精霊のキモチ
『・・・なんか、急に静かな所に来たな・・・。』
おれは、暗闇の中で目を覚ました。
辺りは明かりの無い闇。ただ、目の前には、確かに何かがある、いや、何かがいる。
『?あ、おきたんだね!よかった。』
『君は?』
『?ぼく?ぼくは、ぼくだよ?』
『あぁ、その声は、精霊君だね?そういえば、ここは何処なんだろう?君はわかるかい?』
『ここはね。うーんとね。じめんのしただよ?』
『地面の下?地下って事か。・・・という事は、君が最初にいた場所と同じ場所?』
『うんとねぇ、すこしうごいてるよ?』
『動いている?どうやって?』
『みてみる?』
精霊がそう言うと、目の前の空間が少し開けた様に思えた。
だが、視界がおかしい。現在進行形で動いているのだ。
『なんか、動いているけど?なぜ?』
『ぼくが、きみを、うごかしているんだ。よ?』
『なぜ?どうやって?』
『ぼくが、きみになっているんだよ?』
目の前の薄暗い通路を、止まることなく進んでいる・・・どこに?
『このおとこがいたへやにむかっているんだよ!』
『あれ?俺、声に出したっけ?』
『ぼくはこころのこえがきこえるからだよ?』
そう言えば、ガーラさんがやってたな・・・。こういう風にばれてたのか・・・。
?この男?だれ?
『わかんない。ぼくをとじこめていたやつさ。ぼくをいじめようとしたから、そのままかえしてあげたらねちゃったんだ。』
?閉じ込めた?
視線を動かそうとすると、目の前の景色も思うよに動いた。
『グリフ王!』
『ぐりふおう?へんななまえ。』
俺の、俺の手がグリフ王の頭髪を掴み、引きずって歩いている。
俺が、殺したのか・・・?
『ちがうよ?じぶんのまほうがかわせなかったんだよ?』
・・・そうか。魔法の反射、もしくは吸収からの放出・・・。
それはそうと、そろそろこの体の主導権を渡してもらわないと。
『ちょっとまってよ。いま、この男がめをさましたらあぶないよ?』
『そうか・・・分かった。』
なぜか、不思議と安心して精霊の言葉を受け入れた。そう、それでいいんだ。
今、入れ替わってしまうと危険なんだ。そう、これでいい・・・。
「・・・傷ついた者に暖かな癒しを・・ヒール。」
「ハンナ様、すみません。足手まといで・・・。」
「大丈夫、アルバート君を助けるわよ?」
「了解!」
アルバート君から黒い靄がにじみ出ている。
恐らく宝珠の支配下にあるのだろう。アルバート君から出ている靄は、宝珠から出ていた黒い靄と同じものだろう。
「アルバート君!目を覚ましなさい!!」
私の言葉も耳に届いていない様だ。・・・どうする?魔術で解呪するか・・・。腕ごと宝珠を吹き飛ばすか・・、いや、それは危険ね。何かの力でグリフの魔法をはじき返していたし・・・。
「ハンナ様、俺のナイフで狙ってみましょうか?」
「だめよ!もし、こちらが敵認定されたら取り返しがつかないわ!・・今は、呼びかけるしか・・。」
アルバート君は振り返らずに、通路を奥へ奥へと進んでいく。グリフは力なく引きずられるままになっている。
「・・・これは、あいつらにお願いするしかないわね。」
「あいつら、とは?」
「今、上で戦っている馬鹿どもの事よ。」




