小鳥遊美奈とのCMの放送 2
〜大塚太郎視点〜
私、大塚太郎は大⚪︎製薬の社長を務めている。
先日、我が社は製造•販売しているポカリ⚪︎エットの新作CMを作成し、本日12時頃、そのCMをTVのコマーシャルよりも先行してSNSにアップした。
そのCMは今、最も注目を集めていると言っても過言ではない夏目凛さんと、『のぞみ坂47』で不動のセンターを獲得している小鳥遊美奈さんを起用し、恋愛ドラマのようなストーリーで撮影した。
そしてSNSにアップしてから1時間後。
「すごいなぁ。1時間で100万回も再生されちゃったよ」
あり得ない視聴回数を叩き出していた。
「1分程度という短いCMだけど1時間で100万再生は普通あり得ないよね」
今もなお増え続ける視聴回数に私は驚きを隠せない。
社長という立場からアップする前にCMを確認し、修正する必要のないくらい素晴らしいCMであることは理解していた。
だが1時間で100万回も再生されるとは思わなかった。
「ウチのCMは基本的に20歳未満の人を起用し、学生をイメージしたCMを作成している」
そのため、ポカリ⚪︎エットのCMに出演する新人女優やモデルはCMにより注目され、後に有名人となる事が多く、『人気芸能人の登竜門』と呼ばれているくらいだ。
ちなみに今回のCMのキャッチコピーは【今年の夏はポ⚪︎リを飲んで恋しよ?】だ。
「今回は人選が素晴らしかったようだね。2人とも素晴らしい演技だよ」
夏目凛といえば昔、夏目レンという名で活躍され、小学5年生の頃には日本アカデミー賞で優秀主演男優賞を獲得している。
引退後は芸能界に一切携わってないと聞いていたためブランクはあると思ったが、ブランクなど感じさせない素晴らしい演技だった。
それに小鳥遊美奈の演技も完璧で、夏目凛に恋をしている後輩マネージャーを完璧に演じきっていた。
「このCMを見たら2人の恋模様を何度も見たくなるよね」
1分程度のCMということが功を奏したのか、何度も何度も視聴したくなる。
実際、私も2人の演技に魅了され、10回以上は再生していた。
「どうやら何度も再生してるのは私だけではないようだね」
そう呟いて私はSNSのコメント欄に目を向ける。
そこには…
〈ポ⚪︎リのCM、何度も視聴しちゃった!〉
〈めっちゃニヤニヤしちゃうよ!てか、2人の恋模様が気になりすぎるっ!デート回とかないの!?〉
〈リン様がカッコ良すぎっ!汗を拭うシーンとかイケメンすぎるわっ!〉
〈バスケするリン様がカッコよっ!しかも、リン様の最後の言葉っ!あれを言われたら誰だって好きになっちゃうよ!〉
〈え、美奈ちゃんがめっちゃ可愛いんだけど。可愛いすぎて12時頃からずっとCMを視聴してたわ〉
〈美奈ちゃんが可愛すぎて天使にしか見えん〉
〈この動画の続編を希望するっ!是非とも作ってくれ!〉
等々、CMを絶賛するコメントが多々見られた。
「さすが森野監督。2人の演技も完璧だが、ストーリー構成やカメラワーク、編集等々、完璧なCMに仕上げてくれたよ」
CM撮影やドラマの監督など、多岐にわたって活躍している森野監督は、この業界で知らない人がいないくらい凄い方だ。
私は改めて森野監督の手腕に感服する。
「森野監督の手腕や2人の演技が完璧だったから視聴回数が伸びているみたいだけど、バズってる要因は他にもあるようだね」
そう呟いて再びコメント欄を見る。
そこには…
〈これが夏目凛と小鳥遊美奈の熱愛報道が出回ったキッカケのCMか。どんなCMなんだろ?〉
〈このCM撮影でパパラッチに写真撮られたんだろ?一回CMを見てみるか〉
〈週刊⚪︎春に写ってた美奈ちゃんのブレザー姿が可愛かったからCM見てくるわ〉
等々、熱愛報道のスキャンダルをキッカケにCMを視聴した人も多いらしく、バズってる要因の一つになっている。
「熱愛報道の写真をCM撮影中に撮られたと聞いた時はCMの作成を中止する案が出たけど、無事放送できて良かったよ」
それどころかスキャンダルのおかげで視聴回数が伸びている部分もあるため、我が社にとってありがたいスキャンダルとなっている。
何なら写真を撮ったパパラッチを表彰したいくらいだ。
「さて、肝心の売り上げだが……CMをアップして1時間しか経ってないのに凄い事態を引き起こしてるね」
そう呟いて再びコメント欄を見る。
そこには…
〈CMの効果凄すぎww。ポカリ⚪︎エットだけ綺麗に完売してるんだがww〉
〈スポーツドリンクのコーナーでポ⚪︎リだけ綺麗に無くなる珍事ww〉
〈ポカリ⚪︎エットを買いに行ったら1本も売ってなかったんだけど。みんな考えることは一緒なんだな〉
等々、ポカリ⚪︎エットが完売しているとのコメントがチラホラと見受けられた。
そのコメントを見て自然と笑みが溢れる。
「さっそく売り上げにも貢献してるようだね。ほんと、2人を起用して良かったよ」
今現在、多種多様なスポーツドリンクが販売されているため、ポカリ⚪︎エットの売り上げは年々低下している。
そんな中、今回の売り上げだ。
「これは月末の報告が楽しみだ」
鰻登りになったであろう業績を聞くことを楽しみしながら、私は社長室から出た。