凱旋
美味しい・・いや、素早いデゼルトスコーピオンを討伐した後、2日でチィリン王国に到着した。
帰りの道は、風の上位精霊による強風の妨害も無かったため、順調そのものだった。
暑さに弱いクローディアさんは、ばててはいたものの、愚痴も少なく歩き続けている。やはり元冒険者と言うだけあって、こういう旅には慣れているのだろう。
ミリアムは愛用の剣を追ってしまったことで、ここの所まったく騒がない。いっその事ずっとこのままでも良いのかもしれないな。
ロア師匠は、疲れと言うものを知らないかのように歩き続ける。師匠が周囲の警戒をしながら歩いているためか、小動物などを見かける事は無かった。まぁ、この感じだと、盗賊すら寄ってくることは無いだろうが・・・。
そして俺は、ようやく話ができるようになったジンとの対話を行っていた。
「そうか、だから反応が無かったのか・・。」
『我とて無限の力があるわけではない、お主に貸せる力は多くは無いのだ。』
「途中で、ウィル・オー・ウィスプを宿らせたりしたけど、問題は無かったのか?」
『小物の精霊が、上位精霊の我に何かできるとでも思うのか?』
「そんなに違うものなのか?」
『常識を知らんのか?・・・あの時、お前が戦っていた燃える砂の人形、あれに赤子が何か出来るとでも思うのか?それと同じことだ。・・・もっと常識を学べ。』
へぇ~、上位精霊って、弱っていても通常の精霊との差って、そんなにあるのか。ものすごいな~。
『だから常識を学べと言っている。』
・・・ジン、心を読めるのか?
『この剣で繋がっている内は、心くらい読めるだろう。それにお主は精神の精霊に好かれておるからな、少しくらい離れていてもよくわかる・・・。』
おい~!!闇と精神の精霊!俺の情報を漏らすのは止めてもらおうか!
なんか、精霊と関わっているとこんなのばっかりだ。質の悪い・・・。
『お主が精霊を制御できていない証拠だ。もっと精進ずるが良い。』
剣も、精霊も精進しろって・・・。はぁ~。デュアル様やロア師匠はどうやって強くなったんだろう?
「俺って、強くなってるのかな・・・。」
『強くは無いな。』
「弱いな。」
精霊とロア師匠からのダブルパンチは強烈だった。
「だが、成長していない訳では無い。ただ、型を模倣するだけではなく、自分の力を技に変える発想や、ここぞと言う時の往生際の悪さは、お前の強さとも言えるかもしれない様な感じだと思うが?」
「往生際が良かったら、今ここに居ませんって。」
『そうだな、お主のあの最後の一撃・・・。あの往生際の悪さは見事だった。』
なんか、褒められている様には思えないのだが・・。
「ほら、アルバート、ミリアム、しっかりしろ。チィリン王国のみんなが出迎えてくれているぞ?顔を上げろ、胸を張れ!」
少し遠くではあるが、確かに門の前に人だかりができている。
門の外の為か、男性ばっかりだな。まぁ、壁の近くは安全とは言われているが、絶対ではない。出迎えてくれている人たちも、それなりの装備に身を包んでいる様だ。
「さあ!凱旋だ!!」
ロア師匠を先頭に、俺たちはチィリン王国に凱旋を果たした。




