精霊講座
見えにくい精霊・・・。
そう言えば、デュアル様は生命の精霊を見る事が出来ないらしい。お陰で、精霊魔法唯一の精霊の癒しが使えないとの事だった。
「まず、人間が見えにくい精霊は、金属の精霊ね。」
「金属?土の精霊とは違うんですか?」
「・・・当たり前でしょ?犬と猫、違うんですか?って言ってるような物よ?」
「なるほど・・・。」
「金属の精霊は、どうしても自然ならざる物として見てしまうんでしょうね。作られる物に精霊は無いって。・・・家の精霊も居るってのに。」
「あ、家の精霊は聞いた事があります。たしかブラウニーでしょ?」
「そうよ、会えたなら、仲良くしておくと良いわ。・・・で、会わない方が良いのが狂気の精霊。」
「シェイドとは違うんですよね?」
「そうね、でも、近しい存在よ?狂気の精霊フューリーは、怒りの精霊とも呼ばれているわ。この精霊に取り付かれたら、自我が無くなり、魔王コース確定ね。もちろん解除もできないわ。」
俺も過去、シェイドと共鳴して魔王になりかけたことが有るが、デュアル様やロア師匠のお陰で元に戻ることが出来ている。それが解除できないとなると、討伐されるのを待つしかないのだろう。
「そして、生命の精霊。これは殆どの人間が見る事は出来ないわ。理由は、生に執着しすぎているっていうのが定説ね。」
俺とメイルーンの話についてこれていないミリアムが、面白くなさそうに口を挟んできた。
「でも、アルバートは結構見えるんでしょ?家の外から内部の精霊が見えるって言ってたじゃない。」
「それは、普通の事だ。今の話で行くと、まだ半分くらいしか見えていないんじゃないかな?」
「半分も見えてれば、人間としては上等よ。・・・あなたの素質でいくと・・・見えだしているのは、狂気の精霊フューリーね。シェイドと相性がいいのであれば、遠からず見えると思うわ。」
「え、それって、見えても平気なの?」
「・・・あなたね、今あなた、息をしているわよね?精霊が見えたら息が出来なくなる?精霊術は、そこに精霊がいる事を認識して、意思の疎通が出来て、お互いの希望に応えるって事なの。分かる?」
メイルーンの精霊術講習が始まったので、俺も一緒に聞いてみる。知っている事も多いが、より理解を深める事が出来そうだ。
「・・・だから【精霊術】や【精霊魔法】って言うのよ?分かった?」
「はい、先生・・。」
「ほら、着いたわ。」
「へ?何がですか?」
「・・・あなた、何しにこの森に来たの?」
「・・・なんだっけ?」
「ミリアム?お前は剣を直しに来たんだろ?メイルーンの講義で頭がパンクしたか?」
「ち、がうわよ!ちょっとこんがらがっただけでしょ?・・・で、まだ森の中じゃない・・・。どこに森の民の集落があるってのよ?」
あぁ、そうか、ここから落ちるんだった。
森の民の集落は、死の森の地下に作られている。と言うより、集落を覆う形で死の森が形成されているのだ。
「ミリアムさん?そのまま3歩、前に出て見て?」
「?1、2、さ・・・!あぶな!何この落とし穴ぁぁあああああああ!!!」
ミリアムは俺たちが回避できなかった落とし穴を回避しつつ、バランスを崩して頭から穴に落ちていった。
「あなたの連れ、器用なことするわね・・・。」




