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序章 第1劇 「クレイジー•ハッピー」

「有栖、起きて、有栖?」私は聞き馴染みのある声を聞き目を覚ました。


「お母さん?あれ?私寝ちゃってたの?」目を覚ますと私は家のリビングのソファの上に居た。


「いつも言ってるでしょう?寝るなら部屋で寝なさいって」私は台所で料理をする母に注意された。


「ごめんなさい、それより今日はお父さんの誕生日だよね?」私は台所に行き母に訪ねた。


「そうよ、だから今日は張り切ってお父さんの好物を作ってるのよ」母は嬉しそうに私に言った。


「お父さん早く帰ってこないかな、私プレゼント用意したんだよ!」私が言うと母はニッコリ笑いながら私もよと返す、二人でそんな話をしていると。


「ただいま、母さん、有栖今日は何の日か覚えているか?」父が帰って来るなり私と母にわざとらしく聞いてくる。


「おかえりなさい!そして誕生日おめでとう!」私と母は父に笑顔で言った。


父は私達からのお祝いの言葉を聞くと照れくさそうにしていた。


すると突然玄関のチャイムが鳴った。


「誰だ?こんな時間に」父がそう言いながら玄関に向かう。私は妙な胸騒ぎがして父を止めた。


「待って!お父さん開けないで!」その言葉が届くことは無く父が玄関を開ける、そして父の腹部に刃物が突き立てられ縦に切り上げられる。


その瞬間父の身体から噴水の様に紅い液体が噴き出す、私は父を刺した犯人の顔を見て絶句した。


それは邪悪な笑みを浮かべる私の姿だったからだ。


「違う!違う!違う!違う!違う!違う!違う!違う!」ある病院の一室で拘束具を着せられ藻搔く少女が居た。


「またあの子か」病室の外で複数人の職員が集まっていた。


「彼女は極度の興奮状態だ、拘束具を外す時は3人がかりで行う」一人の職員がそう言うと他の数名の職員も無言で頷く。


そして病室の扉が開かれ数人がかりで少女を押さえつける。


「離して!私はやってない!お父さんを殺してない!お母さんも殺してなんかない!」


「今楽にしてあげるからな」職員が3人がかりで拘束具を外すと残りの職員が鎮静剤を注射器で投与する、


やがて少女は落ち着き力無くその場に崩れ落ちた。


「これで今週3度目だ、この子には同情するが流石に限度があるぜ」少女をベッドに寝かせた後職員達は扉に厳重に鍵を掛けて歩いていく。


職員が歩く廊下には少女が居た部屋と同じ様な部屋が並んでおり中には、壁に向かって話すものや、絶え間なくこちらに笑顔を向ける者、そして自分の爪を1枚ずつ剥がしながら絶叫する者など異常な人間達が集まっていた。


「こんなキチガイどもの相手にもうんざりしてますよ、あの少女といい何なんですかここは?」若い職員が中年の職員に聞く。


「ここはな犯罪を犯したが責任能力が無いと判決が出た者がくる病院だよ、ほら見てみろあの女は育児ノイローゼから生後5ヶ月の赤ん坊を殺して調理して自分の旦那に食わせたらしいぜ、旦那は気付かず食って今まで食った肉の中で最高だって絶賛したらしい」


中年の職員が言うと若い職員が嘔吐する。


「止めてくださいよ!昼に食ったハンバーグが全部出ちまいましたよ!暫く肉は食いたく無くなりました!」若い職員が悪態を点く。


「すまねえなお詫びに今日は俺の奢りでステーキでも食うか?」その言葉に更に吐き気を催す。


「その話は置いといてですねさっきの少女は何をやったんですか?」二人のやり取りを静観していたもう一人の職員が質問する。


「あの子か、あの子がやったのはな」中年の職員は眉間に皺を寄せながら答える。


「親殺しだよ、両親二人共刃物で惨殺だしかもイカれてるのがあの子自分で切り刻んでおきながら泣きながら通報したらしいぜ」その説明を最後に3人は隔離病棟を後にした。


目が覚めると何時もの灰色の天井が見えていた視線をずらし辺りを確認する、部屋の内装は灰色1色のコンクリート造りになっておりとても暗く静かな空間だった。


「私、またあの夢を見てそれで」意識がはっきりとしてきており自分の状況を整理する。暴れた事により薬を打たれてそのまま眠りについており今は小さな小窓を見るに夜だと理解した。


「違う、私はやってない、殺ってないの、」部屋の中で一人呟いているとある声が聴こえた。


「アリス、アリス、君に会いたいんだ来てくれアリス」


「え、誰?誰なの?」聞き覚えの無い声が頭の中で反響する。


「ああ、聞こえているんだねアリスさあ私の元へと来てくれ」声はハッキリと聞こえ脳内で何度も再生される。


「でも私この部屋から出られないの」有栖が言うと再び声が聞こえる。


「大丈夫だよアリスもう間もなく時間だから」その声の後に病棟内に警報が鳴り響く。


「緊急事態、緊急事態です!現在病棟内で暴動が起きています!職員は速やかに鎮圧に動いて下さい!」


いきなりのアナウンスに有栖は驚いた。そして直後に全病棟の部屋が解放される。


「さあ、アリス準備は整った屋上で待っているよ」


その声を最後に脳内の反響が止んだ、有栖は恐る恐る部屋のドアを開けた。辺りは血が飛び散っており何人かの患者が血溜まりに倒れており、銃を持った職員達が一人一人撃ち殺していた。


「おい、あの子は今朝の」若い職員が有栖に気付く。


手には銃が握られており返り血で服が真っ赤になっていた。


「可哀想だが仕方ない全員処分しろとの通達だ」


「そうかなら仕方ないな」


職員は自然に有栖に銃口を向け発砲した。


「痛い!」有栖は咄嗟に身体を隠したが遅く、弾丸が肩を貫いた。余りの激痛に身を捩っていると。


「可哀想だけど君も人殺し何だし仕方ないよな?」


さっきの職員が有栖の目の前に立ち銃口を向ける。


ここで死ぬのね、有栖が死を覚悟して目を閉じた瞬間。


「あの子が悪いのよ毎晩毎晩泣き喚いて、私の時間を返せよ!」突然ボサボサの長い長髪を振り乱した女が職員の背後から現れ飛びかかる。


「うわあ!何だよこのキチガイが!離せよ!」職員が必死に抵抗するが女は止まらない。


「また泣き喚いているのね!そんな悪い子にはお仕置きよ!」女は職員を押し倒し馬乗りになると職員の喉笛に噛みついた。


「ぐぁぁ!離せよ、、、グボ!ゴフ!」職員の抵抗虚しく女は職員の喉を食い千切るとそのまま貪り食う。


その光景に唖然としていながらも有栖は必死に立ち上がり屋上を目指し階段を上がった。


屋上に着くと生暖かい空気が流れてきた、久しぶりの外の景色に有栖は不思議と安心していた。


「綺麗だろ?ここからの眺めは最高なんだよ」


屋上に置かれたベンチに腰掛ける人影を見て有栖は警戒しつつ話し掛ける。


「貴方が私を呼んだの?」ベンチに座る人物が立ち上がる。


「そうだよ、初めましてアリス私の名はエブラ•フォン•バーニー私の事は親しみを込めてバニーと呼んでくれるとありがたい」紺のスーツにシルクハットを被った長身の青年が言った。


「貴方は誰?何で私を呼んだの?」有栖が訝しげに聞くとバニーが答える。


「いきなりですまないねレディをこんな時間に呼び出すなんてジェントルマンとしてあるまじき行為だ」


「気分を害したらすまない私は君を迎えに来たんだよ」バニーの返答にますます困惑する。


「私を迎えに?なんで?何処に連れて行くの?」


「君が怖がるのも無理は無い、だが事態は今も悪化しているんだよ」バニーは懐から金色の懐中時計を取り出す。


「簡潔に話そう君にはこの世界を捨てて私と同じ世界に来て欲しいんだよ」


「私が貴方の世界に?何でなの?それに今の世界を捨てるって?」


バニーの突拍子も無い申し入れにますます困惑する。


「理解が追いつかないのは分かるよ、簡単に説明すると今私の世界では7人の女王によって支配されている。しかしその女王達の元では私達弱き立場の者たちは破滅を迎えてしまう、それを阻止する為に別の世界から女王に対抗出来る者を迎える事にしたんだよ」


「それが私なの?」バニーの説明を受け有栖は思わず笑う。


「こんな状況でよくそんな妄想話ができたはね貴方作家にでもなったら?」有栖の嘲笑を受けてもバニーの表情は変わらない。


「今は信じれないのも無理は無い、だが君は私ときてもらうよ」バニーが真剣な顔で私の手を掴む。


「止めて、離して!」バニーの手を振りほどこうとした瞬間有栖の身体は宙を舞っていた。


「それではアリス向こうの世界で会おう」


「え?」最後に有栖が見たのは屋上のフェンス越しに逆さまの状態から手を振るバニーの姿だった。


「やっと鎮圧出来たかまあこれでキチガイの相手は終わりか、どうだ一杯飲みにでも、、」グチャ!


2018年東京文京区にある精神病棟で暴動が発生、死傷者多数の中で唯一自殺認定された人物が居た。


その人物の名は灰崎有栖(はいざきありす)3年前当時15歳の誕生日の日に突然母灰崎千里(はいざきちさと)に刃物で斬りかかり殺害、遺体には57箇所に及ぶ刺突痕があった。そして2時間後帰宅した父灰崎明夫(はいざきあきお)を玄関で出迎え刺突、意識がある被害者を馬乗りになりながら滅多刺し主に顔の損壊が酷く遺族には見せられなかった。


被疑者は両親を殺害後狂乱し自らの手で通報駆けつけた警察官により取り押さえられ逮捕後の裁判では当時15歳と言う年齢の考慮と、事件後の被疑者の言動に異常が見られ判決は責任能力の喪失と見なされ以降彼女は精神病棟に収監されていた。 


そして現在2018年6月23日午後11時31分


灰崎有栖の死亡が確認された、外傷は肩に銃創が一つある事から鎮圧の際に発砲され錯乱状態に陥り自ら屋上から身を投げたものと判断する。また患者の遺体は損壊が激しく頭部が潰れ四肢も散らばり原形を留めていないよって患者の遺体はとう病院で処理する。


以上 患者番号2645番 灰崎有栖の死亡報告書とする。


第1劇 完 


次回 第2劇に続く。






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