大蛇退治も楽じゃない
痛むわき腹を気にしながらゆっくりと右側へ移動する。
すると、蛇の頭もしっかりと俺の後を追って動いている。
どうやら、熱を感知しているのは本当らしい。・・・まったく厄介だ。
音は殺せても、体温は隠せない。
突如、蛇の頭が突進してきた。
身構えてはいたが、正面からの突進攻撃は反応が難しい。
俺は、地面を転がる様に回避しながらも、一閃、蛇の頬に傷をつけた。
このままでは分が悪い・・・いっその事、こちらから攻めるか・・・。
そう判断した瞬間、後ろから熱気が発生した。
「ほら!こっちよ!蛇野郎!!ほ~れほれほれ。」
ミリアムが魔法剣で炎を発生させ、熱源を作ってくれたようだ。
やるなら今しかない!
「ふっ!」
短く息を吐くと同時に前方へ駆け出し、蛇のあごに一太刀加える。
蛇は下あごを失ったことにより、ここで生き延びたとしても長くは生きられない事は確定した。
蛇は盛大に暴れまわり、辺りの壁や柱に激突する。まぁ、この程度で壊れる建築物では無いと思うが、蛇が巻き上げた砂ぼこりは非常にうっとうしい。
「もぅ、早くとどめを刺しちゃいなさいよ!」
「あぁ、そうだな。」
無秩序に暴れまわる蛇の動きを読むことは難しいが、内側へ丸まろうとする動きの為、適当に狙いをつけるだけで当たるには当たる。
幾度かの斬撃の後、蛇の動きが極端に遅くなり、すぐに動かなくなった。
「よし、戦闘終了だな。クローディア、今の闘い、どうだった?」
「そうね~。最初の一撃はよかったと思うわ。でも、続く二撃目がダメダメね。油断かしら?」
「そうだな。アルバートの突きは、必殺の技と言ってもいいくらい鋭いが、続く二撃目が無い。一撃で仕留められない場合は、致命的な隙を晒すことになるな。」
「まぁ、ミリアムちゃんの援護があって、やっと合格点ギリギリ・・・達してない感じね。」
「プッ!不合格って奴ね!」
クローディアさんの判定に、ミリアムが噴き出す。
「まともに戦ったら強いんだぞ?こいつ。首に穴空いても平気で動くし・・・。」
「もっと中心を狙えていれば、こんな結果にはならなかっただろうに。」
「そういえば、ザイール師匠も上下は良いが、左右は振らすなって言ってたな・・・。こういう事か。」
「基本的に、急所と呼ばれるところは、体の中心に集中している。人間も動物も・・・。だから一撃で貫く精度があるのなら、突きも悪くはない。だが、正確に狙えないのであれば、斬撃をしっかり身に付ける方が効率は良い・・・突きの精度、斬撃の強化が今後の課題だな。」
ロア師匠が今回のフィードバックをしてくれた後、再度休憩を取ることになった。
その間にクローディアさんから回復の魔術を受け、体力の回復を行った。
「はぁ、次はアンデットでも出ないかしら。私も活躍したいわ。・・・ねぇロア様!次、アンデットが出たら、今度こそしっかり見ていてくださいね!」
「・・・・ぁぁ。」
「よぉ~し!次はアンデット~!アンデット~!次こそア~ン~デ~ェ~ト~。」
今回の探索には、神官は居ないながらもアンデットには強いメンバーになっている。
ミリアムの魔法剣、クローディアさんの魔術、俺の精霊術・・・。
ロア師匠だったら、物理攻撃だけでアンデットを撃退できそうだけどな・・。
ロア師匠は、ミリアムのアンデットコールをじっと睨んでいた。・・・こわいよ。




