アルバートは武器を手に入れた
結局、デュアル王が、俺の為に武器を選んでくれた。というか、元々用意してくれていた様だ。
「お前の筋力と精霊術を考えると、やはりこれになる。・・・銘は無いが、これも古代遺跡から発掘された武器の一つだ。グリップの部分は朽ち果てていたから、リーフの武器職人に付け替えさせたんだ。」
「・・・きれいな剣ですね。」
ブレイドの部分は多少細身で白銀色。ミスリルとも違う輝きを放っている。ガードは最小限で、扱いやすそうだ。
「お前の突きは中々様になっているからな。切る、突く、どちらも得意としている武器だ。更にこの鞘をやろう。・・・ビグレイブ。それがその剣の名だ。」
「ビグレイブ・・・ありがとうございます。この剣に見合う様な剣士になります!」
「そうだな。ロア、アルバートに剣技を教えてやれ。」
「!わ、私がですか?」
「一応、お前はギルマス。アルバートの上司になるんだ。アルバートの新たな師匠になってやれ。」
「・・・ついに・・・デュアル様が、私を、一人前と認めてくれた!!・・・やります!やり切ります!!」
「お・ねがいします。」
あっという間に、俺に2人目の師匠ができた。
「ロア。」
「はい!」
「・・・壊すなよ?」
「・・・善処します!!」
「そこもはい!って言ってくださいよ~。」
俺は、新たに手にした武器を、大切に抱えて武器庫を後にした。
その後、王に呼ばれるがまま執務室へ移動した。
「アルバート。これを付けておけ。」
そう言うと、リボン状の白い布を手渡してきた。
「?コレは何ですか?」
「それは、グリップに巻き付けるんだ。・・・・こう、巻き付けて・・・余った部分を・・ここに挟む・・・こうして持ち運ぶんだ。」
王は、剣のグリップに布を巻き付けて、鞘をつるしているベルトに差し込んだ。
「この余った部分、邪魔じゃないですか?」
「それは、手に巻き付けて使うんだ。」
ロアさんも自分の(ものにした)剣を見せてくれた。確かにグリップのすその部分から、余った布が出ていて、手首に巻き付けられるようになっている。
「闘いが長引くと、汗や血でグリップが滑りやすくなる。剣速を上げると、握りも強くしなければいけない。となると、剣が持てなくなるんだ。その補助として、この様に剣と腕を繋ぐ布を巻き付けておくんだ。」
今までは、素振りや短時間の戦闘しかしてこなかったから気が付かなかったが、多くの修羅場を潜り抜けてきた人たちは、身を守るための術をしっかり身に着けている。ゆえに、このような細かな部分にも気を抜かないのだろう。
「あとは・・・これだな。」
今度はロアさんが手を出してきた。グリップに巻いた布の隙間に、極小のナイフを差し込んだ。
「これ、危なくないですか?」
「大丈夫、これも、いざと言う時に役立つから、付けておくといい。」
「はい、ありがとうございます、師匠。」
「!!師匠!!・・いい響きだ・・・。」
何やら感動しているロア師匠をほったらかして、デュアル王が説明してくれる。
「このような大剣は、小回りが利かない。こういった小刀は、ロープを切ったり、投擲に使ったり、隙間に挟んだりと、色々な使い方があるんだ。」
「なるほど・・・ありがとうございます、デュアル王。」
「・・・王って、言いにくくないか?」
「・・・失礼ながら、男爵の方が慣れていて言いやすいです。」
「・・・もう、王は外してくれないか?」
「では、これからデュアル様とお呼びいたします。」
「・・・ちょっと硬いが・・まぁ、良いか。」
デュアル様にお礼を言って、俺たちは木ノ葉亭に戻ることにした。




