第10劇 「召し上がれ」
乾く、、、乾いていく、、もっと、もっと飲まなければ。暗い地下の広間の中央に無数の管が刺された玉座があった。そしてその玉座には干からびた人間の身体が横たわっていた。
突然広間全体に振動が走ると無数の管に透明な液体が流れ込む。そして玉座に流れ込むと干からびた身体を包み込むように大きな赤い薔薇の花の様な膜が多い被さる。
そして数分後膜が激しく脈打ち弾ける、中からは燃えるような紅い髪をたなびかせた女王レベッカ・フォン・スカーレットが現れた。
「御母様から引き継いだ力を使うためとはいえ、毎回こんな面倒なのは嫌ね」女王が指を鳴らすと辺りに散らばった、無数の死体から血が抜かれ彼女の身体に張り付く。そしてその血は真紅のドレスとして現れた。
彼女は能力を使用する際自らの生命エネルギーを消費する。そして能力を使用した反動で急激に老化する。それを補う為に若い人間の特にうら若き乙女の生命エネルギーを摂取する必要があった。その為女王は能力を行使した後は誰にも近付く事を禁じている地下の玉座で補充する必要があった。
「貴方達もありがとう私の愛しの眷属達」女王の周りには無数の侵入者の死体とそれを貪る皮膚の無い真っ赤な4足歩行の化け物誰がいた。眷属達には眼球が無く、口から腹部に掛けて大きな牙が生え揃った口の様な物があった。
女王が玉座を降りると眷属達も飼い主の元に集まる子犬の様に女王の元へと集まった。
「本当に醜いはね、でも貴方達は私の大事な子供達もう直ぐ私達の世界が出来るから待っててね」女王は聖母の様な深い愛情を持って眷属達を撫でた。眷属達も機嫌が良いのか低い唸り声を上げる。
だが静寂に包まれた広間に振動が走った。
「機械は作動していない、何があったの?」
すると地下の広間の扉が明け放たれる。「女王!敵襲です!敵が、、うわぁ!何だこの化け物は!」伝令兵が女王の言いつけを守らず広間へと入ってくる。そして広間に散らばった眷属達の食べカスと眷属の姿を見て顔が青ざめる。
「食べなさい、私の子供達」女王が言うと眷属達が一斉に伝令兵に飛びかかる。
「来るなあ!化け物!来るなぁぁぁぁ!」伝令兵の抵抗もむなしく生きたまま眷属達に食い荒らされた。広間には苦痛と恐怖に満ちた兵士の悲鳴が木霊していた。
「どうやらこの根城も限界の様ね、眷属達よ外に居る者達を殺しなさい!民衆もレジスタンスも兵士も関係ない、全てを喰らい尽くしなさい!」女王の号令を聞き一斉に眷属達が広間を飛び出し地上へと出る。そして広間まで聞こえる程の悲鳴が上がる。
「本当に心地の良い音色ね、そうだアーサーにもこの国の最後を見せてあげようかしらね、全てを失う様を見て自分がいかに役立たずの駄犬であるか分からせてやりましょう!」女王が邪悪な笑い声を上げながら言うと。
「そんな悪趣味な事は御免被るね」声のする方を見ると広間の天井の梁の上に3つの人影が見えた。
「あらあら、レディの話を盗み聞きするなんて本当にいけない王子様ね」レベッカがにこやかに見上げる。
「それは失礼、紳士としてあるまじき行いを謝罪しよう。」アーサーがそう言うと梁の上から飛び降り女王と相対する。それに続き有栖とレイも降りる。
「久しぶりねアーサー、私を放ったらかしにしてその後ろの小娘達と仲良くしてたの?」レベッカがアーサーの後ろの二人を値踏みしながら言う。
「彼女達は私の女神なんでね、今まで丁重におもてなししていたんだよ」アーサーが言うとレベッカの表情が険しくなる。
「冗談にしては笑えないわね、忘れたの?貴方は私の物でしょ?今なら許してあげるからまた私の元へ帰って来なさい。」レベッカが手を差し伸べながらアーサーを誘うその姿を見ていたレイが溜息をつきながら言った。
「この期に及んでまだアーサーに未練タラタラなの?本当に情けないね、お・ば・さ・ん♪」レイの煽りを受けレベッカの額に青筋が浮かび上がる。
「聞き間違いかしら?もう一度言ってくれる?」
「おばさんになると耳も悪くなるんだね、もう一度言ってあげるよ何時まで男に執着しているの?色ボケの年増おばさん♪」女王の顔が怒りに歪んでいく。
「ちょっとレイ!言い過ぎだよ!」有栖が必死に止める。
「何で?本当の事じゃない〜」
「世の中には言って良いことと悪い事があるの!それにあの人だって可哀想でしょ?どんなに頑張っても時の流れには逆らえないんだから」有栖の一言をトリガーにレベッカが激しく激昂する。
「さっきから聞いていれば言いたい放題言いやがって!私はまだ23よ!お前等見たいなケツの青いガキよりよっぽどいい女よ!」
レベッカの言葉を聞き二人が笑いだす。
「23?あれで?正直30代位かと思っていたよ!」
「ちょっとレイ目上の方に対して失礼でしょ?年長者はうやまなくちゃ」
その二人の嘲笑を見てアーサーが宥める。
「二人とも年頃の女の子がそんなはしたない言葉を言ってはいけないよ」
そしてアーサーのその姿を見た女王が静かになる。
「殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す」
「あらら、男に振られただけでメンヘラ化するなんて本当に気持ち悪いね笑」レイの一言を合図に床に散らばった血が一斉に針状になり飛びかかる。
3人が咄嗟に避け戦闘開始の合図とした。
「避けるなぁ!死ぬエエェェ!」レベッカが鬼形相で血を鋭い槍に変えて投げる。三人はそれを躱しながら女王の懐へと入る。
最初に辿り着いたのはアーサーだった、アーサーは無防備になった女王の腹部に斬りつける。だが剣がドレスに触れた直前金属を叩きつける音と共に弾かれる。
「そんななまくらじゃあ私のドレスは貫けないはよ」
そして剣が弾かれた事により体幹を崩されたアーサーの胸を蹴りつける。瞬間剣でガードしたがアーサーの身体が吹っ飛び壁に激突する。
「ガハ!、グゥ、流石に効くな」アーサーが吐血しながら言った。
「何処見てるの?おばさん♪」レベッカが振り向くと今度はレイが斬り掛かる。
「小娘が!貴様だけは絶対に殺す!」女王が自らのドレスの一部を剣に変え向かい討つ。剣とナイフが触れた瞬間レイのナイフが砕け散る、このままレイの身体を横薙ぎに切断する寸前。折れたナイフの柄を刃先に滑らせ横薙ぎを避けた、その勢いのまま女王の顔面を蹴り抜いた。
「クリティカルヒット♪」レイに蹴り飛ばされ女王が倒れる。だが直ぐに立ち上がると真後ろに折れた首を手で持つと、ボキ、ボキと音をたてながら首を戻す。
「少しはやるようねでもその足で動けるの?」
見るとレイの右足が握り潰されていた。女王の顔面を蹴り抜いた際女王に足首を握り潰されていたのだ。
「平気よ片足さえあれば十分よ」レイが片足でトン、トン、と跳ねながら再び斬り掛かる。
「努力は認めるはでもそんな足で避けれるかしら」
女王が剣を構え迎え討つ。
「死ね!小娘!」女王が剣を上段に構える。
「後は任せたよ有栖!」レイが女王の剣が振り降ろされる瞬間横に飛ぶ、そしてレイの後ろから有栖が腕輪を前に突きだしながら言った。
「拘束の腕輪よ魔の者を捕らえよ!」有栖の祝詞の後腕輪が外れ黒い空間の裂け目が現れる。
そして無数の亡者が飛び出し女王の身体に一斉に掴み掛かる。
「何よそれは!止めて!離して!私に触れるなぁ!」
身動きの取れないレベッカに有栖とレイが近付く。
「二人共!受け取れ!」アーサーがそんな二人に向かって自身の剣を投げ渡す。それをレイが受け取り有栖と一緒に握る。
「これで終わりね」
「有栖初めてでしょう?私がリードしてあげるね♡」
「止めて!殺さないで!嫌!嫌よ!まだ死にたく無い!」レベッカの必死の命乞いも虚しく。
二人は剣を上段に構えるとそのまま振り下ろした。
レベッカの身体が真っ二つに切れ絶命した。
「終わった、終わったのね」女王の亡骸の前で有栖がへたり込む、だが直ぐに我に返り女王の心臓を抜き出そうとする。
「慌てなくて良いよ有栖、これが欲しかったんでしょ?」見るとレイの手には赤い宝石の様に光輝く心臓があった。
「これが女王の心臓?」レイから手渡され心臓を見つめる。心臓は主を失ってもなお力強く脈打っていた。
「それじゃあ食べようよ有栖」レイに言われ有栖が強張る。
「本当に食べるの?こんな大きいのに?それにまだ脈打ってるし」有栖が躊躇うのを他所にレイが心臓を持って近付く。
「大丈夫、私も手伝ってあげるから」
「手伝うってどうゆう事?」有栖がへたり込んだまま仰け反る。
「私に任せてよ、それじゃあ召し上がれ!」
その言葉と共に有栖の身体を押し倒し口の中に心臓をねじ込む。
「ムグ!ムガガ!グゥ!」有栖は口の中の強烈な鉄の臭いと流れ込む血で吐きそうになっていた。
「有栖苦しい?でもごめんね私にはこうするしかできないんだ」レイが馬乗りになり有栖の口を塞ぐその間にも有栖が吐き出しそうになる。
「このまま吐き出したら勿体ないなぁ、そうだ!私にも分けてよ有栖!」レイはそう言うと有栖の口を塞いでいた手を離し代わりに自分の口で塞ぐ。
有栖の口に残っていた、血液と心臓の肉を舌で激しく舐め取りながらレイが吸い出す。
そしてお互い飲み込んでしまった後も二人は唇を重ねていた。
「プハァ、御馳走様有栖♡」
「あんたやっぱりイカれてるはね!」
有栖がレイをどかしながら言った。
「えぇ~でも全部食べた後も私を激しく求めてくれたじゃない、それに有栖も気持ち良かったでしょ?」
レイに言われながら有栖は頬を染めながら唇を触る。
それを見逃さ無かったレイがそっと有栖に近付き耳打ちする。
「有栖が良いならその先もしてあげるよ」
「馬鹿じゃないの?そんなことよりアーサーを助けないと」有栖がそう言いいながらアーサーの元へと走る。
「今はこれで我慢するけど、もう少したったらその先も私がね」レイは1人笑みを浮かべながら言った。
「アーサー!大丈夫?」壁に叩きつけられたアーサーに有栖が駆けつける。
「私の事は良い女王は死んだのか?」
「女王は死んだ、この世界は平和になったのよ!」
有栖がアーサーの手を握りながら言った。
「それは良かった、レジスタンスの皆は?生きているのか?」
「分からない、でも皆なら生きている筈よ」
広間の扉が開かれる、すると激しい戦闘で負傷しながらもレジスタンスの生き残りが入って来た。
「3人共無事か!」フランシスが真っ先に駆けつける。
「フランシス、皆は無事か?」アーサーがフランシスに問う。
「ロバーツとリオーネが戦死、他にも多くの仲間が死にました。ですが女王を殺した今貴方さえ居れば立て直せます!」フランシスが力強く答える。
「二人共本当にありがとう、君達のお陰でこの世界は救われた。」フランシスに肩を借りながらアーサーが礼を言う。
「私達も貴方達が居なければ勝てませんでした。これから大変だと思いますが。この世界を守って下さい」
「最初の出会い方は最悪だったけど貴方のお陰で強くなれたよ、ありがとう」二人はアーサーと握手を交わす。
「二人はこれからどうするんだ?」フランシスが二人に聞く。
「良ければ君達もこの国で共に暮らさないか?」
アーサーに言われたが二人は断る。
「ごめんなさい私達にはやらなくてはいけない事があるの」
「そうか、それならば君達の目的が成就する事を願おう。」
広間に再び振動が起きる震源を見ると女王の玉座から光が漏れ出していた。
「どうやらここでお別れの様ね、アーサー良い王様になってね」有栖がそう言うとアーサーが深々と礼をする。
「君達には本当に救われた。」
「それじゃあまたねアーサー」
二人は光の中へと入って行く。二人が入ると光が消え辺りには静寂が戻った。
「それでは皆の者勝利を祝して宴をあげよう!」アーサーが言うと一斉に歓喜の宴に包まれる。
これで女王の世界が崩壊した。この戦いは他の女王達にも伝わった事により、女王達への宣戦布告へとなった。
この先も有栖とレイの戦いは続く。
第1章「宣戦布告」完
次回幕間の物語




