第9劇 「決戦」
「貴方がJOKER?でも何であの時女王を庇ったの?」有栖は自らの手に現れた紋章とアーサーの顔を交互に見ながら言った。
「敵を欺くなら味方からと言うだろう?それにあの場でああしなければ君達は逃げる事が出来なかっただろう?」アーサーの簡単な説明を聞きレイも口を挟む。
「でも何で私達が貴方の味方だと分かっていたの?私達も貴方も初対面だったじゃない?」レイの質問を受けアーサーが話す。
「君達の行動は常に我々レジスタンスに監視されていたんだよ、もちろん君達が女王の調達係のアダムを殺す所もね」
「それに君に刻まれた印を見て確信したのさ、あの女を殺せる者が現れたってね」アーサーが有栖に近付き優しく手を取る。
「この紋章が何なのか知っているの?」有栖が聞くとアーサーが頷く。
「2年前女王がこの世界に現れたんだ、そして突如としてこの国を自分の物にすると言ったんだ。当時のカロッザ王国の王であり私の父、アイザック・ギグスは拒み女王と戦った。こちらの兵力は10万対する女王は一人誰もが勝利を確信したよ、だが女王の力は人智を遥かに超えていた10万の軍勢は一晩で滅ぼされ奴は父の首を掲げ高らかに凱旋したんだ。」アーサーが怒りと憎しみを込めた表情で言った。
「それを見た民衆達は直ぐに彼女を次の支配者として受け入れたよ、民衆達は暴徒と化し城に討ち入ると私の母と妹そして許嫁のロレインを殺した。私も殺される筈だったが女王の好みだったらしくてね彼女の所有物として生かされたんだ」アーサーの過去を聞き有栖の顔が曇る。
「そして約1年間私は女王の慰み者にされたよ、そしてとうとう限界が来て私は自ら命を絶とうとした、だがその時だったんだ彼に出会ったのは」アーサーの瞳に光が灯るのが見えた。
「彼は自らをバニーと名乗りある予言をした、1年後この世界に救世主が現れると、その者は別の世界から現れ女王を殺すと、そしてその者の手には紋章が刻まれていると聞いたんだ。私はその予言を信じ今日まで生きてきた。そして彼の言った通り手に紋章のある君が現れたんだ。」一連の話を聞き有栖がゆっくりと紋章を見る。紋章はハッキリと手の甲に刻まれているまるで最初からあったかのように馴染んでいた。
「貴方もバニーに救われたのね」有栖はシルクハットを被った長身の紳士を思い出しながら言った。
「レイ、彼は信用できるよだから広場での事は水に流しましょう」有栖がナイフを構えて前に立つレイの肩にそっと手を置きながら言った。
「有栖がいいんなら私も従うよ、でももし有栖を傷付ける様ならその時は容赦しないからね」レイがナイフを腰のケースに入れるのを見ながらアーサーも「ああ、騎士として君達に協力すると誓おう」そして差し伸べた手を握り二人は握手を交わし協力関係を結んだ。
「女王は今紅の城に籠っている、理由は力を使いすぎた事による疲労回復の為だ。」アーサーを出迎えた後レジスタンスの幹部達に混ざり、二人は司令室へと会議に参加していた。
「それなら直ぐに攻撃するべきだろう!」
「そうよ司令官が戻った今味方の士気も上がっている、絶好の好機よ!」さっきまで意見が対立していたロバーツとリオーネが同意見を言う。だがアーサーはそんな二人の意見を静止する様に手を前に出す。
「君達の意見は分かるだが女王が籠もっている紅の城は今や要塞になっている。私が女王の傍に居た2年間で一番危険な時期は女王の食事の時間だった。彼女は一人地下に篭り各地から集めた若い女の生気を摂取する。その間城には女王の創り出した血の眷属と呼ばれる化け物達が彷徨いている。」アーサーの説明を受け二人が黙る。
「それなら女王が万全になったタイミングで無いと戦えないの?」静まり変える中レイが意見を述べる。
「いや、女王は食事を終えた直後に血の眷属達を一斉に解除する、しかもまだ完全には能力を扱え無い状態になるんだ。討つとしたらそのタイミングで突入する。」
アーサーが机に広げられた地図にナイフを突き立てる。
「紅の城には隠し通路があるそこから私と君達で女王の元へと行く、そして他の皆には表から衛兵や血の眷属の残りを引き付けてもらいたい。」アーサーの作戦を聞き皆静まり変える、だが参謀のフランシスが直ぐに立ち上がり机にナイフを突き立てる。
「私は司令官に賛成する女王を討てるならこの命を捧げよう。」その言葉を号令としたかの様に皆も立ち上がり机にナイフを突き立てる。「元より覚悟はできている」
「私もこの国の為に死ねるなら本望よ」ロバーツとリオーネも口々に言う。
「作戦決行は3週間後の早朝だ、皆悔いの無いように準備してくれ、それでは解散!」アーサーの号令が掛かり全員が司令室を出るなか有栖とレイはアーサーに呼び止められる。
「二人には3週間の間戦闘訓練を受けてもらいたい」
「二人?それって有栖も受けてもらうって事なの?」レイが有栖の手を握りながら言う。
「もちろんだ、私から見て有栖君は全くの素人レイ君はある程度動ける様だが動きが荒削りで安定感が無い。だから私が直々に訓練をしようと思う。」アーサーの提案を聞きレイが言う。
「有栖は私が守るから良いのそれに私は貴方をまだ完全には信用していないの」レイが有栖を抱き寄せながら言う。
「レイ、貴方の気持ちは嬉しいけど私弱いままなのは嫌なの、だから私はアーサーの提案を受けるよ」
有栖がそう言うとレイは納得していない表情で「分かった、でも本当に危ない様だったら辞めさせるからね」
二人のやり取りを黙って見ていたアーサーも有栖の言葉を聞き頷く。
「それじゃあたった3週間しか無いがよろしく頼むよ二人共」三人は司令室を出てレジスタンスの訓練場へと向かった。
3週間後、、「最近レジスタンスの攻撃が止んできたな」
紅の城に続く門の前で赤い鎧に身を包んだ騎士達が談笑する。「毎日いい運動になってたんだがな、首を跳ねる瞬間の恐怖に満ちた顔や腹を裂かれて必死に自分の臓物を戻そうとして絶命する姿。平時には見れないレアな光景だったんだがな」
「お前相変わらずイカれた野郎だよな」騎士が悪態をついた瞬間、隣に居た騎士が炎に包まれた。
「グァァァ!あつぃ!アチィよ!」他の騎士達が火を消そうと集まった所に火炎瓶が振り注いだ。
門の前は火の海となり残りの騎士達が消火活動をしようと出てくる。そしてその最中大勢の民衆達が流れ込んできた。
「何だあれは!敵か!レジスタンスの連中か!」それぞれ手に剣や槍を携えたレジスタンス達が一斉に斬り掛かる。
「進め!我らが道を切り開くのだ!」参謀のフランシスが破城槌を用意しながら指示を出す。そして門の前まで持って行くと紅の城の門を破壊する。
「ここを通らせるな!女王様を御守りするんだ!」門が開いたのと同時にレジスタンスと騎士達が衝突する。
「突入は成功した様だ、私達も行こう!」城の外壁に空いていた隠し通路の入り口でアーサーと有栖、レイが居た。
「有栖、大丈夫?」
レイが震えが止まらない有栖の手を握りながら言った。
「本当は怖くて堪らないよ、でも私達がやらないと女王を殺せるのは私達だけなんだから。それにレイが私の事守ってくれるんでしょ?」有栖に言われレイが頬を染めながら返す。
「当然だよ有栖だけは何が何でも守ってあげるから、それじゃあ行こうよ女王を殺しに」
「うん、行こう」
二人は手を離すとアーサーと共に暗い通路へと入って言った。
第9劇完 次回第1章「宣戦布告」完




