『鷲尾の家族に乾杯』の放送 5
寧々の頭を少し撫でた俺はテレビに視線を戻すと、俺が200人くらいの女性陣を引き連れて『恋占いの石』に到着していた。
『ん?何をやってるんだ?』
2つの石の間を目をつぶって歩く、20代くらいの女性を発見して首を傾げる。
そして石の後ろに移動して側に置かれている看板を読み、『恋占いの石』についての説明文を復唱する。
『へー、一方の石からもう一方の石へ目を閉じたまま辿り着けば恋が叶うのか』
そう呟いた時、目を閉じて歩いている女性が俺の目の前にある石に辿り着く。
『やったっ!無事辿り着けた!』
『おめでとうございます』
『ありがとうございす……ってリン様ぁぁっ!』
無事辿り着けた女性が盛大に驚く。
『無事、迷わず辿り着けましたね』
『は、はい……』
俺がそう言うと、女性が頬を染めて頷く。
『貴女の恋が叶うことを願ってますよ』
そう言って女性に笑顔を向ける。
『はぅぅ〜。リン様の顔が目の前に……』
『ちょっ!』
またしても倒れそうになった女性を慌てて支える。
「息をするように女の子を気絶させるね。もはやお兄ちゃんの笑顔は殺人兵器だよ」
「俺は誰も殺してねぇよ」
隣で訳の分からないことを言っている寧々にボソッとツッコむ。
その後、倒れた女性の介抱をスタッフにお願いする俺が映った後、1人の女性が画面に映る。
『あ、あのぉ……リン様?』
『どうしましたか?』
『そ、その……もしよろしければ恋占いに挑戦する私の手助けをしてほしいのですが……』
『いいですよ。俺でよければ手伝わせてください』
『わーっ!ありがとうございます!』
とのことで、お願いしてきた女性の手助けを行う。
『そう!そのままです!あっ、ちょっと左に逸れました!』
等々、声を出して誘導を始める。
『あと3歩!……はいっ!おめでとうございます!』
俺は無事に辿り着くことができた女性へ労いの言葉をかける。
『あ、ありがとうございます……』
『いえいえ!アナタの恋が無事叶う事を願ってますよ!』
そして満面の笑みで伝える。
『は、はいっ!ありがとうございました!』
そう言って頭を下げた女性が立ち去る。
『ど、どうだった!リン様は!?』
『超イケメン!間近でリン様の笑顔を見れるだけで幸せになれるよ!叶えたい恋がどーでも良くなるほどにっ!』
『羨ましいっ!私もリン様にお願いしよっ!』
そんな会話が聞こえた後、たくさんの女性たちが俺のもとに集まる。
『リン様っ!私にも手助けをお願いします!』
『あっ、ズルいっ!私が先にお願いしようと思ったのに!』
『私もリン様からの手助けが欲しいです!』
そしてみんなから、先ほどの女性にしたことを求められる。
『わ、分かりました……』
俺は周囲にいる女性たちの迫力に負けて引き受ける。
その後、数人の女性にアドバイスを行う様子が放送され、その度に女性陣から黄色い声をもらう。
その映像を見た寧々がジト目で俺のことを見る。
「お兄ちゃん。清水寺って女の子たちをはべらかせてイチャイチャする場所じゃないからね?」
「……返す言葉もありません」
女性たちに囲まれてウハウハしているわけではないが、そのように見えるため返す言葉がない。
その後は、隣に座る寧々からのジト目に耐えながら視聴を続けた。
『恋占いの石』を後にした俺が清水寺の本堂へ向かい、清水寺の観光を終える。
『さて、どこに行こうか……』
そんなことを呟きながら、画面内の俺が周辺の街をぶらぶら歩く。
すると…
『あー!夏目凛だー!』
ランドセルを背負った男の子と出会う。
『お、もう学校は終わったのか?』
『うん!それより、凛さんはこんなところで何してるのー?』
『俺は今、『鷲尾の家族に乾杯』って番組の撮影中なんだ』
『おー!その番組なら婆ちゃんがいつも見てるぞ!』
『ははっ、ありがとう』
そんな何気ない会話を小学生と行う。
『あ、そうだ。俺、京都を観光するのが初めてで行き先に悩んでるんだ。何かオススメの場所はあるかな?』
『んー、あっ!なら、着物の着付け体験はどうかな!?』
『着物か。そういえば着たことないな』
『ウチの家が着物の着付け屋さんをしてるんだ!せっかく京都に来たんだったら着物は着た方がいいと思うよ!』
『そうだな……よし、着てみるか!』
『うん!あ、僕のことは翔太って呼んで!』
『あぁ。よろしくな、翔太』
そんな会話をした後、画面内の俺が翔太と一緒に歩き出す。
「えっ!お兄ちゃん、着物を着たの!?」
「あぁ。着たことなかったからな。いい機会だし着てみたんだ」
「おぉー!お兄ちゃんの着物姿、楽しみだよ!」
俺の着物姿を見るのが楽しみなのか、顔が生き生きとしている。
「ははっ。期待していいと思うぞ。翔太の姉である氷鶴さんからカッコいいって褒められたからな」
そんな会話をしながら、俺たちはテレビを視聴した。