話に入ってきた。
「あなた、知り合いに魔術や神聖魔法や精霊魔法を使える人は居るのかしら?」
「アルバートが精霊魔法を使えますが。」
「・・・アルバート君は、まだマスターには成れていないわ。人に教える域では無いの。うちのデュアルだって、精霊術に長けたガーラが居るからこそアルバート君の成長の手助けを行えたのよ?」
「そうですね。確かにあの頃はガーラさんがメインで教えてくれていましたね。」
「なら・・・森の民の方々に・・・。」
「それも良いかもしれないわね・・・。ねぇ、あなた。うちの生徒になりなさいな。」
ハンナ王妃の提案にミリアムは驚いている。
「わ、私は剣士であって、魔術師ではありません。なので、誘っていただいたことはうれしいのですが・・・。」
「生徒と言っても体験入学みたいなものね。あなたは精神力の使い方が全くなっていないから、まずはそこを学んでおかないとね?」
「でも、以前の剣は自在に操れたのです!」
こいつは・・・まだ過去の成功事例に固執している。もっとフレキシブルに思考を展開させなくては、成長は出来ないぞ?
「あー、ミリアム君。君が今まで使っていた剣は、魔法剣と言うより、炎が出る剣だったんだ。」
「?何が違うんですか?」
「あの剣には、炎石が組み込まれていて・・・いわゆる魔道具だったんだよ。」
「魔道具?」
魔道具とは、一般人でもある程度の魔術の様な現象を起こせる道具の事だ。旅芸人の一座が持っていた剣なのだから、一般人が扱えないと意味をなさなかったんだろう。
「行ってしまえば、だれでも扱えるって事だ。」
「!そ、そうかも・・・。そうなんですね・・・。」
「だが、今回の武器は違う。本物の魔法剣だ。魔力操作がある程度できないと使いこなすことはできない。」
「・・・アルバートでも出来たのに・・。」
「彼は精霊から好かれているからな。精霊術の習得もすこぶる早かった。魔力操作と言うよりは、精霊との親和性が強く影響したのだろう。」
俺に出来て自分にできない事が悔しいのか、こっちを睨みつけてくる・・・。おい、やめろ。
「だから、私の学院で学んでみなさい?きっとすぐに魔力操作が出来るようになるわ?」
「・・・ありがとう、ありがとうございます!・・・よろしくお願いいたします!!」
ハンナ王妃が優しく微笑んでいる・・・が、ちょっぴり怖い笑顔だな。




