第五章
第五章から凄惨なものになっていきます。心臓の
弱い方は読まないで下さい。
第五章
正一は国道から脇道にそれた。細い一方通行の
道をひたすら真っ直ぐ走った。
ゴーーーーーン
ゴーーーーーン
ゴーーーーーン
三回鳴ってはしばらく間が空き、そしてまた三
回鳴ってはしばらく間が空く。どうも規則性があ
るように恵子には思えた。正一は時折、窓の外か
ら聞こえる鐘の音に耳を傾け、方向を確認しなが
ら運転していた。
正一は言った。
「音がどんどん近くなってる」
たしかにさっきよりもかなり音が大きく聞こえて
くる。もうすぐ近くのようだ。
すると目の前に大きい「教会」が見えた。音は
そこから聞こえてくる。いかにもって感じの古び
た教会だ。本当に来て良かったのかどうか恵子は
迷いはじめていた・・・
(なんか罠っぽい)
恵子は正一に尋ねた。
「矢野さん。あの教会の中に入るつもりですか?」
「ああ。はっきり言ってどこにいても危険だと思う
し、相手が悪魔なら教会には近寄って来ないはずだ
よ。たぶんここは安全じゃないかな」
正一は教会の前に車を駐車して降りた。恵子も正一
の後を追うように降りた。ふたりは教会の「門」を
潜りドアをノックした。ドアは少し開き中から人の
顔が覗いた。
「あなた達は?」
「私は矢野正一と言います。突然この 異次元 の
世界に迷いこんだ者です。あとこちらの女性も私と
同じです」
恵子は軽く礼をしてから言った。
「久保恵子といいます」
ドアは開かれた。
中にいた若い男が声を掛けてきた。
「すみません。まず 人間 かどうか確かめたくて
、僕は吉田修也と言います。あ、どうぞどうぞ、中
へ入ってください」
恵子と正一は中へ入れてもらう事が出来た。中は広
く正面には大きいパイプオルガンが見える。その後
ろには立派なステンドグラスがある。他に中年の女
性が一人いて床にうずくまっている。
正一は修也に聞いた。
「あの人は? あの女性はどうされたんですか?」
修也は少し困った様な表情で話し始めた。
「いや・・・実は僕もあまり知らないんです。鐘の
音を聞いてここへ来る途中に、たまたま出会ったん
ですが何も話さないのです」
正一は中年の女性に話しかけた。
「大丈夫ですか? どこか具合でも悪いのですか?」
すると中年の女性は聞こえるぎりぎりの小さな声で
何か言っている。
「奴が・・・来る・・・・奴が・・・来る・・・ここ
にいては駄目。早く逃げなければ・・・」
コンコン・・・
その時ドアをノックする音が聞こえた。
修也はドアを開けようとした・・・
「開けたら駄目だああああああああああああああ」
中年の女性が大きい声を出した!!
少し開いたドアから・・・中を覗き込む 黒いマスク
を被った 「何か」 がいた!
正一も叫んだ!
「早く閉めるんだ!」
しかし間に合わなかった。「何か」 は大きい斧を天
に翳し一気に修也に振り下ろした!
修也のドアにかかった右手が床に落ちた・・・
「ぎゃあああああああああ」
室内の白い壁に修也の切断された右腕から噴き出た血
が飛び散り真っ赤に染まっていった。
「何か」はドアを開け、のたうち回る修也に近づいた。
そして次の瞬間・・・
シューーーーーーーー
修也の頭は床を転がり首から大量の血が噴き出した。
それでも胴体部分はしばらく歩き続け、恵子の目の
前で倒れた。
そして噴き出した血が恵子の全身にかかった。
正一は勢いをつけて走り出し全身で 「何か」に体当
たりした。斧は床に落ち「何か」は後ろに転倒した。
正一は叫んだ!
「今だ!逃げるんだ!」
恵子と中年の女性は走ってドアから外へ飛び出してい
った。正一は床に落ちている斧を拾い「何か」の頭上
めがけて振り下ろした。マスクの上から斧は突き刺さ
り脳が飛び散った。
正一も恵子の後を追うように外へ飛び出した・・・
第六章へ続く・・・
ほら・・・そこの貴方。うしろに 「何か」 がいますよ・・・