21 カタログ
現在時刻は午前八時。
朝食を食べ終えた僕たちは、リビングで、それぞれ思い思いに寛いでいた。
ひーちゃんはすでにパジャマを脱ぎ、昨日洗濯して乾かした服に着替えて、朝の身支度をすっかり整えている。
食後の後片付けも、昨日と同じように、ひーちゃんが進んで済ませてくれた。
現在僕はソファに寝転がり、スマホで動画を眺め、一方のひーちゃんは、昨日プレゼントしたカタログギフトを膝に広げ、ページをめくっていた。
「何か、欲しいものあった?」
僕が声をかけると、ひーちゃんはページを見ながら首を傾げる。
「んー、まだ『これ!』っていうのはないかなー。もし最新のゲーム機が載ってたら即決なんだけど……さすがに、それは絶対ないよね」
「はは、それは欲張りすぎだよ」
僕がプレゼントしたカタログギフトは新社会人にしてはふんぱつした一万円のものであり、ラインナップもかなり充実している。
しかし、それでもおよそ10万はする最新ゲーム機、それもまだ抽選段階の発売もされていないやつがこのカタログギフトになってあるはずが無かった。
「まぁ順当に考えたらゲームソフトかな? 幾つか面白そうなのはあるんだよね。あー、でも結局買っても遊ぶ時間ないしなー」
そう言って、ひーちゃんは「んー、んー」と悩ましげに唸りながら、ページをめくっていく。
「今すぐ決める必要はないんじゃない? “これ欲しい!”って思うタイミングが来たら、そのときに選べばいいし」
「……たしかに。それもそうだよね。無理に決めなくてもいいのかなー」
ひーちゃんは納得した様子で頷き、一応最後にと、カタログをもう一ページめくった──が、そこでふいに動きが止まる。
「ん? ひーちゃん?」
どうしたのかと、僕は問いかける。
「──私、頼むもの決まった」
「え、決まったの? さっきまで悩んでたのに?」
「うん。今、ビビッときたの」
「何を選んだの?」
気になって、僕はひーちゃんの持つカタログを覗き込む。
「これ」
ひーちゃんは、そう言って指でその商品を示した。
「……へー。いいんじゃない?」
「でしょ? 前からこういうの欲しいって思ってたんだ。それに、これなら──恋人からのプレゼントって感じがするでしょ?」
「……恋人っぽくない物をあげてしまって、すみませんでした」
僕がそう言って謝ると、ひーちゃんはクスクスと笑う。
「冗談だってば。ロマンチックさはさておき、このカタログもある意味“正解のプレゼント”だったから。おかげで、いいの見つけられたし」
「そう言ってもらえるなら、ほっとするよ」
「じゃあ早速、注文しちゃおうかな。今どきのカタログギフトは、ハガキじゃなくてスマホで完結するから楽だね」
そう言いながら、ひーちゃんは器用にスマホを操作していく。
「配送先を……〇〇ホテルにして……注文っと」
購入ボタンをタップし、注文が確定される。
これで遅くとも四日以内には、ひーちゃんが滞在しているホテルに商品が届くだろう。
ひーちゃんは、あと一週間ほどは日本に滞在するらしい。
タイミング的にも問題ないはずだ。
「うん。たけくんのおかげで、いい物が手に入ったよ。ありがとうね」
「どういたしまして。ひーちゃんが気に入ってくれて、僕も嬉しいよ」
ひーちゃんは満足げに笑いながら、カタログをパタンと閉じた。
「よし。プレゼントも無事決まったし──ねぇ、たけくん。残りの時間、一緒にゲームしない?」
「もちろん。大賛成!」
そうして僕たちは、そこから約一時間、子どものようにはしゃぎながらゲームに没頭することになるのだった。
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