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しあわせの国  作者: 狼眼


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気力と体力の回復

晩飯が終わった後、水の精霊にお願いして水浴びをさせてもらった。ロア師匠は「今はいい」と言って、鳥肉を最後まで平らげていた。

体を拭き終わった所で、「先に休め」と、強制的にマントの上に寝かされる。

・・・飯を食ったばかりで寝れるわけもない。ましてや体のいたる所が悲鳴を上げていて、痛みの為まだ眠れそうもない。しかし、起きていても師匠にどやされるので、目を閉じておくことにした。


「・・・・ふっ・・・・・ふっ・・・・」


いつの間にか、軽く気を失っていた様だが、師匠のかすかな声と、物音で現実に引き戻された。


「・・・・はっ・・・・・ふっ・・・・」


薄目で声のする方向を見てみる。

もう、夜も遅い・・・のだと思うが、ロア師匠は剣の型を行っている様だ。

ゆっくりとではあるが、揺るぎのない、きれいなフォームで剣が流れるように空を切っていく。

両手剣ではあるが、片手で行う技。剣の腹の部分を蹴り上げて、剣の軌道を急激に変える技。剣を軸にしてリーチの長い蹴りに繋げる技。


それぞれが洗練され、演舞を見ている様な気持ちになる。

気が付くと俺は、観客の様に上体を起こし演舞に見入っていた。


師匠の剣速が次第に早くなっていく・・・・。空を切る音も、フォンからビュッはと変化し、終いにはバン!という破裂音に変わり、前方、少し離れた大木に傷をつけていた。


そこで一連の動作が終わったのだろう。師匠は剣を鞘にゆっくりと納め、呼吸を整え始めた。


「・・・素晴らしい・・・。」


俺は思わず拍手をしながら呟いた。


「・・・なんだ、起きたのか?夜明けまではまだまだ時間は有るというのに・・・。」


あんだけ音を出しておいて、起きたのか?は無いと思ったが、俺が感じたままの思いを伝えた。


「師匠、素晴らしい技でした。師匠ほどの実力者でも、剣の稽古は怠らないのですね。・・・・正直、憧れてしまいます。」

「いやぁ、もう、体に染みついていてね。これをしないと寝付けないんだ。」


少し照れた様子で言い訳をする師匠。「もう少し寝なさい」と、俺に一言いって、昼間、俺の腰に付けられていた水袋を手に取った。

師匠は、水袋の留め具を外すと、頭から水をかぶった。

師匠はそのまま、ビキニアーマーを外し始めたので、俺は反対側を向いて寝なおすことにした。




微かな鳥の声に目をあける。どうやら夜は明けた様だ。

焚火はまだ燃えているが、師匠は?

・・・いた。

俺の隣で寝ている・・・。しかも全裸で。

この人には羞恥心ってものが無いのだろうか?


目に毒なので、俺のマントを上から掛けようとした時、目の前に、剣の切っ先が発生した。


「・・・なんだ、アルか・・。」


身動きできないまま、冷や汗が頬を伝う・・・。


「・・・なんだ、じゃないですよ・・・あっぶなぁ~。」

「お前があたしに、何かしようとしたからだろ?ん?欲情したか?」

「・・・目の毒なので、マントを掛けようとしただけじゃないですか。」

「・・・この季節に、暑いだろ?気にすんな。」


そう言うと、再び横になって目を閉じた。・・・昨晩の剣の型は繊細で見事な物だったのに・・・それ以外は・・・雑な人だな・・・。


焚火の横には、朝食用と思われる兎が置いてあった。丁寧にさばいて、大きな葉の上に乗せてある。

・・・焼いておけって事かな?


兎肉を火にかけながら、俺も師匠を真似て、剣を振ってみる。


「・・・・はっ・・・・・はっ・・・・」


ゆっくりでも思うように剣が振れていない。・・・意外と難しいもんだな。

剣を振り切る際に吐き出す息で、師匠を起こさないように、更にゆっくりと剣を振る。


「・・・・・・・・・・・・・ふぅ」


ゆっくりしすぎると、手元がプルプル震えて、無駄な力が入ってしまう。


「・・・ダメだな、普通にするか・・・。」


そこから、兎の焼け具合を気にしながら、剣を振り続けた。

師匠はまだ寝ている・・・大股開きで・・。

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