第二章 「凍土の世界は春を迎える」第1劇 「おかえり」
光に包まれ目を閉じた後ゆっくりと目を開ける、するとそこは7つのドアが置かれていた見覚えのある広間だった。
「おかえり有栖、それと初めましてだねお嬢さん」
見るとシルクハットを被った長身の紳士バニーが居た。
「ただいま」「初めましてウサギさん」二人はそれぞれ挨拶しバニーに連れられ歩いて行った。
「まずはお疲れ様、君達は見事に女王を殺してくれた。これで我が主の敵討が一人消えた。」
バニーがティーポットにから紅茶を入れながら言った。
バニーに連れられダイニングルームに来ていた、彼は二人に労いの言葉を掛けながら紅茶とケーキを出してくれた。
「ありがとう、でも正直私一人じゃ倒せなかった隣に居るレイとジョーカーのアーサーと仲間達、大勢の協力があって初めて勝つ事ができたの」有栖に言われ隣で紅茶を飲むレイが得意げな顔になる。
「多くの人を味方に付ける力、それも君にしかできない事だよ有栖、だから君はもっと自分の功績を誇るべきだよ」バニーが優しく語り掛ける。それに便乗する様に隣で座るレイも激しく同意する。
「そうだよ有栖!貴方が居なかったら私も産まれていなかった、だから私にとっても有栖はなくてはならない存在なんだよ!」レイが目を輝かせながら有栖の手を取る。その姿を見た有栖は少し苦笑いをしながらも同意する。
「バニーに1つ聞きたいんだけど」
「なんだい?」
「前に言ったでしょ?貴方は一体誰に話しているのって?」有栖が最初に来た際バニーは有栖の名前を呼んでくれていたのだが、何処か違和感があった。それを直接指摘するとバニーも謝り初めて今目の前に居る有栖に対して語り掛けてくれた。
「そうだね確かに私はあの時有栖にではなくアリスに語り掛けて居た。」バニーも思い出したように肯定する。
「あの時は分からなかったけど、もしかしてあの時貴方は私の中のレイに語り掛けていたの?」有栖からの問いを聞きバニーが頷く。
「ああ、その通りだよまああの時は彼女の名前が分からなかったからね、君と同じ名前で呼ばせてもらっていたんだ」バニーがレイを見ながら答える。
「それなら聞きたいんだけど貴方はレイの正体を知っているの?」有栖が聞くとバニーが薄ら笑いを浮かべる。
「それは私の口から答える事は出来ないんだ、彼女が何者かは君自身が思い出さなければいけない」
「でも、私はレイとは初対面の筈じゃあ、、、」有栖が食い下がろうとした時だった。
「止めてよ!」さっきまで大人しく聞いていたレイが絶叫する。
「有栖、今は思い出せなくても良いでもあんまり私を悲しませないで?」俯いていてレイの表情が見えなかったが、彼女が悲しんでいる事だけは伝わって来た。何時も軽口を叩き子供の様に無邪気なレイが、初めて見せた他の感情を前にして、有栖はただ黙るしか出来なかった。
「ごめんねレイ、貴方の事も考えずに色々と踏み込んだ事を言っちゃって。」
「私かなり傷付いちゃったな〜」レイが何時もの軽口に戻る。
「何かお詫びをさせて?私にできる事ならするから」
有栖が言うとレイが顔をあげる。
「本当に!?約束だよ!」レイが無邪気な笑顔を向けながら言った。
「変な事は駄目だよ、それに私が出来る範囲だからね」
有栖が言うとレイは再び有栖の手を取る。
「それなら一緒にお風呂入ってよ!その後は一緒に寝よう!私も有栖も疲れてるし良いでしょ?」レイに言われ有栖はそんな事で良いならとOKを出す。
「そう言うと思って浴場と寝室の用意は出来ているよ、二人とも今はゆっくり休み給え」バニーの計らいに二人が礼を言うと直ぐ様レイに手を引かれ移動する。そんな二人をバニーが手を振りながら見送っていた。
「凄く広いね!」レイが子供の様にはしゃぐ、その姿を有栖が微笑ましい表情で見ていた。
「有栖早く来てよ!一緒に洗いっこしようよ♪」
二人は屋敷の中にある大浴場へと来ていた、レイが手招きしながら有栖を誘う。
「変な事しないでよ?」
「それは約束できないな〜」
レイが笑いながら言う。
鮮血の女王、レベッカ・フォン・スカーレット、彼女を殺した感触が今でも手に残っている。まるで果物を両断するかの如く少しの力を込めて彼女の身体をきり裂いた。そして彼女の胸から溢れ出した赤い宝石のに輝くな心臓を取り出し口に押し込まれてしまった。
「有栖気持ち良い?」
「え?うん力加減も絶妙で良いよ」
レイが有栖の髪を優しく解いてくれる。
「ありがとう、今度は私がしてあげるね」
有栖が言うとレイが嬉しそうに後ろを向く。
レイの身体を改めて見てみると細かい傷が身体中に出来ていた。それを見て有栖は無意識に華奢な背中を抱きしめていた。
「有栖!?どうしたの?」レイが突然の事に驚く中有栖が抱きしめたまま話す。
「私の為に沢山傷ついちゃって痛かったよね、、私がもっと強ければ貴女はこんなに傷付かなくて良かったのに。不甲斐なくてごめんね」有栖の頬から涙が伝う。
「そんな事を気にしてたの?最初にも言ったでしょ?私は有栖を護る為に生まれた化け物なの、だから貴女はそんな悲しい顔をしないで?じゃないと私が存在する意味がなくなっちゃうよ」
「レイは化け物なんかじゃないよ、私を助けてくれたヒーローだよ」
「ありがとう、その言葉で今は満足だよ」
レイは優しく微笑みながら有栖の手をそっと握っていた。
第1話完
第2話に続く。




