静かな部屋の中で
・・・。ん?・・・。あぁ、寝ていたのか・・・。朝か?・・。
「じゃない!!ここはどこだ!!おい!誰か!!」
ゴス!
「きみぃ、うるさいよ?みんなはまだ眠ってるんだ。静かにしたまへ。」
「貴様、何奴!顔を隠して人を攫うなど!人攫いか!!俺を売るのか?!」
「売るって・・・売れないだろ、おっさん。まぁ、お前たちの命は、俺が握らせてもらっている。質問に答えてもらおうか?」
「き、貴様~!」
「今回の命令は、どのように受けている?よく考えて応えろよ?」
「・・・今回、の、指令は。門前で兵を配置し、侵入者を防ぐ。それだけだ。」
「ほぉ?あそこに転がっているメイジの爺さんは、大きな結界を張ろうとしてたけどね?」
「?それは聞いていない。メイズが勝手にやった事だ。」
「あぁ!彼がメイズ殿か!・・・お~い、ひと手間省けたぞ!」
「せやな~。ええこっちゃ!」
「お前たちの目的はなんだ?なぜ王国を襲う!!」
「おいおっさん!俺たちを悪者みたいに言うなよ!俺たちは、お前らの為にもなる様に動いてんだ!ちっとは協力しろや!」
「若いの、その物騒な鈍器を振り回すのはやめてくれないか?」
「サンタス君、落ち着きなさい。」
この黒い鎧の男、人攫いの頭だな。口調は柔らかいが、目が笑っていない。絶対にやばい奴だ。そしてサンタス?聞いたことない名前だが・・・。他国の兵か?
何とか、兵士たちの命を守らなければ・・・。上級兵士の中には、貴族も多く含まれている。その命を蔑ろにしたとなっては、ここで命が助かっても、後に謀殺される。
「分かった。君たちの要望を聞こう。」
「要望?・・・要望ね~。」
「ほい、4人追加やで~。」
気絶させられた兵士が、部屋に放り込まれる。
部屋?・・・・!なんて事だ!敵は王国内に潜伏していたのか!
王の術によって、悪人は排除されているはずなのに・・・。一体どこから・・・。
「デック殿、あと10名ですが、数名が兵の内側へ逃げ帰ってしまったようです。」
「まぁ、ちっとはかまへん。ちゃっちゃと仕事すんで。」
「デックさん、早すぎるって・・・。」
デックとビルットと神官2名は、デックに付いて走り回り、デックが気絶させた兵士を城門近くの小屋にぶち込んでいっている。
「あの神官たち、手慣れてるな~。」
若い神官に後れを取りながらも、地面に伏している兵士を引きずり、また一人、小屋に消えていった。
「爺さん!爺さん!!」
手足を縛り、さるぐつわをはめられた老人を軽く揺さぶって起こす。
「ん?・・・ふぉふふぃふぁふぁふぁふぃふぉふぉふぁ?」
「まぁ、待て、いま外してやる。」
「お主らは、何者じゃ。」
「さぁな。・・おっと、魔術は使うなよ?杖は預かっているし、後ろで凶悪な若者が武器を構えて、ご老体の命を狙っているからねぇ。」
「ふん、今更何を!儂に何の用だ!」
「?特に用はないよ?もう用は終わったから。」
「なに!何をしたんじゃ!!」
「ご老体。あんたには悪いが、呪いをかけさせてもらった。2日間、魔力を放出し続ける呪いだ。・・・まぁ、この呪いで魔力切れを起こしたら、強烈な痛みで死に至ることもあるが、悪く思うな?」
「思うわ!!!だが、お主等の呪いは失敗しておるようだな?魔力の放出は行われておらん。どうせ口から出まかせじゃろ。」
「分かってないな~爺さん。呪いは、じわじわと効いてくるんだ。今は微量だが、そのうち抑えられなくなるさ。」
「ちぃ!姑息な!!」
「あぁ、そうだ、サンタス君、ちょっと相談があるんだ。」
黒い鎧の男と、サンタスと呼ばれた若者が儂の傍を離れよった!!馬鹿め!メイジは杖が無くても魔術を発動することは出来るのだ!・・・まずは、儂にかけたと言っていた呪いを解かなくては・・・。
「闇の魔力の理を・・今・・解放せん・・・ディスペルマジック・・・。」
メイズは自分に向けてディスペルマジックを唱えた。
次の瞬間、強烈な頭痛と、過去の記憶が頭を駆け巡った。




