『鷲尾の家族に乾杯』の放送 2
『じゃあ、良い旅を』
『はいっ!楽しんできます!』
画面内の俺が鷲尾さんと別れ、数人のスタッフと街へ歩き出す。
そこで画面が切り替わり…
『京都の街は久しぶりだね』
そう呟きながら京都の街を歩いている鷲尾さんが映し出される。
「あ、お兄ちゃんの旅は番組後半なんだ。番組スタッフは視聴率を稼ぐためにお兄ちゃんの旅を後半に回したのかな?」
「俺目当てで視聴した人は、俺の旅を見て放送を辞める可能性があるからな。まぁ、多分だけど鷲尾さん目当ての人たちに早く鷲尾さんの旅を見せたかったんじゃないか?」
「確かに、その可能性もあるね」
等々、寧々と会話をしながら鷲尾さんの旅を視聴し、スタジオで俺が鷲尾さんの旅の感想を言うシーンへと移る。
『鷲尾さんも良い出会いがあったんですね』
『そうだね。とても良い出会いだったよ。夏目くんは?』
『もちろん、とても良い出会いがありました。これから流れると思うので、楽しみにしてください』
といった感じで簡単にトークを繰り広げた後、画面が切り替わり、俺の旅が始まる。
「あ、お兄ちゃんの旅が始まった!」
前のめりになりながら寧々が言う。
『好きなところに行って良いとのことなので、今日は一度も行ったことのない清水寺に行きたいと思います』
「へー、お兄ちゃん、清水寺に行ったんだ。昔、撮影で行ってそうだけど一度も行ったことないんだ」
「あぁ、実は撮影でも行ったことないんだよ」
等々、色々話していると、画面内の俺が清水寺に到着する。
『へー!いっぱい店がありますね!それにたくさんの観光客がいますよ!』
到着早々、店がズラーっと並んでいることと観光客と思われる人たちがたくさん歩いていることに俺のテンションが上がる。
『では早速、清水寺の本堂を目指して移動したいと思います』
そう言って画面内の俺が歩き出すと…
『えっ!リン様がいるっ!』
『リン様が目と鼻の先にいるんだけど!』
『きゃぁぁぁっ!カッコいいっ!』
そんな声がたくさん聞こえてくる。
「さすがお兄ちゃん!歩くだけで女の子から視線を集めるなんて!」
「おかげで大変だったけどな」
注目を集めたおかげで、女の子を気絶させたり付き纏われたりと大変な思いを味わった。
『すみません』
『『は、はいっ!』』
そんな会話をしていると、画面内の俺が女子高生2人に話しかける。
女子高生2人は俺から声をかけられるとは思ってなかったのか、ビクッとしながら返事をしていた。
『ご、ごめんね。驚かせたかな?』
『はぅぅ〜』
『か、かっこいい……』
女子高生2人が俺の問いかけに答えず、頬を染めながらウットリとした目で見つめる。
『ま、間近でリン様は刺激が強すぎです……』
『も、もう限界……』
そして2人が目を回してふらふらし始める。
『だ、大丈夫か?』
そんな2人が心配になり、俺が2人の顔を覗き込む。
『『〜〜〜っ!』』
すると2人が声にならない声をあげ、そのまま後ろへ倒れそうになる。
『危ないっ!』
俺は咄嗟に倒れそうになった2人の背中に手を回して倒れないよう支える。
『2人とも大丈夫……じゃなさそうだな』
俺の腕の中で目をまわして気絶している2人を見て、大丈夫じゃないことを把握した俺。
「あははっ!お兄ちゃん、初っ端から飛ばすねー!」
その様子を見た寧々が隣で大爆笑していた。