TPO
「どうすんだ、これ。」
更に凶悪になったサンドゴーレムを見て俺は呟く。
サンドゴーレムと炎は相性が良かったのか、周りの砂も吸収しながら巨大化している様に見える。コアと思われる部分はまがまがしく輝き、さらなる力を欲している様にも思えた。
「土の塊には効果は無いが、溶岩の様になったのなら・・。」
俺は、腰の水袋を取り出し蓋を解放する。水の精霊であるウンディーネに力を借りるために・・・。
『・・・待て。・・・この場所・・・水の精霊では、力を発揮できまい。・・・この剣にウンディーネの力を取り込むのだ。』
は?この声、ジンの声だろうか。
確かに、この場所の精霊力バランスは大きく崩れている。これっぽっちの水で呼び出せるウンディーネの力では、それこそ焼け石に水だろう。
剣に取り込ませてどうなる?
しかし、俺の思考はまとまらない。サンドゴーレムはもう目の前まで来ているというのに。
「ちょっと!あんた!何固まってんのよ!攻撃するなり、逃げるなりしなさいよ!」
更に、ミリアムがうるさい。
俺は考える事を止め、ジンの提案に乗ってみる事にした。
「水の乙女ウンディーネよ。我が剣に宿り給え。」
水袋の水が、噴水の様に飛び出し、左手に持った剣に吸い込まれていく。
剣は、青い光を放ちウンディーネの力を受け入れた様だ。
・・・で?どうする?
ここは一旦下がって・・・いや、もう遅い!
俺は魔法剣を目線と水平に構え、左腕の上に軽く乗せた。
ロア師匠から学んだ型ではないが、今はこれが最適だと直感的に思ったんだ。
赤く輝くコア、のような物に向けて狙いを定め・・・穿つ!
剣先は狙いを違わず敵を捕らえた。切っ先がゴーレムに触れた瞬間、白い靄のような物が、直線的に伸び、後ろに続いているサンドゴーレムをも巻き込んでいった。
「水と風の融合か・・やるわね。」
クローディアさんがつぶやいたおかげで、何が起こったかがはっきりと分かった。
水の精霊の力を、風の精霊の力で増幅させたのだ。炎系の敵に風の魔術を使うと力を増すことが有るらしいが、水分を内包した風であれば全く逆の効果となる。周囲の熱を奪いつつ、炎であれば力を減衰させ、土であれば流動性を失わせる・・・。今回はこれがぴったりとかみ合い、敵に大打撃を与えている様だ。
熱を孕んだサンドゴーレムは、冷え固まり、関節もない事から動くこともできなくなっている様だ。
「わ・・・私とこいつの合体技が効いたわね!」
この期に及んで自分の功を誇りたいのだろうか。ミリアムが冷や汗を垂らしながらも胸を張っている。
「見事な機転ねアルバート君、ちょっと危ないかと思っちゃった。あんなゴーレムに襲われたら、下手したら骨も残らないからね~。回復も無理だわ。」
「まぁ、アルバートの初動が遅かったのが要因ともいえる。敵を見極める事も大切だが、闘いは先手を取り、相手の得意を潰していくことが基本だ。判断力の敏捷性を上げるように。」
「はい。」
俺は、固まって動かなくなったゴーレムをばらし、コアを回収する。
・・・魔晶石がコアになっているのか。
掘削時に飛び散った破片や、搬送時に落ちた石が核となって、周りの物質に力を与えていたのだろう。
3体目のゴーレムからコアを抜き取り、師匠の方を振り向くと・・・ミリアムが砂に埋まっている。
ロア師匠の鉄拳が再び落ちたのだろう。・・・しっかりと師匠になってるじゃないですか・・。




