王様との謁見準備
「くぁぁぁあああああ!」
ロア師匠は大きな伸びをした後に、ゆっくりと立ち上がり胸元を見つめている。
「ほら、アルバート。ビキニアーマーを着たまま寝てしまうと、胸元に赤い線が出来るんだ。ほら、脇の下から、ず~っと。胸の肉がビキニアーマーの淵に当たって、こう、こうなって、こんな風に跡が出来るって訳だ。」
「師匠。弟子だからと言って、目の前で胸の解説を始めないでくださいよ。」
「何を言っている。お前が以前、寝るときに全裸になるのはなぜか?って言ってたじゃないか。その理由を説明してやってるんだ。」
「しかし、俺も男ですよ?」
「なんだ、恥ずかしいのか?」
「・・・それもありますが・・・。服を着てください。」
今からデュアル様に謁見するわけだが、ロア師匠は胸に付いた赤い線がどうしても気になる様だ。
「ほら、ロアさん、この服を着ていったらどぉ?これなら胸は隠れるし、薄手だから熱くはないわよ?」
「・・・こんな、ヒラヒラ・・・恥ずかしいじゃないか・・・。」
「ビキニアーマーの方が、圧倒的に肌を露出しているわよ!」
「そうじゃなくてだな・・・。」
恥ずかしそうにしながらも、白いワンピースに着替える師匠。いつもビキニアーマーなので、普通の服は何処か新鮮だ。
「クローディアさん、中にもう一枚薄手の服を着た方が・・・。」
「あ、あらあら。そうね、確かに、これ一枚ってのは無いわね。色々凹凸が見えちゃって逆に恥ずかしいわ。」
そう言うとクローディアさんは薄手の肌着を渡してきた。
ロア師匠は抵抗なく着替えを再開する。
「だから!ここで着替えないでくださいよ!良い年の女性が、パンツ一丁なんて!子供ですか!!」
「見たくなければ目を閉じればよいだろう。気にするな。」
「そうじゃないんです・・・。ここは、俺に与えられた部屋なんですって!俺も着替えなきゃ、デュアル様に失礼でしょ?着替えるんで出て行ってください!」
「お前!パンイチの私を部屋の外に追い出すって、鬼畜か?」
「ほら、アルバート君、着替え手伝ってあげるから、早くしなさい。」
「ちょ!なんでそんな!違う!やめ!なんで下から!!ちょ!まって!あぁぁぁぁぁ!」
強引に着替えを手伝われた俺は、変に抵抗したせいで、ロア師匠から「女子か」と言われてしまった。
服装も整い、と言ってもほぼ私服だが、旅の汚れは落とすことが出来た為王城へと向かう事になった。
昼時はとっくに終わっているので、いっしょにランチという事にはならないだろうし、公式な訪問でもないので気張る必要もないだろう。
「ミリアムはお留守番か。」
「そうね。あたしはこの国の者でもないし、正式なロア様のパーティーメンバーでもないし。国王への謁見は違うと思うの。」
「じゃぁ、ここでゆっくり食事でもしていきなさい?食べて飲んで、収穫祭の間は全部無料だから!」
「そうね。そんなに食べれる方じゃないけど、この国の料理を堪能しようかしら。」
「おばちゃん!この子、ミリアムって言うの。私たちが出ている間、面倒見てあげて!」
厨房の奥から、いつものおばちゃんが顔だけを出してミリアムを歓迎する。
「あぁ、ゆっくりしておいで。ミリアムちゃん、部屋も使えるし、水浴びも出来るから、自由にくつろぎなぁ。」
「ぁ、ありがとう。ございます。」
木ノ葉亭を出た俺たちは、デュアル様の待つ王城へ向かう。
ロア師匠・・・風でワンピースの裾がめくれる度に、必死に裾を抑えるの、こっちが恥ずかしいです。




