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しあわせの国  作者: 狼眼


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拝啓、檻の外より

カン・カン・カン・コンコンコン・カン・カン・カン・カン・・・

湿度の高い地下牢に金属を叩く音が響く。


ここはグリフ王国。人と魔獣が対立しながらも均衡を保っている大陸一の王国である。その地下牢で俺は見回りと給仕の仕事をしている。

いつものように木の枝を牢屋の檻にぶつけながら歩いて囚人を起こして廻る。


「朝飯の時間ですよ~、起きて下さ~い。」

「っるせ~な!アル!みんなとっくに起きてるよ!」


速攻で檻の中から罵声が飛んでくる。


「わかってますよ先輩方、これも決まりなんで。」


枝で檻を叩くことで異常が無いかを確認しなければならないのだ。

まったく、耳障りな音だ。檻の内側にいたらたまったもんではない。

何を隠そう、俺自身も檻の中に2度ほど入ったことがある。ほとんど覚えてないけどね。


カン・カン・コンコンコン・カン・・・


一通り雑音を奏でたころ、同僚が2人で大きな鍋を運んできた。本日の朝飯だ。


「今日の飯はなんだ?ほら、アル!早くよこせ!」


自分用の器を差し出しながら朝飯を要求してくる目つきと態度の悪い先輩方。

ここに収監されているのは皆、王国軍で軍規違反と判断された者たちばかり。

若干16歳、王国軍(見習い)の俺にとっては先輩方というわけだ。

どういう軍規違反であったかを聞いたり話したりする事は禁止されており、それを犯すと檻の内側に行くことになる。


「はいはい、ガイン先輩、今日は肉スープらしいですよ~。」


そう言って肉の香りが漂う琥珀色のスープを注いで順番に手渡していく。


「ちょ!アル!具がないぞ?肉は?」

「ロア先輩、肉はなくても肉の味がするらしいですよ?すごいですね~。」

「お前らが食ったんじゃないだろうな~。くそっ!」

「地下組に肉が回ってくるはずないじゃないですか、ほら、パンも受け取ってください。」


先輩をなだめつついつも順調に作業は進んでいく。基本的に収監期間は長くなく、短ければ5日、長くても20日ほどだ。軍規違反者にかけられた魔法が馴染むまでの期間だけ拘留されるのだ。


「最後は、師匠ですね。お待たせしました。」

「おぅ、アル、これ食ったら又指導してやるよ。」

「お願いします!」


師匠ことザイールは、ハイエル小隊の隊長で、俺の命の恩人でもある。

ザイール師匠は平民出身であるが、7年前の魔物襲来の際に手柄を立て、小隊長まで出世している。剣の腕はなかなかのもので、エストックを使わせたら王国軍幹部でも苦戦するだろう。


エストックは刺突型の武器で、レイピアよりもコンパクトであるため、森や洞窟はもちろん乱戦状態でも使い勝手が良いらしい。


「アル、その棒をよこせ。」

「師匠、食うの早すぎです。体に悪いですよ?」

「いいから、ほら!」


急かす師匠に先ほどまで檻を叩いていた木の棒を手渡す。


「よし、構えろ。」


こうして昼食前までの僅かな時間を師匠と過ごすことが日課となっている。


ここはグリフ王国。人と魔獣が対立しながらも均衡を保っている大陸一の王国である。

数十年に及ぶ魔獣との闘いで国民や軍の人々は数を減らしすぎた。そのため、囚人であっても追放や処分されることはない。王国に伝わる魔法で悪い記憶を消去し、普通の生活に戻しているのだ。

事象の始まりがどの様なことであっても「人命を重んじる国」として、国民からは【しあわせの国】と呼ばれている。


この物語は、そんな【しあわせの国】の王国軍見習いのアルバートという青年の物語である。

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