完結編
読んでくれた皆様・・・
こんなオチでごめんなさい
完結編
正一は突然車を止めて降りた。そして大声で怒
鳴った。
「なあ。出て来いよ! この異次元の主よ!」
恵子は固唾を飲んで正一を見守った。
すると・・・その時だ。ずっと闇に閉ざされて
いた世界は少しづつ真っ白な世界へと変わってい
った。建物も道路もすべて消えて真っ白な世界へ
と・・・
恵子はもう何が何だかわからなかった。
ただ正一は確信した表情だ。彼には今何が起きて
いるか、わかっているようだった。
正一が言った。
「やっと本当の世界が見えてきたよ。これこそが
事実だよ」
恵子も車から降りて周囲を見渡した。その時。真
っ白な世界に 「何か」 が現れた。
恵子は思わず叫びそうになるが、正一がいち早
く怒鳴る。
「おまえがこの 異次元の主か?」
黒いマスクを被り手に斧を持った「何か」は肯い
た・・・
「じゃあ、このシナリオもお前が書いたものか?」
「何か」は肯いた。
突然・・・「何か」は黒いマスクを剥がしその素顔
をさらした。30代後半のごく普通の男だった。
「私はこの世界を書いた者です。ここは小説の中の
世界です」
正一は少し溜息をついて言った。
「僕たちは主人公って訳だ?この小説の中でしか生
きていけない」
恵子は両手で口を押さえた。あまりの驚きに声が出
ない。
正一が言った。
「お前名前は?」
30代後半の男は答えた。
「ペンネームは苺大福って言います。売れない作家
です。まさかこうして自分の作ったキャラクターと
喋るなんて思いもしなかったですよ」
苺大福は語りはじめた
「今、帰り道・・・というネット小説を書いている
真っ最中でしてね。書き手のわたし自身が自らこの
世界に入りこんで人々を虐殺していたっていうオチ
です」
恵子は言った。
「じゃあ私たちは最後にどういう結末になるの?」
苺大福は言った。
「正直言うとラストはうやむやにして、永遠にこの
異次元の世界を彷徨ってもらおうかと思っていた
のですが・・・どういうラストがいいですか?」
正一が言った。
「私も作家という肩書でこの小説に登場しているか
ら言わせてもらうが・・お前これネット小説って言
ったな? 読者がネットに感想書いたり出来るんじゃ
ないのか? このオチじゃ感想欄が炎上するぞ!」
苺大福は悲しい表情で言った
「いつも炎上してますから!この小説の最大の山場の
古びた教会での殺戮シーンだって 字下げしてません
。って冷静に突っ込まれているんだぞお(涙)」
苺大福は斧を振り回した。
恵子が怒ったように言った。
「それより! わたしたちは ど・う・な・る・ん・
で・す・かあああ!?」
「わかりました。皆さんにはハッピーエンドを用意
させていただきます。では矢野正一さん、久保恵子さん
お疲れ様でした。またいつかお会いしましょう」
苺大福はそう言い残すと消えていなくなった。真っ白な
世界はすこしづつ「恵子と正一」のいた町に戻っていっ
た。綺麗な青い空そして雲、小鳥のさえずりが聞こえる。
恵子と正一は晴れ晴れした気分で自宅へ帰って行った。
それから1年後・・・
矢野正一はこの体験談をもとに書いた小説「帰り道・・・」
を出版しホラー作家として有名人に。一方、久保恵子は一流
企業の御曹司と結婚して毎日ホスト通いする贅沢三昧の日
々を送っていた・・・
時を同じくして・・・小説の中の闇の世界の片隅で・・・
「私達・・・忘れられてるのかな?」
少女が言った。
小説序盤に出てきた全身血まみれのオーバーオールを着た
少女と小説後半に出てきた車の後部座席に乗せられた中年の
おばさんの姿があった・・・
完
おっしゃ!感想欄は大炎上じゃ!