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第1章 「宣戦布告」 第1劇「第一の世界」

「ここが女王の世界?」有栖が扉を開き中を通るとそこは深い霧に包まれていた、そのまま真っ直ぐ進むと直ぐ様霧が晴れ世界が姿を現す。


彼女の目にした光景は紅い平原だった、全ての草木が深紅に染まった幻想的な景色に圧倒された。空の色は青く澄み渡っており優しい風が吹いていた。


「思ってた世界と随分と違うな」有栖は一人草原を歩くすると草原の中で立つ人影を見つけた。


「すいません、この辺りの土地勘が無くて迷ってしまったんですけど町か村は何処にありますか?」私は人影に声を掛けただが人影は反応すること無く動かないでいた。


「あの、聞いていますか?」蕊れを切らして近づいたのが間違いだった。


「え?何?何なの?」それは立ったまま干からびた人間だった、その表情は快楽で緩んでおり足元を見ると草の根が足に食い込んでおり血液を吸い取っていた。


「もしかしてこの草が紅いのって」私は全てを察し周囲を見渡したすると草の中に複数の干からびた人間の姿があり全身を草の根に絡み取られた状態で血液を吸われていた。


私は即座に走り出したするとさっきまで穏やかな草原がざわめき始め、地中から人型に根っこが巻き付いた化物が現れた。化物達は一斉に私目掛けて種子を飛ばす。


種子の一つが私の着ていた上着に付着した、私は即座に上着を脱ぎ捨てる、すると種子は一瞬で発芽し私の着ていた上着に巻き付き即座に地中に沈んでいった。


私は無我夢中で草原を駆ける根っこの化物達も後を追う、化物達は私に向かって種子とツタを飛ばすツタを伸ばした際に化物の中身が見えそれがさっきの人間達の成れの果てだと理解した。


草原の色が薄くなって行き後少しで緑の草の位置まで出られそうになった瞬間、私はツタに足を絡め取られ倒れてしまった。


ツタはすぐに私の足に食い込んでいく、私は痛みに耐えながら這って出ようとしたが化物の力が強く引き摺られる。このまま死ぬのかな?私の脳裏にその考えがよぎった時に声がした。


「これを使え!」その声と共に私の顔の真横に大型のナイフが刺さった。私はそのナイフを取ると直ぐ様ツタが絡みついた足を切断した。


そして急いで這って行き何とか事なきを得た。


「大丈夫かい?」


「ええ、何とかね」私は複数の男達に保護されその場を後にした。


「何であんな所にいたんだ?あそこは女王の庭園と呼ばれていて立ち入らない様に言われている筈だぞ!」


馬車の荷台で手当てを受けている有栖に中年の男が説教を行う。


「ごめんなさい、そんなに危険とは知らなくて」有栖が言うと男は呆れ顔で言った。


「まあ、いい脚は残念だったが命が助かっただけ良しとしよう私の名はアダム、君は?」中年の男が聞く。


「有栖、この世界の女王を殺しに来たの」私が言うと馬車の中に笑いが起きる。


「君があの鮮血の女王を殺すだって?それは無理だなあの悪魔にはどうしたって太刀打ち出来ないさ」


アダムが懐から巻煙草(タバコ)を取り出し火を点ける。「良いかいお嬢ちゃん?この世界には決して逆らってはいけない奴が3人居る。一人目は鮮血の女王彼女は数年前にこの世界に現れ先代の支配者を殺した。その殺し方は異常で彼女が触れただけで身体が風船みたいに膨れ上がり破裂した。」アダムの手が震えるのを見て改めて有栖の戦おうとしている存在の恐ろしさを認識した。


「そして二人目は女王の(つるぎ)アーサー•ギグス彼は女王直属の騎士団の団長で剣聖と呼ばれている、一度奴の剣技を見たが全く剣閃が見えなかった。」アダムがタバコを外に投げ捨てながら言った。


「お嬢ちゃんはそんな化物を相手にしようとしてるんだぜ?辞めといた方がいいまだ死にたくないだろ?」


アダムの言葉に有栖は質問する。


「さっき3人って言ったわよね?あと一人は誰?」有栖の質問を聞き場の空気が静まり返る。


「あと一人か、それならお嬢ちゃんの目の前に居るぜ」有栖はハッとしてアダムを見る。


「詳しい紹介が遅れたね、俺の名前はアダム•ロット女王直属の調達隊長さ」アダムは不適に笑うと口の中に含んだ煙を有栖に吹きかけた。するとたちまち有栖は深い眠りに落ちてゆく。


「すまないなお嬢ちゃんこれも仕事なんだよ」最後にアダムの呟きを聞きながら有栖は荷台の中で気絶した。


「止めて!もう止めて!嫌ぁ!」何処からか女の叫び声を聞き目を覚ます、見ると暗い地下牢の様な場所だった。「こいつは活きがいいな良い血袋になるぜ!」叫び声と共に複数の男の声が聴こえる。


「ここは何処なの?」有栖は一人暗闇で呟く手足を調べてみると縛られておらず斬り落とした脚も手当てされていた。


「起きたかいお嬢ちゃん?」突然声を掛けられ暗がりを見るとボロボロになった老人が居た。


「ここは何処なんですか?貴方は一体」有栖が老人に近付くと老人の異様な姿に目が行った。


老人の身体には無数の管が刺されており、紅い液体が上へと吸い上げられていた。


「もしかして血を抜かれているの?」有栖が老人に聞くと老人が顔を向ける、その顔は皺だらで顔が青白くなり精気を失った女の顔だった。


「醜い顔でしょう?私まだ20歳なのよ」その言葉を聞き有栖がぞっとする。


「貴方にも教えてあげるわ彼奴等が私達に何をして居るのか、そしてここが何処なのか」老婆の低い笑い声が暗闇に木霊していた。


第1話 完 


第2話に続く

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