表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しあわせの国  作者: 狼眼


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/353

新たなる脅威

泉の畔のキャンプスベースを離れ、泉に流れ込んでいた小川沿いに進んでいく。

三日間の演習であれば、次のベースで夜を超えれば、最終日は街に帰るだけだろう。

ただひたすらに小川をたどって歩きながら、携帯食をかじる。


「行軍中は足を止められない事もあるからねぇ。こういう食事も慣れておいてねぇ。」


携帯食は基本的に塩分と脂分が多い為、直食いは少々厳しい。

パン系の主食も持ってきていたので、何とか無難に食事を行える。

食事を始める直前にリンが携帯食のおねだりをしてきたが、どうやら出発前の

「ぅあ~!アル!ありがとう!」の意味がわかった。完全にあてにしていた様だ。


「アル~。お水頂戴~。」

「お前ら・・・。」


香湯を作る前に沸騰させた泉の水を渡していく。


「コーギ、水は持ってきてないのか?昨日も・・・。」

「私、パンを持ってきていないから、さっき飲んじゃった。」

「俺は給仕担当・・・、も、してたけど。演習じゃなかったら終わってたぞ。」


おっさんは歩きながら「足元、ちゅういしてねぇ。」と、楽しそうに話を聴いている。

しばらく歩いていると、小川の流れも細く急になり、足元には大きめの石が増えてきた。


「もう少し登ったら休憩だよぉ。」


いつの間にか道は登りになっており、みんなの雑談が消えていた。

小川は支流となっており、急ではあるがきれいな水が流れている。そして周りの木々は腰丈くらいの藪が目立ち、日当たりが良すぎる。乾いた風と日当たりのよさで、口の中の水分が持っていかれている。

水を渡した後だから荷物は軽くなっているのだが、あの重さが懐かしい。


「よぉし。休憩しようかぁ。」


おっさんは、少し開けた場所で手慣れた様子で焚火の準備を始める。


「俺の水を飲んだ奴!川で水汲んで来いよ!」

「俺は飲んでないからな!っふ!」

「さすがアニキ!」

「お前らに言ってないだろ・・・。」


とは言いつつも、サンタスたちも湯を沸かしだした。


ふと気が付くと、おっさんが丘の上の方を凝視している。


「みんなぁ、静かにするんだ・・・。」


おっさんの緊張が伝わってきた。その雰囲気につられて、みんなが丘の上に目線を走らせる。


「なんだ?どうした?」

「アニキ、静かに・・・。」


「岩が、動いている・・・。」


俺が目を向けた先には、蠢く岩があった。


「ロックリザード・・・。」


おっさんが微妙な笑顔でつぶやいた。

ロックリザードは岩に擬態する大型のトカゲだ。暖かい季節は活発に活動し繁殖を行う。そのために食欲も旺盛になるのだ。おっさんの持つショートボウではダメージを与えることができない天敵種の一つだ。


「サンタス君、君の武器を貸してくれるかなぁ?」

「はっ!俺の武器は俺が使う!俺に任せろ!」

「・・・君は・・・。仕方がない、じゃ、指示に従うんだ。」

「アニキ、大丈夫ですか?」

「蛇のリベンジマッチだ!任せとけ!」


ロックリザードの動きは俊敏とは言えないが、岩場でも良く走る。肉食らしく牙は鋭く、爪も岩に傷をつけるほどだ。支給品のブロードソードでも太刀打ちが出来ない。唯一刃が通るのは、口の中か、常に隠されている腹だけだろう。


「サンタス君、いいかい、この距離で分かりずらいと思うけど、あいつは君より大きくて重い。狙いは一瞬だ、奴が口を開けた瞬間、上あごをかち上げるんだ。このチームで奴に有効な武器を持っているのは君だけだ。いいかい?」


サンタスはこん棒をぎゅっと握りしめて気合をためた。


「君たちは巻き込まれない様に少し離れて・・。」


「くっ、こんな敵に、こんなトカゲに、私の鍛錬が及ばないとは・・・。」

「コーギ、おっさんの指示に従おう。」


コーギとビルットは小川の方に後退する。


「アル、私たちも・・・。」

「リン、今出来ることは、退く事だけか?」

「出来ることって・・・。・・・・!私の魔術!?」


「違うな。」


俺も一応鍛錬は積んできたつもりだ。

神経を研ぎ澄まし、おっさんとサントスとロックリザードの動きを目で追った。


「サンタス、準備!」

「応!」


「今だ!」


ロックリザードが口を開いた状態でサンタスに襲い掛かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ