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第2劇 「ようこそ、狂気と偽りの世界へ」

「ここは何処?」目が覚めると私は豪華な一室のベットの上に居た。


「起きたかいアリス?」聞き覚えのある声を聞き私はベットの脇を見た。そこには紺色のズボンを履いて上はシャツ1枚の美丈夫が居た。


「私生きてるの?でも確か」ふとあの時の記憶が蘇る。屋上での会話そして硬い地面に叩き付けられ激痛が走る頭部、どれをとっても夢と言うには余りにもリアリティがあり過ぎた。


「君は死んだよアリスでもそれは前の世界での事だ君はこの世界へと転生したんだよ」


バニーは近くのソファに座るとアンティーク調のポットから紅茶を注ぐ。


「どうだい?この世界の説明がてら一緒に御茶でも」


バニーに促され有栖はベットから降り向かいに座る。


「ミルクと砂糖はいかがかな?」バニーがティーカップを出しながら言った。


「じゃあ砂糖2つとミルク一杯で」有栖が言うとバニーは角砂糖の入った瓶から二つ取るとカップに入れ最後にミルクを注ぎタンブラーでかき混ぜる。


「どうぞ、お気に召すといいが」


「ありがとう」


バニーからカップを受け取る中の紅茶はクリーム色になっており有栖はそのまま一口飲む。


「美味しい、茶葉自体が普通のとは違うの?」


「よく気付いたね茶葉は私の自家製で丹精込めて作っているんだよ」バニーは有栖の称賛に気を良くしたのか笑みが溢れる。


「さてそれでは本題に入ろうか、君が今居るこの世界と君が何故生きているのかを」バニーは一つずつ説明を行った。


「まず一つ目君は前の世界では既に故人になっているそうしなければこの世界には来れなかったんだ、急ぎとはいえ理由も言わず君を殺してしまってすまない」


「良いよその事はどっちみち生きていても私はあの場所から出られなかったし、それに未練なんて無かったから」有栖は神妙な面持ちのバニーに言った。


「ありがとう君にそう言ってもらえて一安心したよ、さて重要なのは2つ目だね」バニーは紅茶を一口飲むと答える。


「君が居るこの世界、私達はこの世界を偽りの世界(フェイク•ワールド)と呼んでいる。」


偽りの世界(フェイク•ワールド)?つまりこの世界は現実じゃないの?」有栖は困惑する。


「現実であって現実ではない一つ言えることはこの世界では常識と言うものが通用しないんだよ」


バニーは手を前に置きながら言った。


「唯一つ言える事はこの世界は嘘だらけだと言う事だよ誰も信じてはいけない勿論自分自身もね」


バニーの説明に有栖の頭の中の疑問は深まるばかりだった。


「そして最後に3つ目君が何故生きているのか」


有栖は改めて自分の身体を見る、死の直前に負った筈の外傷は見当たらず寧ろ病院に居た頃よりも肉付きが良く健康体だった。


「君の身体は改めて私が用意した物でね、人造人間(ホムンクルス)と言う魂を定着させる為の器何だよ」


人造人間(ホムンクルス)?それじゃあ私は普通の人間じゃないの?」


「厳密に言えば違う、だがその身体にはちゃんと5感が備わっているよさっき私の紅茶の茶葉の違いにも気付いただろ?」バニーの問いに有栖が反応する。


「それじゃあ身体機能は普通の人間と変わらないのね?」


「ああ、まあ違いを挙げるとすればその身体は普通の人間よりも死に難いし、身体能力も普通の人間の5倍だよ」


「死に難い?それってどう言う意味?」


有栖が質問すると同時に腹部に鋭い痛みが走る、見ると有栖の腹部をバニーがサーベルで貫いていた。


「え?私死ぬの?」有栖の身体からおびただしい量の血が流れる。だが不思議と有栖は意識を失う事はなく逆に傷口が自然と塞がっていた。


「いきなりですまない、説明するよりも見せた方が早いと思ってね」バニーはサーベルに付いた血を拭き取りながら言った。


「今の何?傷口が勝手に塞がったけど?」


「君の身体には自己治癒の術式が組み込まれているんだよ、だけど再生力にも限界がある例えば手足が欠損しても生えてくることは無いし、身体にボーリングのボール程の穴を開けられてしまったら出血多量で動け無くなるだが失った手足はまた付け直せるし、身体も血液を足せば時間は掛かるが塞がるよ」バニーが静かに説明する。


「それじゃあ不死身なの?今の所メリットしか無いけど」有栖の問いにバニーは首を振り答える。


「確かに今の話を聞いたらそう思うかもしれないね、でも痛覚はちゃんとあるんだよ例え胸に穴を開けられても治療すれば助かるがそれまでに耐え難い苦痛がやってくるんだよ、だからいくら不死身に見えても一度死に至る苦痛を体験すると普通の人間なら自我を保てないものさ」バニーは紅茶を口に運びながら言った。


「でもそれさえ我慢出来れば助かるんだよね?それだけでも破格のメリットだと思うけど」有栖は病院での拷問とも呼べる虐待を思い出しながら言った。


「君はやはり私の見込んだ通りだね、大抵の者はこの話をすると怖がって殺してくれと請うんだせっかくの贈り物だと言うのにね」


バニーがやれやれと首を振りながら憂う。


「そして万が一その身体が著しく損傷しても良いように君の身体に保険を掛けておいた。」


「保険?何を仕掛けたの?」バニーは有栖の心臓部を指す。


「君の身体には二つの心臓を埋め込んである、もし君が死に至る傷を負った時にもう一方の心臓をくり抜き体外にだすとその心臓が新たな身体に変わり魂を定着出来るんだよ」


「つまりスペアの身体になるのね」


バニーが手を叩いて頷く。


「理解が早くて助かるよ、だが心臓を引き出す時は耐え難い痛みを伴うその痛みに耐え抜いた時に君は生まれ変われるんだよアリス」バニーは有栖の目を見て話していたが彼の瞳には言いしれぬ違和感があった。


「以上が君に関する話だよ聞きたい事はあるかな?」


バニーの問いに有栖は無言で返す。


「どうやら理解してくれたようだね君が聡明で良かったよ」バニーが空のカップに紅茶を注ぎ有栖にも同じ様に注いだ。


「それじゃあこの世界に君を連れてきた目的とこの世界を統べる7人の女王について話そうか」


バニーはそう言うと有栖のカップに砂糖とミルクを入れタンブラーでかき混ぜながら渡した。


第2劇 完


次回 第3劇に続く

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