ハズレ
「ふぅむ。」
ロア師匠がゴーレムのコアを見ながら考え事をしている。
考えるより先に手が出る師匠にしては、やけに熱心にコアの観察を続けた。
「クローディア、こいつに魔力を通してみてくれ。」
「危なくないですか?」
「大丈夫。普通の魔晶石だと思えばいい。」
「・・魔力の抽出はしても、注入はしたことないわね~。」
そう言いながらもクローディアさんは、コアを受け取り魔力の注入を始めた。
すると、ゴーレムのコアは、クローディアさんの手の中でパキっと音を立てて砕けた。
「いったぁ~い。ちょっとロアさん!全っぜん大丈夫じゃないわ!」
「ん?怪我でもしたか?」
「血は出てないけど!痛かったわよ!」
ロア師匠はクローディアさんからコアのかけらを受け取ると、じっと見つめる。
「ん。予想通りだな。」
「危ない事させないでくださいよ~。いった~。」
ロア師匠は、コアのかけらを腰の袋に入れると、俺たちの方に向き直り話し始めた。
「今回のミッションは、おそらくハズレだ。こいつらのコアの魔晶石としての純度が低すぎる。まだ、成長期だといえるだろう。・・・しかし、放っておいてはチィリン王国が滅亡の危機に繋がってしまうから、前回と同じように大元を叩くか。」
「ハズレって、どういう意味です?ロア様の目的は何だったんですか?」
「私たちの目的は、精霊を安定させる宝珠の元となる石を持ち帰る事・・・。予想はしていたが、前回私が探索した際にも同じような状態だったしな・・。おそらくこの遺跡では生成されないのだろう。もしくは、王国ごと砂漠に飲み込まれるほどの変異が起これば、可能性はなくも無いが・・・。」
「それは出来ませんよね~。」
「だな。それにデュアル師匠の話では、チィリン王国のダンジョン、つまりこの遺跡で宝珠が発生しているという”噂”があるとおっしゃっていたからな。基本的にチィリン王国の砂漠化を防ぐのが主なミッションだったんじゃないかな?お優しいおかただから・・・。」
「どちらにしても、最奥まで行かなければ終われないって事ですよね?」
「あぁ、がんばれ。」
それから、蜘蛛や蜥蜴やらが何匹か出て、今日の探索を終える事になった。
晩飯は蜥蜴の丸焼きと瓶ワイン・・・遺跡内で酒を飲むとは・・・俺もミリアムも言葉が出なかった。
遺跡内では、どの時間帯に敵が活性化するだとかは無いので、まずはロア師匠が酒を煽りながら見張りに建つことになった。
次がミリアム、最後に俺。クローディアさんはゲスト扱いだ。
「ちょっと!起きなさい。」
ミリアムが肩をゆすってくる。
もう見張りの時間か・・・。
「ちょっと、見なさいよあれ!どうなってんのよ・・っていうか見ちゃだめよ!!」
訳の分からない事を言うミリアムが、手のひらで俺の目を塞いだ。
その一瞬、視界の端に赤いものが見えたのでミリアムが騒いでいる原因が何となく分かった。
「ロア師匠・・・また全裸なのか・・・。」
「ちょ!見ちゃダメ!レディーに失礼でしょ?」
「・・・おそらく・・・見張りを変わった後、気が付いたら全裸になっていたロア師匠を見て、慌てて毛布を掛けたが、何度かけなおしてもいつの間にか毛布が吹っ飛んでる・・・ってとこか?」
「・・・見てたのね?・・・スケベ!」
「いつも通り。平常運転だ。気にするな。」
「気にするなって!あんた!・・・いつも、こうなの?」
「あぁ、目のやり場に困るんだ。女同士、何とかできないか?」
「・・・いやよ。三度目に毛布を掛けたとき、蹴りが飛んできたもの。まだ死にたくない。」
「俺は、直撃を喰らって、その日は朝まで見張り無しで寝てたぜ?」
「・・・無理なのね?」
「あきらめろ。」




