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第三章

女は中年の男に助けられるが・・・

   第三章


 女は車の助手席で小さく震えていた。男はハンドル

強く握りしめ相変わらず猛スピードで車を飛ばしてい

た。女は自分の置かれた状況が把握出来ていない。


「君はどうしてここにいる?」

男が声をかけてきた。

「わかりません。気がついたら・・・」

「僕もだ。友人とスキーに行っていてね。その帰り道

に突然黒いマスクを被った 何か に襲われたんだ」

「その友人の方は?」

「その 何か に殺されたよ。体中にナイフのような

物で何度も何度も刺されてね。その 何か は突然道

の真ん中に現れて友人は急ブレーキを踏んだんだ。す

ると車からひきずり出され・・・一瞬の出来事だった

よ。運転席に移って猛スピードで逃げてきたんだ」

「わたしも見ました。その黒いマスクの 何か を後

コインランドリーの乾燥機に首だけの遺体も」

「たぶんその 何か が殺したに違いない」

しばらく無言が続いた。男は車のラジオをいじってい

るが何も聞こえてこない。

「ずっとだよ。ラジオから何も聞こえてこない。ナビ

も駄目だ。映らないんだ。携帯電話で警察に助けを求

めようとしたが電波が悪くて繋がらない」

 

 女はさっきからずっと思っている事があった。しか

し言えずにいた。言ったらもう現実のものとなってし

まう恐怖に怯えていた。それを裏切る様に男は「それ」

を言った。


「たぶんだが・・ここは異次元かあの世のどちらかだ

と僕は思っている」


女はやはりといった表情で愕然とした。


そして男は思いだしたかのように話しかけてきた。

「あっ! そういえばまだお互い自己紹介してなかっ

たね? 僕は矢野正一って言います。 仕事は作家を

してましてね、SFやらホラーやらくだらないものば

かり書いていますけどね。君は?」


「久保恵子です。都内でOLを・・・しています」


こんなところで自己紹介をしている気分ではなかった

が聞かれて渋々、恵子は答えた。

「これで男とか女とか以外の事が少しわかった訳だ」

「はい? 何か言いました?」

「いや。何でもないよ。それよりこの世界から逃げな

ければ、いずれ殺される」

 恵子は勇気を振り絞って正一と名乗る男に聞いた


「何故? 私たちなんですか? どうしてここへ、

この世界に引きずり込まれたんでしょうか?」

正一は少し得意げな表情を浮かべながら語り始めた。


「セオリーだよ。これがもし小説や映画なら必ず法則

がある。例えばここが本当に 異次元 だとしよう。

ならばここへ来た僕と君には必ずなんらかの共通点が

ないとおかしい。ここへ来た理由はまだわからないけ

どその謎が解ければここを出る糸口にはなるはずだ」


(この人少しふざけてるの? 小説とか映画とかって

何言ってるのかわからない。これは現実に今ここで起

きてるのに・・・)

恵子は男の態度に少し苛立ちを感じていた。そんな恵

子の態度に気がつく事もなく正一は話を続けた。


「これはたぶん 異次元 だ。この場合の結末を教え

てあげようか? だいたい 夢オチ ってパターンが

多いと思う。もしくは現実であるとすれば、主人公だ

け生き残り現実世界に戻るハッピーエンド、あと考え

られるのは全員ここで死ぬか、ひょっとしたらもう実

は全員死んでいて、ここは あの世 だったなんてバ

ッドエンディングもあるかもしれない」


恵子は少し興奮して言った


「もうやめてください!そんな話聞きたくありません!」

男はハッと我に返った

「ごめんよ。怖がらせてしまって。つい作家としての

悪い癖が出てしまった。本当にすまなかった」


恵子はその時ふと車のメーター類の横にある備え付け

の時計を見た。

(am1:04)

(おかしい・・・)


恵子は携帯電話の待ち受け画面に表示されている時

刻を見た。


(am1:04)


(私が駅を降りた時刻から時間が止まっている)


   第四章へ続く・・・


この「異様な世界」から逃げる事は出来るのか・・・


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