貴様の名は
「あの!あの!メグ・ロア様ですよね!」
女は近寄るなり、ロア師匠に駆け寄ってきた。・・・肉が食いたかったんじゃないのか・・・ん?
こいつ、見たことがある。
「あぁ、そうだが?お前は何者だ?」
ロア師匠がそう言うと、女はチィリン王国の敬礼をしてロア師匠に申告した。
「失礼いたしました!私は、チィリン王国の冒険者!ミリアムと申します!街では【炎のミリアム】と呼ばれております!!」
ロア師匠はチィリン王国では英雄だからな・・・こうやって畏まって・・・って!ミリアムか!!
「お前、ミリアムか?なんでこんな所に居るんだ?」
「・・・あんた誰よ?こんなとこでナンパ?止めてようざい。」
・・・こいつ・・・またシェイドをけしかけてやろうか・・・。
「なんだ、アルバート、知り合いか?」
「いえ、知り合いと言うほどのものではないですが・・・。」
「貴様!!メグ・ロア様になれなれしい!!何者だ!」
いま、ロア師匠が俺の名前呼んだだろ?・・・やっぱり残念な娘だったか・・・。
「俺はアルバート。山裾の館で会っただろ?ほら、シャズナール子爵の・・・。」
「んん?え~。あぁ~。あっ!・・・ん?」
「ほれ、食え。」
ロア師匠が見かねた様に、百足の足をミリアムに渡した。
「あぁぁ!ありがとうございます!!この足は、私の家の家宝にいたします!!」
「いや食えよ。」
喰えよと突っ込んだ俺の言葉が間に合わないくらいの勢いで、ミリアムは百足の足にかぶりついた。
・・・家宝じゃないのか・・。
「という事は、君は、炎の剣を持って、アンデットハンターをしているミリアム君だな?」
「!は、はい!・・私も、ロア様に知っていただけるほどの有名人になっていたとは・・・。ミリアム感激です!!」
「いや、そこのアルバートから聞いていたんだ。」
「アルバート!君はアルバートと言うのか!いや~。私の事をロア様に伝えてくれるとは、君は天使か?・・・って。あんた、どこであたしの事を知ったのよ!ストーカー?うぁ、キモイ、死んで!」
「ロア師匠。こいつ、やっちゃっていいですか?」
「・・・その方が良いかもしれん。好きにしろ。」
俺は、ミリアムに向けてシェイドを飛ばし、精神力を奪い、倒れた所に百足の足を口にねじ込んだ。
これで少しは静かになるだろう。
「で、お前は何しに来たんだ?俺たちの後ろをこそこそと・・・。」
「・・・ロア様が・・・チィリン王国に来たって・・・。」
「私が?チィリン王国に来たら悪かったか?」
「ち!違います!!私、ロア様の大ファンなんですよ!!」
「ファン?」
「だって、ロア様は、チィリン王国の英雄ですよ?数年前、チィリン王国が砂漠に飲まれそうになった時に、颯爽と現れ、報酬もとらずに去っていった。・・・もぅ!最高じゃないですか!!」
顔を赤くしながらロア師匠を絶賛するミリアム。身振り手振りを大げさに、吟遊詩人のサーガをそのまま鵜吞みにした発言でしゃべり倒す。
「・・・そこで、遺跡の最奥でドラゴンと対峙し、三日三晩死力を尽くして勝利を勝ち取ったロア様!!人間ってここまで強くなれるのか!?って感じじゃないですか!!」
「師匠。ドラゴンなんて居たんですか?」
「いや?砂鰐くらいだな・・・。」
ミリアムの歌うような英雄伝を聞きながら、百足の足を美味しくいただきました。




